この物語は世界の命運という深刻な事態の中で、ひとりの少女が現代人としてはごく当たり前な葛藤を抱いて成長していく物語です。自分の夢をしっかりと持っている彼女は、それゆえに難題にぶつかり、揺れながらも友との絆を胸に前へと進み続けます。
どう考えてもネタバレ厳禁の作品なので内容については、このていどにしておきますが、何よりも私が驚かされたのは、一作ごとに感じる作者様の進歩――いえ、進化の度合いです。最初の作品では面白いながらも、まだまだ荒削りだった文章力が、次の作品では別人のように洗練され、今回も再び別人のようにレベルアップしていました。表現もどんどん洗練されていて、テンポ良く読み進めることができます。
しかも作品を書き上げるために、しっかりと取材に出かけるなど執筆にかける情熱は並大抵のものではありません。そのような作者が描く物語が面白くないはずがないのです!
まだの人はぜひご一読下さい。オススメの一作です!
この作品は、学園が舞台のSF作品です。
SFって聞くと、何だか難しい作品のような気がしませんか?
はい、大丈夫です。
めっちゃ読みやすくしてくれています。
私がこの作品を読んで、『1番』良いなと思ったこと。
それは、この作者様が『自分の書きたいものを全力で書きつつ、その上で、読者の皆様が最大限楽しめるよう努力している』ことがすごく伝わってくることです。
本作は『様々な参考文献』や『取材』をもとにして、本気で執筆されています。
マジで本気で書いています。
きっと、ガチガチに練った小説が大好きなのでしょう。
※私もめっちゃ文献を読むタイプなので、めっちゃシンパシーを感じます。
ですので、作中の所々に専門的な話が出てきます。
でも、難しすぎないよう、出力を抑えつつ、分かりやすく書いてくれているので、ちゃんと物語を楽しむことができます。
何なら、良い教材にすらなっていますw
私は、こういう物語と真摯に向き合う小説家が報われる世界であって欲しいと本気で思っています。
応援しています。
突然やって来た転校生灰児と共に、破壊神と世界を亡ぼす契約をしてしまった少女杏アリスを止める物語。
物理的に世界を救う戦闘シーンもありますが、スクールカウンセラーを目指す主人公あんねがアリスの持つ悩みと向き合おうとする姿が本作の魅力と言えると思います。
世界規模でなくとも、破壊衝動にかられ集団殺人事件を引き起こす犯人は現実に存在します。この方たちも近くで寄り添う人がいれば事件を起こさずに済むこともあったのではないかと感じます。まずは身近な人に優しくなってみようと感じさせる作品でした。
全体的にテンポが良いのでサラっと読み進めることが出来ると思いますよ。
『セカイの終わりには黄昏こそが相応しい』は、終末の気配が静かに忍び寄る近未来を舞台に、「わたし」と未来人・灰児悠兎の出会いから始まる、切なくも美しい学園SFです。
神話と文明崩壊という壮大なスケールを内包しながらも、浴衣姿の少女や文化祭のざわめきといった、儚く温かな青春の一瞬を繊細に描写。語られる未来は絶望に満ちていながら、灰児と「わたし」の心の交流が、読者の胸に小さな灯をともします。語り口は優しく、まるでそっと耳元で物語を語りかけられているかのよう。
打ち上げ花火に照らされる一瞬の幸福すら、滅びのカウントダウンの中にあるという儚さに、胸が締めつけられます。情景も感情もすべてがじんわりと染み入る、静かなる黙示録。
世界が終わるなら、せめて黄昏のように──そんな祈りを感じさせる一作です。
「四ヶ月後、この世界は終わる」
そう語るのは、未来からやってきた転校生・灰児悠兎。
彼が追うのは、やがて『破壊神』と契約し、
地球を滅ぼす存在となる――ひとりの少女、杏アリス。
その少女を探し出し、未来を変える。それが彼の使命だった。
協力を求められた綾織戸あんねは、
ごく普通の女子高生……だったはず。
だが、彼女の中にも未来に繋がる『何か』がある。
変わらぬ日常、部活、親友との穏やかな時間の中に、
じわじわと迫る終末の気配。
それはどこか、今この世界にも重なる、
静かで確かな崩壊の足音だった。
これは、滅びの未来を知る者と、
まだそれを知らない者が出会い、未来を変える物語。