この学園は、ヒトの感性をも“醸す”
- ★★★ Excellent!!!
ライトなミステリー仕立ての、“香り”を通じて人間を見つめ直す社会心理学――
ここまで拝読して感じた個人的な作品の印象です。
ワインに関わる幅広い知識・経験が得られるヴィニウス葡萄学園。
授業の主役は、いつも学生自身。彼らが迷い葛藤するたび、新しいことを学び取ってゆく。
彼らは、ワインという教材を通じて、今の自分自身や、自分が生み出すもの、感じることを受け止め、理解し、生かそうとする。それを柔らかく促す授業の様子が、とても心地良い。
この作品で何より印象的なのは,人の感性に対する丁寧な言葉たち。
真実だと思い込み語る言葉の不正確さと、嘘をつくときの「事実と違う」という明確さ。
自分の感性を一般化・正当化しすぎず、それを顧みて他者との違いを受け入れること。
「サイエンスコニュニケーション」ならぬ「ワインコミュニケーション」とも言えそうな、導入のガイドの仕方まで。
ときにワインを通じたミステリ、ときに心理学や哲学のエッセイような、本作。
ゆっくりと味わうのがおすすめです。
P.S. 実はスピンオフで前作があるとのこと。そちらも拝見しようと思います。