第3話裁判
医者は、恥ずかしいそうにしていた。恋人ができたことがないと告白してしまったからだろうか。しかし、一番恥ずかしいのは、恋人を取られた自分だ。あんなに愛し合っていたのに。アシュリー..
「まあー元気で何よりです。医者として尽力した甲斐がありました。言い忘れていましたが、私の名前は、コズミックです。よろしくお願いします。」
禿頭の医者コズミック。最初は礼儀正しい人かと思ったが、どうやら違うらしい。彼は、気弱なのだ。オドオドしている。普段から敬語なのだろう。だからこそ恋人もいない。
「右手がなくなってしまいましたが、知り合いに頼んで義手を取り付けました。違和感ないと思います。どうですか?」
言われるまで気づかなかった。いっさいの遅延なく動いてくれる。右手を失うのはかなりのショックであるはずだ。しかし、何も感じなかった。それよりもアシュリーのことが気になる。
「少し話の整理をしましょう。まず何が起こったのか時系列順でお話しします。惑星アカトシュが奪われ、あなたは、負傷し、昏睡状態でした。ここに運ばれた時点では、かなり危ない状態で、瀕死でした。処置が完了し一命を取り留め、このベットに移した時、連合が敗北宣言を行い、帝国の属国になることが決まりました。」
コズミックは、唾を飲み込み続けた。
「そして人類サピエンス連合は、解体。人類ヌーン臨時政府が設立されました。彼らが最初に行ったのは、言論統制です。報道は全て検閲されてます。私の大好きな作品も禁書指定になりました。ああ悲しい..」
「そうですか...あのアシュリー、私も恋人はどうしてましたか?」
「あなたが昏睡状態になって2年目までは、毎週水曜日にお見舞いに来ていましたよ。しかし、今は、12月ですが、6ヶ月前の6月に突然来なくなりまして。調べたところ結婚したことがわかりました。お相手のことも調べましたがなかなか出てこないんです。普通なら簡単にわからるんですがね。それでこれは私の推測なんですが...おそらく帝国のお偉いさんと結婚した可能性があります。かなりの美人さんでしたし、目に止まっても不思議ではないでしょう。」
「そう...ですか」
今の話を聞いて少し安心した気がした。アシュリーは、まだ俺のことを想ってくれているはずだ。ただ、断れない婚姻の申し出があっただけだ。そう自分に言い聞かせた。
「話を戻します。よろしいですか?」
頷いた。アシュリーのことは少し置いておこう。今は、状況を飲み込むのが先決だ。
「帝国が言論統制の次に行ったのは、戦争裁判です。人類サピエンス連合は戦争責任を負わされ、その中でも重要官僚であったものは軒並み有罪。銃殺刑です。今は、執行を待っている状態です。それも全員揃ってから処刑したいとのことで..」
全員揃ってとはどういうコトなのだろうか?まだ裁判は終わっていないのか?
「裁判がまだ終わっていないのです。最後の一人がまだ残っていまして。長らく昏睡状態で裁判ができなかったんです。そうです。あなたなのです!!」
「え、なんで!俺は重要官僚でもないし、ただの一般兵ですよ!」
「そうですが、帝国にはそうは見えなかったそうです。あなたは、帝国艦隊を10機墜落させています。優秀なパイロット「赤い彗星」として恐れられているのです。」
「確かに艦隊を砲撃しまくりましたが、それは相手がしつこく追ってくるからでしょうが!こんなのあんまりだ!せっかく目覚めたのに!」
「私たちは負けたのです。正義は帝国にあります。しょうがないです。残念ですが。」
俺は、これから名ばかりの裁判を受け、100%有罪だ。そして銃殺刑で死ぬってことか?そんなのごめんだ。俺はまだ死ねない。アシュリーに会いたい。
「裁判は、1月の初めになります。あと3週間ですが、ゆっくり休んでください。それでは」
コズミックは、病室を後にした。
去る時の背中は、どこか悲しそうであった。
宇宙大総統ギガヌーン Gggo @Gotman
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。宇宙大総統ギガヌーンの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます