気付かず貞操観念逆転世界に行っちまったコミュ力お化けの末路
イカレ狂人しか書けない人
第1話
「さーて…どうしよこれ。課題終わんねえよ燃やそうかな。」
「駄目に決まってんだろアホ。」
どうしよもねえやこれ。終わんねえよこのクソ課題。What should I do with this amount?Okay, let's burn it.『この量でどうせえっちゅうねん?よし、燃やすか。』マッチどこだっけ。
どうしてこんだけ出してくるんだあのハゲ1世。
「マジで何考えてんだろあのハゲ。」
数学の宿題が多すぎる…修正が必要だ…主に俺の回答に。
(あー…頭溶けそう。)
頭から湯気らしき何かを上げながら問題に回答する。駄目だわからん。何だよこのΣってどう使うんです??
「ホントにハゲそう。」
「これくらいじゃハゲねえよ。多分。」
さっき飯食ったからか…段々眠くなってきた。
「おい寝るなよ。死ぬ気かお前。」
「Oh…I'm fuckin Sleepy…」『クソ眠い…』
あ〜駄目だわ。糖分とったせいで血糖値上がっておやすみタイムきたわ。
そしてそのまま教科書にダイブした。よし、明日休むか。
朝日が窓から差し込んで、部屋はいつも通りの光景。
ベッドの上で伸びをしながら、俺はスマホを確認する。
通知がいっぱい来てる。友達から……だけど、なんか妙に馴れ馴れしいメッセージばっかだ。
「This is kinda weird, but fuck it, I’ll just roll with it.『なんか変だけど、まあいいや、適当にやるわ。』」
適当に返信を返し、違和感を覚えつつも既読スルーをしない様に返していく
どうしても拭えない違和感を覚えつつも、俺の一日は始まる。
この世界のルールが、いつの間にかガラッと変わっているとも知らずに。
でもそんな事よりこのΣって何?結局解けなかったんだけど?これ作ったやつ相当頭おかしいって。The mathematician who made this must be a madman.『これ作った数学者キチガイだろ。』
そんな結局解けなかった課題を鞄にブチ込んで朝飯準備。さっぱりわからん何が書いてあるんだこの課題。What is this? What is this shit!
ボウルにシリアルをぶち込んで牛乳を注ぐ。朝なんかこれで十分だ。
テレビの電源をつけてニュースにチャンネルを切り替える。
「…?」
電車内で集団痴漢、一人の男子高校生に複数の女子高生が集団で痴漢…何だこのニュース、珍しいな。普段ならくだらねえ政治関連のことか男の権利を規制しろしか言わねえニュースキャスターがこんなニュース報道するとは…だがまあ…そうだな。
「As long as I'm jealous…『羨ましい限りだぜ…』」
朝っぱらからとんでもねえニュースを見たところで登校時間が迫ってくる。
急いで着替えを済ませて洗面器に向かって泡を吐き出す。
「ぺっ!!ぺっ!!」
よく言う歯磨き粉の味ってやつはクソまじいし吐き気がする。ミントのやつ買わなきゃよかったかな。
「朝だけ寒いのなんとかならんかな。」
最近は朝だけ肌寒いくせに昼になると真夏日くらい熱くなりやがる。異常気象め。
それにしてもなんでこんなに視線を感じるんだ?俺の体になにかついてるのか?
「Good mon。つばさ。」
俺の幼馴染が待っていた。小麦色の少し日に焼けた肌。ショートヘアに少し幼さが残った顔立ち。幼馴染だから慣れたと言うのもあるだろうが、これでモテて無いのが不思議だ。実際裏ではいるのかもしれない。
「おはよう!玲央斗。」
「あれ?お前朝風呂派じゃなかった筈だろ?」
髪を見ると濡れていた。ドライヤーで乾かさずに来たのだろう。
「自然乾燥は髪にダメージが入るぞ。」
「朝寝坊しかけて、時間が無くてそのまま走って来ちゃった。」
「まったく…ほら、行くぞ。」
そういやコイツ朝にメール俺に送ってなかったか?気の所為だったのかな…
——―
クラスに移動し、仲いい奴らにおはよう言って席に鞄を掛けて結局鞄に入れたプリントがとっくの昔に提出期限切れのプリントだった事を思い出し発狂する。
「My fucking task has disappeared!!『俺のクソ課題が消えた!!』」
このあと締め上げられる事が確定してテンションだだ下がりの俺をつばさがなだめる。ちくしょう…ちくしょう…
「なんだそのくしゃくしゃの紙切れ。って落書きまみれじゃねえか…」
「Shut up…Just shut the hell up…」『黙れ…ほんと黙ってくれ…』
クラスメイトの冷静なツッコミを受け流しつつ、俺は完全に悟った。あのハゲ教師――数Ⅱのハゲ1世の前に出す紙がない。つまり俺は終わり。
「えーっと…昨日寝落ちして、夢の中で提出してたとか……そんな可能性……」
「おい、現実見ろって。てか何でその紙だけ持って来てんだよ。やる気あるのか?」
隣の席の友人の高橋が半笑いで言ってくる。コイツはコイツで遅刻魔だが、課題だけはしっかり出してくるのが腹立つ。
「おい玲央斗、大丈夫か?」
背後から、聞き慣れたつばさの声。俺の机に腕をついて覗き込んでくる。
「うっす…もはやダメっすわ。Requiescat in pace...俺の内申。」
「はぁ、これだからお前は…ほら、私のちょっと見せてやるから、急げ!」
「えっマジ?」
「30秒限定、解くんじゃなくて書き写せ。いいな?」
「Copy & paste, Roger that.」
俺はすぐに彼女のノートを開き、手を走らせる。やっぱコイツ、なんだかんだ言って頼れる。成績もいいし、面倒見もいい。
「…それにしても、私のメール見た?」
「え?」
手を止める。顔を上げると、つばさが少しだけ困ったように笑っていた。
「朝、送ったろ?がんばれーって。」
「あ、やっぱりお前だったのか。何か文面がいつもよりテンション高くて、別人かと思った。」
「……そっか。まぁ、いいや。」
言って、つばさはそっぽを向いた。ほんの少しだけ、頬が赤く見えたのは気のせいか?
チャイムが鳴る。教室がざわつきを鎮め、全員が前を向く。
「起立、礼!」
担任の声が響き、いつも通りの一日が始まる——ように見えた。
でも、俺の中では、朝から何かがちょっとずつズレてる気がするんだ。
あの1世のカツラの話じゃないぞ。
なんかこう…根本的に…こう…駄目だ。わからん。
一時間目。地獄の幕開け。あのハゲ1世の数Ⅱ。
「はい、席につけぇーい。」
響くのは、例のダミ声。頭頂部がピカピカすぎて、窓からの朝日を反射しスクリーンに逆光を与える、伝説の存在――数Ⅱのハゲ1世。
「……なんであの人、あそこまで堂々とハゲてんの?」
「お前、それを言うな。目が潰れるぞ。」
前の席の女子が小声で呟き、俺はそれにヒソヒソ返す。とはいえ、教室中の誰もが思っていることだろう。光ってるんだよ、あのハゲ。もはや後光の域。
「さて、本日は“数列の応用”じゃ。テストに出る。ノートを取れ。寝るな。間違えたら死刑。」
「死刑!?」
「おいそこ!反応が大きい奴から当てるぞ。お前、立て。」
「ちょっ、マジっすか…。Shit!『クソめ!』」
いきなり当てられ、立たされた俺は、冷や汗をかきながらプリントの問3とにらめっこする。
「Σk=1からnまでのaₖの和を求めよ……いやいや、どれがaₖなの!?意味不明すぎるんだけど!この式設計したやつ地獄から出てきたのか?」
「You fucking teacher go to hell!!『この腐れ外道教師め地獄に堕ちろ!!』」
「英語で叫んでも駄目じゃ。座れ。」
地獄の門は開かれた。今日もまた、ハゲ1世の圧政によって生徒がひとり、理不尽に補習という名の拷問へと送られる。
ああ…脳が焼けてく…中指に血が集まっていく…
……っていうか、この教科書に登場する数学者って、間違いなく性格悪いよな。頭も絶対悪い。いや、良いのかもしれんが、常人には理解不能だ。
完全に理解が追いつかない頭で、俺は教科書の端を必死にかじるように睨みつける。目が死ぬ。いや、既に死んでる。
コツン、と、俺の肘に何かが当たった。視線を向けると、つばさのノートが、少しだけこちらに差し出されていた。
そこには、俺が詰まってる式の解き方の流れが、簡単にまとめられていた。字が丁寧で、要点も絞られている。すぐに理解できるレベルにまで噛み砕いてある。
「すげえな…お前…」
あの明るさで、こんなに気が利くってなんなんだコイツ。教科書の暴力に負けかけてた俺の脳が、ちょっと冷却されてく気がした。
「ありがと……」
声を出す代わりに、小さく口の形で伝えると、つばさはニッと笑って、指を一本立てた。たぶん“1回だけな”ってことだろう。
そうやって見つめ合ってたら……なんか。
不意に、変な空気になる。
顔、近くね? いや、いつも通りっちゃ通りなんだろうけど、改めて見ると…俺の幼馴染は綺麗で可愛い。すっぴんなのにちょっとだけ頬に赤みがあって、なんか柔らかそうな……いやいやちょっと待て。
「……」
何考えてるんだ、あのつばさだぞ。幼馴染だぞ。自重しろ見境なしのアホ。
「おい玲央斗、なんか顔赤くね?」
「It's just my mind.『気の所為だろ。』」
それにしてもこのハゲ1世め。教育委員会に訴えてやろうか。一撃だぞ。一撃。お前なんか一瞬でクビだ。
「どうにか補修からは逃げれたな。」
あのハゲ1世の魔の手からは逃げることができた。ほんと、つばさ様々だぜ。
…何だろうか。いつもよりつばさの距離が近い気がする。本当に気の所為だろうか。…気の所為なんだろうな。
「で、結局この…何だこの…小学生が書きましたみたいな記号…数学的帰納法を使った等式の証明ってやつの解き方が一ミリもわかりましぇん。」
「このアホ…。」
必死に考えたがさっぱり理解不能。
「駄目だわからん。」
「お前、途中から頭湯気出てたぞ……」
「オーバーヒートっつうんだよ。で、次英語?英語って……まだ俺たちに勉強させるのかよ。」
「働け。」
「……クソ、資本主義め。」
授業が始まって俺が机に突っ伏してぼやいてると、隣の席のつばさがこっそりノートを覗き込んできた。
「ね、玲央斗。……この would you mindって何? マインドって、気にするって意味だっけ?」
「あー、それは……うん、ちょっとめんどくさい言い方だけど、要するに~してもらっていい?って感じ。」
「ふーん……え、でも mindが気にするなんだったら、Would you mind opening the window?って、窓を開けるの嫌じゃないですか?みたいな?」
「そう。だから、答えるときはYesって言うと断ることになる。つまり、Yes, I do.だとえ、開けたくないですってなる。」
「ややこしっ!」
「だろ?」
俺は軽く笑って、つばさのノートにサラッと図を書いてやる。気づけば体をちょっと寄せて、肩が触れるくらいの距離。つばさは少し固まってるが、俺はそのまま話を続けた。
「でもさ、こう考えたら楽。Would you mind〜?ってのは、丁寧すぎて逆にわかりにくい言い方。だからCan you〜?って言い換えれば、だいたい意味一緒。」
「なるほど……そっちの方がわかりやすい!」
「だろ? でも、こういう丁寧表現って、気を遣うときに使うんだよ。」
「例えば?」
「……じゃあ、こう言ったとする。Would you mind going out with me?」
「……ん?」
「丁寧に言ってるけど、意味は俺と付き合ってくれませんか?ってことになる。よく映画とかで見るやつだ。」
「っ…!?」
「ほら。答えるときにYes, I would.って言ったら無理です。になる。逆にNo, I wouldn’t.ならいいよって意味だな。」
「な、な、な、なるほどね!?あっはは、なるほどなるほどなるほど~!」
俺はペンを指で回しながら、教科書を閉じてぼそりと呟いた。
「……ま、そういうのは授業中に言わねーけどな普通。……つばさ?」
顔はそっぽ向いてるのに、耳だけ真っ赤だ。それに、なんだか…挙動不審だ。
「…大丈夫か?熱でもあるのか?」
「大丈夫だからっ!!…」
机に突っ伏してふて寝。そして5分もしないうちに二時間目が終わってしまった。
…なんだろう。このなんとも言えない違和感は。
気付かず貞操観念逆転世界に行っちまったコミュ力お化けの末路 イカレ狂人しか書けない人 @Entech
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