廃病院にて
異端者
『廃病院にて』本文
これは、昔にあった話ですが――
私は……当時は俺と言っていましたが、友人たちと夏だから肝試しに行こうという話になりました。友人はここでは男友達のA、女友達のB、Cとしておきます。
それでどこが良いかと話し合った結果、町外れの廃病院が良いのではないかということになりました。特に幽霊を見たという噂はありませんでしたが、不気味な雰囲気から地元の人には避けられていました。
いやあ……実を言うと、女の子と夜遊びに行ければ、なんでも良かったんですよね。あの頃はヤンチャしてたというか……すみません。話を戻しますね。
夜、私たちはAの運転する車に乗ってそこに向かいました。
そして、私たちは廃病院の敷地に入ると、車から降りて建物の中に入れる場所を探しました。
暗く周囲には草が茂っていて、懐中電灯の明かりは心もとなかったですが……誰も不安だとは言いませんでした。いや、今思うと言えなかったのでしょうね。
え? 入口? しっかりと閉じられていましたよ。……続けますね。
私たちは運良く、一階の窓が割られて……というか、ほぼガラスが無くなっているのに気付くと、そこから順に中に入りました。A、私、B、Cの順でしたね。
そこは病室だったようですがガランとしていて、ベッドなどもありませんでした。
そこを通って、廊下に出ますとまだリノリウムの床は少しだけ光沢を残しており、懐中電灯の光を反射していました。
私たちは順に部屋を見て回りました。
どの部屋もガランとしていて、全て引き払った後のようでした。入って来た時の割れた窓以外は、特に荒れている様子もありませんでした。おそらく、あの窓だけ侵入目的の誰かが割ったのではないかと……。
それでも、部屋の形や大きさから、そこが病室なのか診察室なのかはなんとなく分かりましたし、ちょっと不気味でした。
「何も無くてつまらないな」
Aがそう
もっと何か、物音一つでもあれば、怖がる女の子たちと仲良くなれるのに……そんな本音が透けて見えました。まあ、私も似たようなものでしたが。
私はAの足元に何か落ちているのに気付きました。
拾い上げるとカルテのようでした。名前は、確か……
「あれ? なんでこんなの残ってるんだろ?」
私は少し不思議でした。個人情報保護やらコンプライアンスが既に度々言われていた時代です。何より、他の物がこれだけ綺麗に引き払われているのにこのカルテだけがなぜ……?
「おい、記念に持っていこうぜ!」
Aが茶化した様子でそう言いました。
「ちょっと、持ち出しはまずいよ!」
Bがそれに異を唱えます。
「そうそう、廃墟って一応不法侵入だし……」
Cもそれに同意しました。
「そうだな。放っておこう」
私はそのカルテを再び床に置きました。
「全く、皆堅いな……」
Aは少し不満そうに言っていました。
その後も病院一階の探索は続けましたが、何かあったのはそれだけでした。
「なんか……使えるものは全部持っていった感じ!」
Bが残念そうに言いました。
「ま、金になる物なら残しておくはずないか」
Aも納得したように言いました。
「二階も、調べる?」
Cが少し面倒そうに言いました。
「もう、いいんじゃないか?」
私がそう言うと、皆飽きたという様子で同意しました。
その後は普通に帰りました。
女の子たちと別れた後、Aはまだ未練があるようでしたが「また次があるさ」と私は
もっとも、私には「次」はありませんでした。
それからなぜか、皆私を避けるようになってしまって……妙な目で見てくるようになったというか……。
え? 私の名前? ……夏井陽一ですが、それが何か? あれ、カルテと――
廃病院にて 異端者 @itansya
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