SF×恋愛×猫。最強で最高の、切なく爽やかなストーリー

 胸があたたかくなる。まさにその言葉がふさわしい作品です。

 主人公の西邑は、恋人である夏海を病で亡くしてしまう。
 でも、彼にはまだ可能性があった。パラレルワールドへ行くことにできる装置を使い、開発者の相田と共に並行世界の夏海の元へと行く。

 完成した治療薬を手に、夏海と再び恋人同士になろうとする。惚れ薬を撃ち込むための装置も持っており、準備は万端。

 だが、近くに現れた一匹の猫。うろうろと、どうも落ち着かない。

 そこから、この並行世界では「とある事実」が浮かび上がることに。

 SF設定が綺麗に活きていて、爽やかな感興をもたらしてくれます。
 まず、「SF×猫」というと、ロバート・A・ハインラインの「夏への扉」も思い出します。
 パラレルワールドに行き、二度と会えなくなった恋人と再び対面するという切なさ。そして、「別の世界」だからこその、「IF」の可能性が見えてくる展開。

 最終的に主人公の取る決断が、とても胸に来ます。「猫」もとにかくいい役回りとなっていて、物語の至るところにアクセントを与えてくれる、素晴らしい配置となっていました。

 SFと恋愛モノの相性の良さをしみじみと感じさせてくれる、素敵な一作でした。