巻末あとがき ――無常なるものの中に、常住なる光を探して――

この物語を閉じるにあたって、読者の皆さまに心より感謝申し上げます。


釈尊――シッダールタ太子として王宮に生を受け、あらゆる快楽と栄誉を手にしながら、老い・病・死という避けがたい現実に出会い、真実を求めて旅立った人。その歩みは、一人の人間の苦悩でありながら、あらゆる時代、あらゆる場所に生きる私たち自身の問いに重なります。


この物語は、仏陀という存在の「伝記」であると同時に、「対話」であると、私は信じています。彼が見た世界、聞いた声、沈黙の中で立ち現れた悟り。それらは2500年の時を越え、なお私たちの内側に語りかけてくるのです。


物語中には、歴史的事実に基づく描写とともに、思想的、哲学的象徴を織り交ぜました。五蘊、十界、三世間といった深淵な仏教哲理、そして法華経に示された無上の教え――これらは単なる知識ではなく、人生の深みに分け入るための灯火であると考えています。


また、本作では語られることの少ない人々にも光を当てました。シュッドーダナ王の葛藤、五比丘の内なる願い、提婆達多の孤独と執着。仏陀は決して独りで成道したのではなく、無数の出会いと別れ、理解と誤解のなかでその道を歩んだのだということも、今あらためて書き留めておきたいのです。


巻末にて私たちがたどり着いたのは、涅槃という静けさでありながら、また一つのはじまりでもあります。仏陀の声は今もどこかで響いています。いや、私たちの中にこそ、なおも響いているのかもしれません。


この物語を通して、ほんのひとしずくでも、皆さまの心に「問い」と「光」とが宿ることを願って。


合掌。


――著者

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仏陀ブッダ @oninikyanabo

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