②それでも報いを求める人たちへ

ここから先、綴られるのはただの綺麗事です。世の中に光を夢見る一人の人間の、妄想です。




 でも、人間は、そんなに簡単に堕ちることができない。かわいそうな生き物だ。

 絶望の深い海のそこに突き落とされても、溺れる寸前で、もがき、やっぱり生きたいと願ってしまう。しぬ直前になって、楽しかったあの頃を思い出してしまう。


 そんな哀れな生き物を、世間はどう見るのだろう。どうなったにせよ、世間は忘れてくれる。また再びスタートに立ったとしても、わざわざ注目する人はいないのだ。



 だからね、呑気に生きればいいと思うんだ。またリスタートできたときには。

 人間は、簡単に堕ちることができない。


 ふとした時に見上げた夕焼け空の美しさに涙し、

 

 まだ重い瞼を開けようとした時に聞こえてきた鳥の鳴き声に笑みを浮かべ、


 窓から眺めた景色に映り込んだ無邪気な子供たちの姿に、遠いあの日の自分を重ねる。


そんな小さな小さな、本当に小さな世界の煌めきに目を向け、人の心は動かされるんだ。

 落ち込んでいる暇がある分、元気に立ち直る暇も、君にはちゃんと用意されている。

 だからね、こんなに厳しくて、怖くて、辛くて、苦い世界の不完全さに、甘えてみてはどうだろうか。

 この世界から逃げたいなんて今までも、これからも思わないことはないだろう。でも、私たちはこの世界でしか生きることも、死ぬこともできないのだから。無理やりそれを愛そうなんて言わない。でもね、どれだけここが憎くても、汚れていても、私たちはここでしか生きることができないのだから。

 そんな、世界のどうにもならない束縛にかかっている人間だ。

 すこしでも、この世界に笑ってみないか。

 少しずつでも、この世界で生き続ける勇気を持とうとしてみないか。


 そうとなったら、この液晶画面から前に目を移そう。

 一度、冷たい水で自分の顔を洗ってみよう。

 ほら、また明日が見えてくる。

 朝日はまぶしいよ。それが美しくも、憎くても、やっぱり輝いているだろう。


 私からの救いはここまでだ。

 私がここに綴った現実の厳しさに挫けそうになる人もいるだろう。

 ただの願望でしかなかったこの言葉に怒りを覚える人もいるだろう。


 あなたが少しでもこの言葉に報われたのなら、あとはあなたが救いを見つけるんだ。

 

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生。 卯月咲樂 @150141yone

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