第13話
第6話 敵の中の真実
翔太の意識が敵艦の内部に入り込んだ瞬間、彼は息を呑んだ。
そこは宇宙船の内部とは思えない、奇妙な空間だった。
有機的な壁面が脈動し、まるで巨大な生き物の体内にいるような感覚。
そして、その中央に―
「これって…」
透明なカプセルのようなものが無数に並んでいた。
その中には、様々な種族の生命体が眠っている。
人間、エルフ、獣人、機械生命体…
翔太が知っている銀河系の住民たちだった。
『助けて…』
微かな声が聞こえた。
翔太は声の方向に意識を向けた。
そこには、一つだけ光っているカプセルがあった。
中には、翔太と同じぐらいの年齢の少年が入っている。
肌は青白く、髪は銀色。見たことのない種族だった。
『君は…誰?』翔太が心の中で話しかけた。
『僕の名前はアリオン』少年が答えた。『君が…『共鳴』を使える人?』
『そう、翔太って言うんだ。君はなぜここに?』
アリオンの表情が暗くなった。
『僕たちは…支配されてるんだ』
『支配?』
『この艦隊は、僕たちの故郷を襲った。そして、僕たち若者を捕らえて、戦闘用に洗脳しようとしてる』
翔太は衝撃を受けた。
謎の艦隊は侵略者ではなく、自分たちも被害者だったのか。
『でも、なぜ君だけ意識があるの?』
『僕には特殊な能力があるんだ。心を守るバリアみたいなもの』アリオンが説明した。『でも、それももう限界…』
『洗脳って、誰が?』
『支配者は…』
その時、アリオンの顔が恐怖に歪んだ。
『来る!気づかれた!早く逃げて!』
突然、翔太の意識に強烈な圧迫感が襲いかかった。
巨大で冷酷な意思。
それは確かに邪悪で、アリオンたちを支配している何かだった。
『共鳴』を使う者がいることに気づいたのだ。
翔太は慌てて意識をアルカディア号に戻した。
「はあ、はあ」
操縦席で荒い息をついている翔太を、美月が心配そうに見つめた。
「翔太!大丈夫?」
「ああ…なんとか」
翔太は仲間たちに説明した。
敵艦の中には、捕らわれた若者たちがいること。
彼らは洗脳されて、戦闘に使われようとしていること。
そして、真の敵は別にいること。
「つまり」アヤが整理した。「私たちが戦っているのは、操られている被害者ということですね」
「そういうことだ」
リョウが機関室から怒りの声を上げた。
「なんてひどい奴らだ!若者を操って戦わせるなんて!」
ユウも砲撃管制室で拳を握った。
「許せない!絶対に助けてあげる!」
「でも、どうやって?」ルナが通信室から不安そうに聞いた。
翔太は考えた。
アリオンは『共鳴』に反応した。ということは…
「みんな、『共鳴』でもう一度敵艦にアクセスしてみる」
「また?」美月が心配した。「さっきとても危険そうだったけど…」
「大丈夫。今度はみんなの力を借りる」
翔太は全艦に通信を繋いだ。
「全員聞いてくれ。敵艦の中には、僕たちと同じ若者が捕らわれてる」
他の船から驚きの声が上がった。
「彼らを助けるために、みんなで『共鳴』を敵艦に向けてみたい」
『危険じゃないのか?』別の船の生徒が心配した。
「確かに危険だ。でも、やらなきゃいけない」
翔太の真剣な声に、全員が応じた。
「やってみよう」
「僕たちも協力する」
六十人の生徒たちが心を一つにした。
『共鳴』の光が、今度は敵艦に向かって放射された。
すると、敵艦の中で変化が起きた。
カプセルの中で眠っていた若者たちが、次々と目を覚まし始めたのだ。
『これは…』
『僕たちの心が…繋がってる?』
『助けが来た!』
アリオンの喜びの声が聞こえた。
『翔太!みんな目を覚ましてる!』
しかし、その時だった。
敵艦の奥から、恐ろしい怒りの波動が発せられた。
真の支配者が、ついに姿を現したのだ。
『貴様ら…我が支配を乱すか』
その声は、翔太たちの心に直接響いた。
冷酷で、圧倒的な悪意に満ちている。
敵艦の最深部から、巨大な影が立ち上がった。
それは人型だが、普通の生命体ではない。
全身が黒い霧のようなもので構成され、赤く光る目だけが浮かんでいる。
『我は暗黒卿ダークネス。銀河を支配する者なり』
「暗黒卿?」美月が震え声で言った。
『貴様らごとき子供が、我の計画を邪魔するとは』
ダークネスから強烈な精神攻撃が放たれた。
学園艦隊の生徒たちが苦しみ始める。
「うわああ!」
「頭が…痛い!」
翔太も激痛に襲われた。
しかし、その時だった。
アリオンをはじめとする、敵艦内の若者たちが『共鳴』で翔太たちを支えてくれたのだ。
『僕たちも一緒に戦う!』
『もう支配されない!』
『自由になるんだ!』
翔太は驚いた。
敵艦の中から、味方が生まれた。
『共鳴』のネットワークが、敵と味方の境界を超えて広がっている。
「みんな!」翔太が叫んだ。「僕たちだけじゃない!敵艦の中にも仲間がいる!」
生徒たちの士気が上がった。
「よし!」
「みんなで力を合わせよう!」
六十人の学園生と、敵艦内の数十人の若者たち。
合計百人以上の『共鳴』が一つになった。
その光は、暗黒卿の攻撃を押し返した。
『何?この力は…』ダークネスが動揺した。
翔太は確信した。
『共鳴』は、邪悪な心には対抗できる力だ。
「総攻撃開始!」
学園艦隊が一斉に攻撃した。
ただし、目標は敵艦を破壊することではない。
『共鳴』の力で、カプセルを破壊して中の若者たちを解放することだった。
光の弾丸が敵艦に命中すると、カプセルが次々と砕けていく。
中から解放された若者たちが、さらに『共鳴』に加わる。
『ありがとう!』
『自由だ!』
『一緒に戦おう!』
『共鳴』のネットワークがどんどん拡大していく。
暗黒卿の力が弱くなっていく。
『ばかな…我の支配が…』
「支配なんかに負けない!」翔太が叫んだ。「みんなの心は繋がってる!」
最後の決戦が始まった。
百人を超える若者たちの『共鳴』が、暗黒卿に向かって放射された。
それは純粋な光の柱となって、敵の闇を貫いた。
『うおおおお!』
暗黒卿が苦悶の声を上げる。
『我は…負けん…まだ…』
しかし、その身体は光に侵食されて、少しずつ消滅していく。
『覚えておけ…我はまた現れる…銀河を支配するまで…』
最後の言葉を残して、暗黒卿は完全に消滅した。
敵艦も、その主を失って機能を停止した。
しかし、中にいた若者たちは無事だった。
『やったあ!』
『自由になった!』
翔太は安堵のため息をついた。
「終わった…」
美月が微笑んだ。
「みんな、よく頑張ったね」
その時、アリオンからの通信が入った。
『翔太、ありがとう』
『どういたしまして。君たちは大丈夫?』
『ええ。おかげで、僕たちは故郷に帰れます』
アリオンが続けた。
『でも、翔太。暗黒卿の最後の言葉…』
『ああ、また現れるって言ってたね』
『気をつけて。あいつは本当にしつこいんだ』
翔太は頷いた。
今回の戦いは終わったが、これで全てが解決したわけではない。
しかし、今は仲間たちと勝利を喜ぼう。
「みんな!」翔太が船内通信で呼びかけた。
「今回の作戦、成功だ!」
「やったあ!」
「最高!」
歓声が船内に響いた。
リョウが機関室から興奮して言った。
「俺たち、また銀河を救ったんじゃないか?」
アヤが冷静に答えた。
「まだ一部ですけど、確かに大きな成果です」
ユウが元気よく言った。
「これで第三惑星の人たちも安全ね!」
ケンが短く、でも嬉しそうに言った。
「みんな…無事」
カエルが炎を手に宿して喜んだ。
「燃えたぜ!」
ザラが技術的な興味を示した。
「『共鳴』の可能性は無限大ですね」
ルナが優しく微笑んだ。
「心と心が繋がって、素晴らしい力になりました」
バイオスがほっとした表情で言った。
「怪我人も出なくて、本当によかった」
翔太は仲間たちを見回した。
みんな無事で、みんな笑顔だ。
『共鳴』の力で、不可能を可能にした。
でも、それは決して翔太一人の力ではない。
みんなで心を合わせたからこそ、実現できたのだ。
「帰ろう、銀河学園に」
「うん!」
六隻の学園艦隊が、勝利の凱旋として母校に向かった。
後ろでは、解放された若者たちの宇宙船が続いている。
新しい友達もできた。
きっと、これからも様々な困難が待っているだろう。
暗黒卿の言葉通り、新たな敵が現れるかもしれない。
でも、恐くない。
仲間がいる限り、どんな敵にも負けない。
『共鳴』は、心と心を繋ぐ最強の力なのだから。
翔太は星空を見上げながら、次の冒険に思いを馳せた。
――第7話「新たな仲間」へ続く。
-----
**第6話 完**
*次回予告:銀河学園に戻った翔太たち。解放された若者たちとの交流で新たな発見が!そして、アリオンが持つ驚くべき能力とは?平和な日常の中に、次なる冒険の予感が…!*
次の更新予定
毎週 日曜日 12:00 予定は変更される可能性があります
いじめられっ子の僕が、UFOにさらわれて無双になった 佑月 太郎 @YUZUmatcha
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