米が高い
星屑肇
米が高い!
近未来の日本、米はかつての穀物とはまったく違う価値を持つ貴重品となっていた。地球温暖化や自然災害の影響で農作物が激減し、特に米は栽培が困難になった。国民は米の代替品に手を出していたが、それではどうしても満足できなかった。米が高騰する中、各家庭の食卓からは、米が姿を消し、いつしか特別な贈り物として扱われるようになったのだ。
主人公のリョウは、米農家の息子として育った。幼い頃から父親が大切に育て、手間暇かけた米を誇りに思っていたリョウだが、父が亡くなって以来、家業を継ぐことに躊躇していた。しかし、ある日、町の広場で開催された「米祭り」を訪れたリョウは、そこで驚くべき光景を目にする。
祭りの中心では、最新技術を駆使した米のオークションが行われていた。入札が進むにつれ、米は信じられないほどの高値で取引されていく。リョウは、その様子を見ながら、自分の家の米がどれだけ価値があるのか、心が躍るのを感じた。そこで彼は、もう一度米作りに挑戦しようと決意する。
しかし、米作りは簡単ではなかった。リョウは最新の農業技術を学び、種や肥料を手に入れるために銀行から融資を受けることにした。だが、銀行員は不安げな顔をし、「米はもう未来のない作物かもしれません」と口にする。リョウはその言葉を振り払い、奮い立って田んぼに向かった。
田んぼには、家族の思い出が詰まっている。リョウは父が教えてくれた伝統的な農法と最新の技術を融合させ、力強く未来の米を育て始めた。日々の努力はやがて報われ、秋には見事な稲穂が実った。収穫のとき、彼は父親の笑顔を思い出し、そして自分がこの米を通して再生することを確信した。
だが、収穫の後、米を売る店に持っていくと、驚きの知らせを受けた。輸入された米が安価で手に入るようになり、地元の米が市場で評価されないというのだ。リョウの心は折れそうになったが、彼はあるアイデアを思いついた。
それは地元の米のブランディングだった。リョウは、「プレミアムリョウ米」として、彼が丹精込めて育てた米を特別な体験として売り出すことにした。パッケージや広告を工夫し、料理教室や試食イベントを開催して、米の素晴らしさを伝えた。
すると、町の人々はだんだんとその魅力に気づき、自分たちの地元の米を守るために買い求めるようになった。リョウの努力によって、米は再び大切な存在として見直され、価格も徐々に戻って行った。
ひとしきり感動の中、リョウはまた父の声を思い出した。「米はただの食べ物じゃない、心をつなぐものだ」と。彼は今、自分の米で町を再生することに成功し、地域を再び一つにする存在となった。
「米が高い」とは、人々が本当の価値を思い出すことによってこそ、再び輝きを取り戻すということなのだと、リョウは心から確信した。米はただの食物ではなく、町を、家族を、人生をつなぐ大切なものとして、変わらぬ存在であり続けるのだった。
米が高い 星屑肇 @syamyu
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