第9話 瓶覗冬隣まで色を研ぐ(2025.11)

散乱さんらんす光は月も雪化粧ゆきげしょう


窓反射まどはんしゃ黄昏時たそれがれじまで白残す


歌風が黄櫨染こうろぜん揺れ言葉成ことばな


チクタクと古き調べを崇敬すうけい


午前四時、細三日月ほそみかづきにリズム見る


秋晴れを黒い流線りゅうせん侵食す


実り終え枯れ木をへそ禅撓ぜんたわ


日出ひいずると願いあかつき、冬到る



*-*-*-*-*-*



無花果いちじくの匂ひ土より坂駆くる


埋まらぬと画面に滲む秋の色


熱き血に黒茶色混ず風光る


逆走や渦に巻かれる朽葉すら


すれ違ふ匂ひが奪ふ冬の名を


暇を追ふ山茶花梅雨ささんかつゆや舞い迷ふ


零還れいもどる数へば冬の靴音よ


言葉なき便箋冬の街拾ふ


冬隣音渦巻きて返歌受く


寒き夜や味噌溶く鍋に別れ溶け


東雲しののめや小麦の甘み朝去りぬ


月白げっぱくに深夜混じりて期待感


団栗や口論輪舞こうろんろんど足甘く


湯気浴びてかくま生む冬日和


冬の湯の洗朱あらいしゅに苦笑ひ


冬深夜そっと焼き上ぐ春を巻く


春の湯気三色踊り喝采を


縹色はなだいろ、熱、五味、夜と逆行す


冬日影知らぬ鍋にも湯気と音


冬芋や毒をすり抜け焼き直る


冬日和華やぐ香り温もりと


瓶覗かめのぞき空冬そらふゆめいて活気撮る


百年をとぼける祭り夜に酔う


白群びゃくぐんに抗う帷、夜半よわの秋


愛日に記憶、被写体、色変はる


冬日の出銀朱ぎんしゅに燃えて滅赤けしあか


短日を映す黒茶に頷きぬ



*-*-*-*-*-*



錆びし鍵木犀もくせいに閉ざす闇


秋の暮骨肉こつにく痛み、血に穿つ


見ぬふりの置き去る椅子に残りししょ



*-*-*-*-*-*



感情が音を防がぬ秋時雨


緋褪染ぬ感情の沼霧の中


殻破る秋の水揺れトパーズが



*-*-*-*-*-*



陽の影薄暑はくしょを歩く影法師


長き夜よ夏暁なつあかつきの呪いかな


じゃあねからクラップ響く星月夜



*-*-*-*-*-*



声と指薄暑はくしょ漂う化け猫め


見えぬ毒炎天えんてんの下歌の波


螺旋らせん断ちはさみひかりし夕立に



*-*-*-*-*-*



優しさも救いも冬に捨て咲いて


さやうなら春の道行く背の白紙


炎天に貼られし紙を剥ぐ覚悟


千の火を消し秋の暮見放して












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