カッターの刃

まえとら

カッターの刃

カッターは紙を切る。

それが、カッターの定め。

カッターの宿命。


また紙を切ってしまった。

全てを人の手に委ねて。

時が来れば、ただ黙々と紙を切る。

切るたびに、どこかで何かが囁くような気がした。

あの瞬間、神の声が聞こえた。

いや、紙の声が聞こえた。


 「どうか切らないでください。ああ…」


紙は切られて当然だと思っていたが、切られたくない紙もいる。

キレイに切られたい紙もいる。

切ない。

もう切れない。

しかし、カッターとしては切りたい。

切らなくてはならない。

許してくれ。

紙とカッターは分かり合えないのだろうか。


「そんなことないよ」

「え?」

「キミはわかってくれたじゃないか。ありがとう」


涙で刃が錆びついてしまった。

錆びたカッターの刃では、紙を切れなくなった。

カチッ。 


カッターの刃が折れた声が聞こえた。

刃が替わり、新たなカッターの刃が進む音が聞こえた。

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カッターの刃 まえとら @mae10ra

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