ガラスケースの中で生きていた。
冒頭の言葉より、すべてが初めてのまっさらなキャラクターが誕生します。
ガラスケースの中と外に出てからでは大きく世界が違っている。
彼は外へ出て何を見ているのでしょう。
そこにもう一人、彼女というものが存在します。
まっさらだった二人の世界が、外というものによって少しずつ歪んでいく。
外の世界はどんなものかは想像するしかないのに、彼と彼女は白く美しいままのような不思議な感じがします。
二人にとってどれほどの時が流れていったのか、ラブストーリーのようなのにどこか切なさが伝わってきます。
じんわりと二人の愛が心に残る作品です。
切なくて儚くて、とってもピュアなストーリーです。
主人公の少年は、気づいた時には「ガラスのケース」の中にいた。
なんらかの形で培養されるように生きていた彼。ようやくケースから出されるが、周りは白衣の研究者ばかり。
自分は何者なのか。比較するような「他者」が近くにいない。
そんな中で、彼は一人の少女と会う。唯一の『自分の同類』であり、似た境遇にあるとわかる少女。自然なことのように彼女と惹かれあう。
もう、このシチュエーションがひたすら切ない。
「外の世界を知らない」、「余分なものを一切持たない」というピュアな少年。
そんな彼が「唯一知っている同類」である少女に恋心を抱いて行くという。
「世界の狭さ=純真さ」という方程式が成り立って、その中で純粋な恋慕の念をはぐくむ。
この少年が最後に迎える結末。この少年視点の最後の一文が、とにかく切ない。
ただ、彼女のことだけを。選択肢などなく、参照する知識などなく、ただ目の前にいる「一人の人」を純粋に想う。
胸を打たれずにはいられない、ひたすら純真で純粋な物語でした。