Two Lights, One Story (EP. 11 – Epilogue)

 数ヶ月後。

 観客もまばらな、地方の古いサーキット。オイルとタイヤの焼ける匂い。

 ゴールラインを、数台の旧式のレースカーが駆け抜ける。エンジンはリアクターではなく、爆音を響かせる内燃機関だ。生身の人間が、剥き出しのコックピットで操っている。

 優勝したのは、あどけなさの残る一人の少女。

 レース後の小さな囲み取材で、向けられた数本のマイクを、彼女は睨みつけるようにして口を開く。


「財団は、あの人の名前を出すな、って言ってる」


 その声は低い。世界への怒りと、揺るぎない決意に満ちているからだ。

 不遜とも受け取られかねない堂々としたそのたたずまいは、小さなサーキットには、あまりにも不釣り合いな王者の風格だった。


「でも、ライト・マッキールが死んで、あの人のことを知りもしない連中が勝手なことばっか言ってる。あたしは決めた。黙っていい子でいるなんて、あの人の走りとは違う。……あたしがここにいるのは、あの人がいたからだ。だから、あたしが証明する。――“紫電”ライト・マッキールの、本当の物語を」


 少女の強い眼差し。

 その瞳の奥に、紫電が走る。

 誰にも屈しなかった男の強さと、それを支え続けた静かな肯定。

 二つの光が、そこに輝いていた。


[完]

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2《君へ》— The End of Beginning 只野緋人/ウツユリン @lin_utsuyu1992

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