放課後、ドアの前で②
結奈は少し間を置いてから続きを話し始めた。
「その翌日学校に登校しようとすると朝から変でした、いつもいた駿くんがいなかったんです。休む時は絶対連絡くれたのに連絡さえなかったし」
そう言う結奈は唇をかみしめていた。そして葵はその瞬間、遙の勘が当たったと思った。ドアをくぐった人が居なくなるまさしくそれだ。
「結局1人で学校へ行きました。だけど教室に着いたら駿くんの机がなかったんです」
その言葉に2人は顔を見合わせる。そんなフィクションのような事があるのだろうか。
「机がないって、そんなの元からいなかったみたいじゃん」
狼狽しながら遙がきくと結奈は小さく頷く。
「はい、そうなんです。それで先生とかクラスの友達に駿くんのことを聞いてみたんです、そうするとみんな口を揃えてそんな人いないって。私は誰をみていたんですか」
言い終えると同時に結奈の目から大粒の涙が落ちる。
「お願いします、駿くんを探してください」
そう言って、泣きながら深く頭を下げた。
それをみた葵は結奈の真横へいき、肩を摩り始める。
「話してくれてありがとう、結奈ちゃん。結奈ちゃんのお願い、ちゃんと私たちが聞いたからね。ここからは私たちに任せて。またなんかあったら教えてくれるかな」
葵の優しい言葉に結奈は顔をあげ、頷いた。
「お願いします」
* * *
結奈を帰らせた後2人は部室に残って話し合いをしていた。
「しかし、今回のは大変そうですね」
「そうだね、遙。この事件は気になる事が多すぎる」
そう言って葵は髪を触る。
「全く、どうすればいいんだ」
珍しく葵が焦っていた。こういう時、遙はいつもまず葵を落ち着かせる。
「一旦整理しましょう、葵。まずはドアのことです」
それを聞いて葵はフー、と小さく息を吐く。
「そうだね、ごめん遙。正直ドアに関しては私はさっぱりだよ」
「私もです、やっぱり都市伝説なのかな」
そういう遙に葵は微笑む。
「遙がそう言うの珍しいね、だけど都市伝説も考えとかないとね。遙ナイスだよ」
実際、葵は都市伝説の類を信じているが遙は全く信じていない。しかし今回ばかりは遙も少し都市伝説を信じかけている。
「だけど、いなくなった人のことを誰も知らないなんてありえるかな」
葵は口に手を当てながら静かに言う。よく考えてみればそうだ。結奈の言う通りだと、物質的に消えただけでなく記憶からも消されていることになる。そんなこと、ありえるだろうか。
「人の記憶そんなにすぐに消えませんよね」
遙の言う通りだ。たった1日で全員の記憶から消えることなんて、ない。
話せば話すほど2人の間に謎が浮かんだ。
「とりあえず明日、結奈ちゃんが話してたドアのあった場所に行ってみよっか」
そう言っても葵の中での考えはまとまらなかった。どうしたものか、と考えてもいい考えが浮かばない。
葵の様子を表すように窓の外の遠くの空には積乱雲が広がっていた。
アオハル探偵部 れい @yusura_gi
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