街角の妖精
山吹紅翠
街角の妖精
桜の枝が初々しい緑の葉を覗かせはじめ、ときおり吹く風に初夏の香りを感じる頃。
普段と同じ通勤路を歩く途中、ブランコやスベリ台などの遊具が並んだ中規模の公園で、草むしりをする女性へふと目がとまる。
私が気づく何日、いや何年も前からそうしていたかのように、何の気負いも感じさせずに黙々と草むしりする姿は、見た目の年齢も相まって古美術を思い起こさせる気品があった。
そのまま、足を止めずに地域のボランティアで公園の整備をしてくれているのだろうと早合点し、労いの視線を送り、通りすぎようとしてふと思いとどまる。
もしかしたら、自然の妖精かもしれない。
人工物あふれるこの街路で、砂漠のオアシスのようにポツンと存在する公園の緑。
そこに残った妖精が人の姿を借りて公園の自然を整備しているのではないかと。
そう思えば、その女性が神聖なものに見えてき、公園に咲いている草花が力強くも繊細なものに感じた。
そして数日たったある日、帰り道で再び公園で足がとまった。
女性はいなかった。だか、夜空に輝く星々のように緑のキャンパスに紛れて咲くツツジが小雨に濡れ、妖艶さを増した姿で顔を覗かせていたのだった。
街角の妖精 山吹紅翠 @yb-kousui3
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