キャッチコピーに設定されている、ひとりぐらしの孤独と家族のつながりを描いた歌が秀逸であることはもちろんのこと、自由と自堕落の表裏一体からなる生活感が本作の連作短歌としても魅力になっている。自分のことを肯定するまではいかなくても、これまでの愛を感じ、なんとかやっていける、そんな温かさを感じられる。
意気揚々と進学等をきっかけに上京(勝手に東京と決めつけている。勝手に、自分のかつての状況と置き換えただけ。)頑張ろうと思っていたけれど街のきらびやかさや持って生まれたものの違いに毎日打ちのめされていたそもそも上京しなくてはならない自分の状態に打ちのめされそうになった(もともと実家が東京にある皆様との違いに打ちのめされていました。毎日。)そんな自分のことを思い出してしまいました。なんと切ない。でも、それぞれの読み手の皆様の心の中にあるそんな思い出を思い返しさせてくれる素晴らしい首達だと思います。
この短歌連作は、親元を離れ一人暮らしを始める学生の様子を描いたものだろうか。希望とともに家を飛び出したものの、じきに現実を直視し始める。その様子が10首の短歌で紡がれていく。特に、最初と最後の歌の対比が素敵だった。
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