第二王子でありながら王宮の中に自分の居場所がないアイランが出会ったのは、闘技場での試合を勝ち抜いてきた、青い目が印象的な奴隷剣士ザファル。
策略により窮地に陥ったザファルをアイランが救ったことから2人の物語は動き出します。
周囲や運命に引き裂かれそうになりながらも少しずつ距離が縮まっていく姿が、干し杏や月、ネフェリカの花といった印象的なキーワードを随所に絡めながら描かれ、心に刺さりました。
主人公の2人だけでなく、周囲の人々にもそれぞれ抱えている思いがあり、そんな思いのすれ違いもこの作品の魅力だと思います。
切なくも美しいBL作品を探している方におすすめです!
砂の王国ラザール。
異国の血を引く第二王子アイランは、冷たい王宮の中で孤独に生きてきた。ある日、そんな彼の心を揺さぶったもの。それは、闘技場で命を賭けて戦う"ザファル"という名の、蒼い瞳の奴隷剣士だった。
100試合勝てば解放される。そんな希望を砕くように、剣が折れた。素手と斧。勝負は決まったようなもの。しかし彼に"自由を諦める"という選択肢はなかった。
一方で、この試合がこうなるようにはじめから仕組まれていたことを知ったアイランは、兄に逆らう覚悟で奴隷剣士に向って剣を投げる。
孤独な王子と自由を求める奴隷剣士。
身分違いの恋。
この出会いは偶然か、それとも――――。
冒頭からふたりが惹かれ合っている、お互いに気になっている描写があるので、このふたりが結ばれるんだろうとわかるわけですが、性格も境遇も違うふたりですから、そう簡単にはいかないわけです。
アイランは心優しい王子で、真っ直ぐな性格。気が弱そうに見えて意外と行動力があり、こうと思ったら動いていたりするのが魅力的。
ザファルは第一印象はなんか怖そうなひと(個人的な印象ですが)でしたが、不器用ながらもアイランを守りたいという気持ちが溢れていて、そうなるまでの感情の動きがたまりません。
今作はBLファンタジー。
ふたりの距離が少しずつ縮まっていく過程がとても良くて、簡単にはくっつかないというじれじれ感もちょうどいいと思います。
ふたりがふたりなりのハッピーエンドを迎えるまで、追いたいと思います(*˘︶˘*).。.:*♡
オススメの作品です。
特にBLファンタジーが好きな方は、ぜひ読んでいただきたい気持ち。
太陽が焼き付ける、エキゾチックな砂漠の王国。
血と歓声が渦巻く闘技場が娯楽となり、厳格な身分制度が人の価値を決める世界。
王宮という金の檻の中で孤独に生きてきた王子アイランと、死だけが自由だと諦めていた奴隷剣士ザファル。
交わるはずのなかった二人の道が、ある日、残酷な見世物の中で劇的に交差します。
「王子」と「奴隷」として出会った彼らは、互いの瞳の奥にある孤独を見つけ、次第にかけがえのない存在となっていきます。
兄の狂気や王宮の陰謀といった過酷な試練は、二人の絆をより強く、本物へと鍛え上げていきました。
アイランが、ただ守られるだけの弱い少年から、ザファルを守るために毅然と立ち向かう強さを見出す姿。
心を閉ざしていたザファルが、アイランのまっすぐな想いに触れ、人間らしい温かさを取り戻していく変化。
彼らは互いにとって、闇を照らす光であり、生きる理由そのものになっていきます。
二人の旅路は、壮大な戦いだけでなく、静かで美しい瞬間にこそ、その真髄が光ります。
すべての光を失った廟の暗闇に閉ざされたとき、闘技場での出会いから幾多の試練を乗り越えてきた二人が、出口のない暗闇の中で最後の望みを託した仕掛けが開いた先で見たのは、天井に広がる満点の星空でした。
手を伸ばせば届きそうなほど近くに瞬く星々を見上げた瞬間こそ、彼らが古い世界と決別し、共に新しい道を歩みだす無言の誓いとなったのです。
自らの足で運命を選び取り、誰かのために生きる強さを見つけていく。
これは、二人の魂の再生の記録です。
彼らがこれからどんな未来を紡いでいくのか、その行く末を最後まで見届けたくなります。
アイランの変化が特に印象的でした。物語冒頭では母の教えに従い「目立たぬよう息を潜めて生きる」少年だったのが、ザファルとの出会いを通じて自分の意志で行動し、相手を守ろうとする強さを身につけていく過程が丁寧に描かれているところがとても素敵です。
砂漠の王国という舞台設定も印象的です。厳しい自然環境、闘技場という制度、月の女神ナーシャへの信仰など、異国情緒あふれる世界観の中で、特に「月迎えの祭り」や雨上がりに咲く白い花など、幻想的な要素が物語に深みを与えています。
登場人物たちの内面の変化、成長が説得力を持って描かれており、読み進めるうちに自然と二人を応援したくなる、そんな魅力的な物語です。
今後も楽しみにしております!