『片恋五年、終着。』
猫墨海月
『片恋五年、執著。』
私は言った。
あなたに、あなたが全てだと。
あなたは言った。
私に、あなたは全てでないと。
確かにそう、確固たる意思を持って、言ったんだ。
三回も、私に。
だけど私は、
思い出を棄てられずにいたんだ。
あの日のあなたを、棄てられずにいたかったんだ。
苦しいんだ。
心の奥が、酷く暗く蠢いているんだ。
暗しいんだ。
目の先が、酷く黒い行先を示しているようにしか見えないんだ。
そんな中手を伸ばしたのはあなただろう。
救う気も、救う気力も、救う言葉も、救う笑顔も、救う頭も、救うつもりもないのなら、
無闇に近づかないでくれよ。
期待させるだけの人生なら、やめてしまえばいいじゃないか。
全部嘘だ。嘘だ、嘘なんだ。
だから私は騙されたんだ。
酷すぎる嘘に喰われてしまったんだ。
だから、そうやって声をかけてさ、
枯れた涙を呼び戻さないでください。
煩わしい鼓動の速さ、自分の熱、あなたの視線。
もういっそ、何も言わないまま世界が動いてくれればいいのに。
そんな期待すら持たせるだけで、あなたは動いてはくれないでしょう。
私はあなただけの人になりたい。
だけどあなたは私じゃない誰かの人になりたい。
それならもう、いっそ心を抉って殴って潰して壊して裂いて殺して殺されて亡くしてくれよ。
期待するだけの人生なんて、もう要らないんだよ。
「今更」「どうして」「今?」「遅いよ」「手遅れだね」「もう」
「でも、いいよ」
言えるはずもない言葉を考えては眠る毎日。
楽しかった生きがいが、苦しめるだけの死にがいになっているんだ。
それでも好きなんだよ。
だからあなたを諦めても、あなたじゃない誰かを好きになっても、命の選択であなたを選ぶ未来しか見えないんだよ。
私は逃げられないんだって分かってよ。
私は最低だよ。
好きな人でも貶せるんだ。陥れられるんだ。
でもあなたは私より最低だ。
「振ってよ」
その言葉に返す言葉なんて、なんでも良いと思っていたんだろ。
何度も泣かせた私を泣かせるなんて、思わなかったんだろ。
私だって思わなかったよ。
悲しくもないんだ。
苦しくもないんだ。
ただ、悔しかっただけなんだ。
あなたに振られたところで悲しくなんてない。
私が望んだことだ。
でも、それでも、涙は出たんだよ。
意思なんか関係なかったんだよ。
繋ぎ止められてるのは分かっているんだ。
何も返ってこなくて良い。
ただ、寄り添いたくて。
寄り添うのを許してほしくて。
でも全部諦めたんだ!!
そんな中、「行かないで」そう言ったのはあなただ。
あなたは最低だ。
最低だ、最末だ、最下だ、最悪だ、最愛だったんだ。
あなたは要らない。
私を知らないあなたなんて要らない。
あなたは知らない。
私が負った傷なんて見ていない。
あなたは見えない。
私に笑ったあなたは死んだんだ。
大嫌いだもう。
顔だってみたくないんだよ。
だって私の全部を奪っていったあなたは、何も知らない顔で長い人生を生きるんだろ。
それでも、
あなただけ、あなただけで、あなただけに、あなただけを、あなただけは、
あなただけを、
愛してたんだよ。
愛して いたんだよ。
『片恋五年、終着。』 猫墨海月 @nekosumi
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