アル中の女とシラフの僕【短編小説】

Unknown

【本編】

 今にして思うと、僕の人生に「青春時代」と呼べるものは全く無かった。

 

 生まれつき内向的な性格の僕は、小学生の頃、どうしてもクラスの輪に溶け込むことが出来ず、休み時間はいつも男子みんなが外で遊ぶ中で僕だけが教室に取り残されて、仕方がなく僕は図書室に向かって、全く興味のない小説を読んだりして時間を潰した。いつも1人で寂しかったけど、勇気を出せずに「仲間に入れて」と言えずにずっと1人ぼっちだった。そんな小学生時代。

 

 中学生の頃は何の部活にも入っていなかった。教室の中には友達と呼べる存在が1人もいなかった。僕の場合、幸いにも「いじめ」に遭う事は人生の中で全く無かった。あくまで自己分析だが、おそらく僕は「触れない方がいい奴」と認識されていたのかもしれない。空気のような存在感で、誰からも触れられることは無かった。男子生徒のいじめの場合、いじめ甲斐がある奴がいじめのターゲットにされるケースが多い。つまりリアクションや反応が面白いとか。だが、僕をいじめたとしても何のリアクションも取らないだろうし、こいつはそもそもつまらないと判断されたのかもしれない。僕ではないクラスメイトのF君という男子が毎日いじめを受けていた。それを僕は見て見ぬふりをしていた。いつの間にかF君は転校していった。それからいじめの標的が僕に移行することは無く、3年間、普通に孤独に終わった。この頃になると、僕は1人で生きているのが当たり前という感覚を自然と持つようになり、孤独でも全く辛くなかった。むしろ解放感すら得ていた。

 

 高校時代も僕は、何の部活にも所属せず、高校3年間を1人ぼっちのまま卒業した。高校生にもなれば流石にいじめ行為そのものが発生しなかった。(偏差値が極端に低い高校だと話は別かもしれない。ちなみに僕が通っていた高校はちょうど偏差値50の普通科高校だった)


 僕は大学は、千葉県にある平凡より少し下の偏差値の私立大に4年間通わせてもらった。僕は群馬県に住んでいたから、同じ関東圏に位置する千葉県の安いアパートを借りて4年間を静かに過ごした。ちなみに群馬県には海が無い。だから僕は幼い頃から海への憧れが強くて、大学やアパートは千葉県の海沿い付近を選んだ。


 ちなみに僕は心理学部に入っていた。だが臨床心理士やカウンセラーになりたいという夢があったわけではなく、単純に人間の心に興味があったから心理学部を選んだだけだ。大学生になった僕は、どのサークルにも入らず、授業とバイトを繰り返すだけの4年間を千葉で過ごした。就活の時期になると僕は困ってしまった。何故なら、就きたい職業や叶えたい夢が一切無かったから。どの仕事も辛そうに思えたし、面倒に思えた。やりたい仕事は無かった。そもそも心理学部を出たからと言って、そっち系の道に進む人の割合は元々少ない。心理学を活かした職業に就ける人は少ないのだ。僕は今後の人生をどうしようか少し悩んだ。そして出した答えは、就職活動を全くせずに卒業して、大学時代のバイト先の千葉のスーパーでそのままフリーターとして働こうというものだった。僕には野心や願いが本当に何も無かった。バイトの頻度や時間を大学時代よりも増やせば、親からの仕送りに頼らなくても生きていける算段と目途が立った。


 僕の両親は、どちらかというと僕に対して無関心というか、楽観的であった。例えば僕が母親に電話で「僕は大学を卒業したらフリーターになろうと思う」と伝えたら、「ああ、そう。翔太の人生は翔太のものだから、好きにしたらいいんじゃない?」という具合だった。父親に関しても「今は非正規雇用で働く大人の割合が増えてるからな。まぁ良いんじゃないか? それに大卒ならある程度の会社には後からでも入れるぞ、翔太」という感じで、僕の「大学を出たらフリーターになる」という意向に対して一切の反発や抵抗が無かった。こういう親は割と珍しいのではないかと思うが、出来るだけ頑張りたくない出不精の僕にとっては好都合だった。


 ◆


 こうして千葉の大学を卒業した僕は、スーパーのバイトに入る頻度や勤務時間を大幅に増やした。

 それから1年ほどが経つと、ある日スーパーの店長に呼び出されて、


「石井君、この店で正社員として働いてみないか?」


 という提案をされた。

 話を聞くと、どうやら僕の勤務態度や真面目な姿を見ての決断らしい。このスーパーには大学1年生の春からずっとお世話になっていた。フリーターよりも正社員の方が安定はするし収入は増える。僕には断る理由は無かったので、その場で快諾した。

 そして、これは後から噂で聞いた話だが、店長は大学を卒業しても“何故か”このスーパーで働き続けている僕を不憫に思って、正社員にならないかと声を掛けてくれたらしい。

 つまり店長は僕の事を「就職したかったのに大学在学中に就職が出来なかった可哀そうな奴」として認識しているようだった。


「でも違うんです店長。僕はそもそも就職活動を一切していない」


 と心の中で思ったが、声には全く出さなかった。


 ◆


 スーパーのアルバイトから正社員に昇格した僕は、レジ打ちや品出し以外の多くの業務も担うようになった。具体的には、売り上げなどのデータ管理や他のスタッフの勤怠管理といったマネジメント面だ。あとは棚卸しや発注、鮮魚や精肉などの食品加工も任された。

 これらの業務も、僕は可も無く不可も無く、“ごく普通”にこなした。

 シフト管理や、過去のデータを基に売り上げの目標を定めたり、セールを企画するのも全て僕の仕事になったが、大きな失敗や問題は起きたことが無かった。つつがなく仕事をこなせた。

 また、正社員になると、僕は各部門のリーダーを任された。

 更には臨機応変な対応も求められた。他の作業をしている場合でもレジが混雑していて人手が足りなければ急遽レジに入ったり、アルバイトのスタッフが急に欠勤した時は僕が穴埋めとして出勤する必要があった。

 面倒だと感じることはあったが、特に苦痛ではなかった。

 僕には特に趣味も無いし、仕事以外にやる事やしたい事が無かったからである。アパートに居ても特にやることが無いから、むしろ仕事をしていた方が気が紛れて暇潰しになった。

 ずっとそんな感覚で働いていた。

 そして年収も悪くなかった。お金は最低限しか使わないから、どんどん貯金は溜まっていく一方。

 僕が働いているスーパーは常に繁盛していて、潰れるリスクは皆無に思えた。

 僕の一生は安泰だ。このまま、特に何事も無く、人生に山も谷も無く、穏やかに年老いて死んでいくのだろうと思っていた。


 28歳の6月になるまでは──。


 ◆


 28歳の僕は、6月某日の休日に海外のドキュメンタリー映画を垂れ流しながらぼーっとコーヒーを飲んで過ごしていた。

 そんな中、先月アルバイトで入ってきたばかりの28歳の同い年の鈴木結衣さんという女性から、こんなLINEが来たのだ。


『いきなり失礼します。プライベートな質問なんですけど、石井さんって彼女さんとか好きな人はいますか?』


 ちなみに前述した通り、僕は孤独な学生時代を過ごしてそのまま今に至るので人生で恋愛をした経験がない。そして、好きな人は全くいない。


『彼女はいません。好きな人も1人もいません』


 と返信すると、すぐに既読が付いて返信が来た。


『じゃあ今度、2人とも休みの日に予定を合わせて飲みに行きませんか?』


 大人の言う「飲みに行こう」とは明らかに酒の席を指す。鈴木さんはお酒の席を通じて僕と親睦を深めたいようだ。しかしその意図が全く分からなかった。僕と仲良くなることに一体何のメリットがあるのか。

 それに僕はアルコールの持つとんでもない有害性を知っていたから、20歳を過ぎても一滴もお酒を飲んだことが無い。アルコールは百害あって一利なしの合法ドラッグでしかない。ネットで探せば幾らでも酒の悪魔的な有害性に関する記事は出てくる。

 だから僕は酒を口にするのが怖かった。


『すみません。実は僕は人生でお酒を飲んだことが全く無いんです』


 と返信した。

 すると、


『そうなんですね。じゃあ私だけが沢山お酒を飲むので、石井さんはソフトドリンクで大丈夫ですよ。予定いつなら空いてます? 一緒に食事がしたいんです』


 と返信が来た。

 鈴木さんは、やけにグイグイ来る。

 ここで、彼女の容姿について説明する。こんな事を言ったら失礼だと思うが、鈴木さんは、本当に“普通”の見た目である。28歳の、本当に普通の顔立ちの日本人女性。唯一の特徴と言えばメガネをしていることくらいだが、そのメガネでさえも“普通”であった。色も形も普通の茶色っぽいフレームのメガネ。勤務態度も、至って真面目な普通に良い人。

 この日本の中で最も“普通”な女性、それが鈴木さんかもしれない。

 そんな鈴木さんが何故か、女性経験が一切ない僕を食事に誘ってくれている。しかも割と食い気味に。

 僕はそれが不思議だった。僕なんかといても、何も楽しくないだろう……。

 ちなみに僕の容姿は、メガネで地味な容姿だ。一応、接客業であるため、眉毛や髪形を整える程度の気は遣っているが、僕の容姿は決して良いとは言えない。自己評価では、良くて中の下くらいだろうと思っている。かっこいいと人生で言われたことも無ければ、ブサイクだと言われたことも無い。

 鈴木さんからの食事の誘いを断る理由も特に無かったから、僕は誘いに乗った。

 すると、すぐに2人で食事に行く予定日が決まった。

 3日後の午後6時、●●駅前の某居酒屋に集合とのことだ。

 やり取りを終えた後、僕はスマホ片手に、アパートの中でぽつりと独り言を呟いた。


「そういえば僕、女の人と2人きりで食事に行くの生まれて初めてだ」


 網戸にしていた窓の外からは、川のせせらぎと車の通過音と鳥の声が聞こえた。


「てか、鈴木さんに彼氏がいる可能性を一切考慮してなかった。聞かないとやばいかもしれない」


 と呟いた僕は、LINEで鈴木さんにこう訊ねた。


『鈴木さんって今お付き合いしてる人とかいますか? もしいたら、ちょっと2人きりでの食事は辞めておきたいです。恋人の方に申し訳ないので』


 すると、このような返信が来た。


『3か月前に彼氏に振られて、それ以来ずっとフリーです』

『そうなんですか』

『はい。じゃあ3日後の午後6時に●●駅前の居酒屋で待ち合せましょう』

『分かりました』


 そこでやり取りは終わった。


 ◆


 3日後。

 午後6時に待ち合わせをしていた居酒屋付近に10分前に到着して待っていると、その1分後くらいに鈴木さんが薄ピンクのバッグを片手に歩いて来た。


「あ、すみません石井さん。待たせちゃいましたか?」と鈴木さん。

「いや、1分くらいしか待ってないです。僕も今さっき来たところで」

「あ、ならよかった。さっそく中に入りましょう。このお店、個室があるから周りを気にしないでじっくり喋れるのが好きなんです」

「へぇ」


 僕は居酒屋に入るのも人生で生まれて初めての体験だ。

 紺色の暖簾を2人でくぐり抜け、受付を鈴木さんが済ませると、僕たちはすぐ個室席に案内された。

 そこは和の雰囲気が漂う座敷の部屋だった。

 テーブルにはタブレットのような液晶タッチパネルがあり、そこにメニュー表の番号を入力して注文するシステムになっていた。

 2人でテーブルを挟むように向かい合う形で座ると、さっそくメニュー表を開いた鈴木さんは、

 

「私、お酒が死ぬほど大好きなんですよ~。今日の為に2日も飲酒を我慢してました。最初はとりあえずビールか烏龍ハイかな~。あ、そうだ。石井さんって本当に人生で一度もお酒飲んだこと無いんですか?」


 と訊ねてきた。


「はい。全く無いですね。あと、やっぱり酒は精神と内臓に与える有害性がとても高いので、僕は今後もお酒を飲む予定は一切ありません。一緒に飲めなくて申し訳ないです」


 僕が真顔でそう言うと、鈴木さんはケラケラと楽しそうに笑った。


「あははは。うける」

「え、なにが?」

「いや、別に。あ、そういえば石井さんって私と同級生でしたよね?」

「はい。僕は1996年の9月生まれです」

「私は1996年の8月生まれです。今日だけはお互いにタメ語で話しません? せっかく居酒屋に来たんだし。しかも私の方が若干人生の先輩だし」

「あぁ、うん。そうだね。今日は飲みの席だから無礼講で行こうか」

「やったー。ねぇ石井、石井にもメニュー渡すから、好きなの頼みなよ!」

「なんか急にフランクになったな。石井って」


 と言いつつ、僕は笑って、鈴木さんに渡されたメニュー表をぼんやり眺めた。メニューがかなり豊富だ。何を頼めばいいのか全く分からない。

 僕は鈴木さんにこう訊ねた。


「ねぇ鈴木。メニューがありすぎて何を頼めばいいか分からないんだけど」


 すると鈴木さんは笑顔でこう言った。


「じゃあとりあえず私が適当に頼むよ。定番メニューはね、焼き鳥の盛り合わせとか、唐揚げとか、刺身の盛り合わせとか、枝豆とか、焼き魚とか、ポテトサラダとか、だし巻き卵とか? とりあえず私が色々頼むね」

「サンキュー鈴木」

「いいんだよ石井。石井は居酒屋初心者なんだから、ベテランの私に全部任せて」

「頼もしいな。さすがうちの従業員」

 

 僕がそう言うと、鈴木さんはハイテンションになった。


「あははは。とりあえず私は~、最初はビールと烏龍ハイから入って、めっちゃアルコール度数が高いウィスキーとブランデー飲みまくろっと。今日は記憶が飛ぶ寸前まで飲みまくるぞ~! 明日は私、バイト休みだし!」

「鈴木ってそんなに酒が好きだったんだ。職場ではめっちゃ真面目だから、ちょっと意外だ」

「そりゃ酒で現実逃避しなきゃ人生なんてやってられないよ」

「へぇ。そんなもんなのか」

「お酒が私にとっての旦那。一生のパートナーって感じ。私、毎日ストロングの缶チューハイ何本も飲んでるんだよ。休みの日は1日9本飲むこともある。あはは。終わってるでしょ」

「終わってるねぇ」


 と僕は笑う。

 てか飲みすぎだろ……。酒ってそんなにいい物なのか?

 酒を全く飲んだことが無い僕には、鈴木さんの言葉の感覚が全く分からない。まぁ酒は国が合法的に認めてるだけの単なるドラッグだから、飲めば一時的に気持ちよくはなれるのだろう……。しかしその代償は大きいはずだ。


「そんなに飲んで身体を壊したりはしないの?」

「うん、壊しまくったよ。私、28歳になるまでに3回も急性膵炎っていう地獄みたいな病気で入院してるし、お酒で頭がおかしくなって精神科に入院してたこともあるんだよ」

「今、酒が私の旦那って言ったけど、その旦那からDVされまくってるじゃん。ひどい旦那さんだなぁ」

「あはは。まぁね。最低の旦那だけど良いところもあるから離婚できないって感じかな。ねぇ聞いて石井。シラフの時の私はね、ほんとの私じゃないの。酔ってる明るい私が本当の私なの」

「いや普通に考えて逆でしょ。シラフの自分が本当の鈴木だよ」

「そうだけど、シラフで生きるのめっちゃ辛くて……。酒に頼らないと私は死んじゃうの」

「……」


 だいぶ鈴木さんは悩んでいるようだが、せっかくの楽しい飲みの場だ。深い詮索はしないでおこう。

 と思っていると、続々と鈴木さんが液晶パネルにタッチして商品を注文しまくった。

 僕が唯一自分の意志で頼んだ商品はコカ・コーラだけだった。


 ◆


 注文してすぐに色んな商品がこの個室に届き始めた。

 鈴木さんはビール、僕はコカ・コーラを片手に、乾杯した。

 鈴木さんはビールをとても美味しそうに飲んで笑っている。僕もなんとなく笑いながらコーラを飲んだ。

 やがて頼んだ商品が全て届いた。しかし鈴木さんは食べ物にはほとんど全く手を付けず、酒ばかり飲んでいる。見ているこちらが心配になるくらいの豪快な飲みっぷりで、色んな種類のお酒を注文しては飲みまくっている。

 ビールから始まり、烏龍ハイ、梅酒、焼酎、日本酒、ワイン、カクテル、ウィスキー、ブランデー、etc……。一体、何種類頼んだのか。そして総計で何リットルか分からないほどの大酒をノンストップで飲んでいた。

 最初は楽しく鈴木さんと僕の2人で普通の雑談を楽しんでいた。

 だが途中から、明らかに鈴木さんの様子が変わった。

 鈴木さんは顔色こそ全く変わらないが、明らかに目がトロンとして、笑いながら回らない呂律で、甘える子供のような声音で俺にこう言った。


「ねぇ石井くん、石井くんって下の名前なんだっけ?」

「翔太」

「じゃあこれからずっと翔太って呼ぶ。だから翔太も私のこと結衣って呼んでね」

「え、そんな急に言われても……」

「固いな~。良いじゃん別にさ~。この際だから言うけど、私、翔太の事が大好きだよ」


 僕はその言葉を聞いて、かなりびっくりして、気が動転した。僕は食べていた焼き鳥を思わず途中で呑み込んで、むせそうになった。


「え……僕のこと大好きなの? なんで?」

「だっていつも職場でみんなに優しいし顔かっこいいし私みたいにお酒飲まないし」


 そんな風に僕が褒められたのは生まれて初めての事だった。単純に嬉しい。


「ねぇ翔太。わたしと結婚して。結婚したい。大好き。ほんとに大好きだよ。このあとセックスしよ。翔太の子供10000人くらい欲しい。それで、10000人の国民で石井翔太共和国を作ろう。わかった? ねえ。そのくらい大好きだよ。ずっと寂しい。だから、ずっとわたしのそばにいて。もうわたしを孤独にしないで。お願いだから。結婚して。セックスして。子供10000人が目標だからね。ずっと一緒にいようね」



 ──あ。



 これもう完全に酔ってるな。普通の人間はこんな事は言わない。鈴木さんは単なる酔狂だ。

 認識を変えよう。

 今までの言葉は全て真に受けない方が良い……。

 僕は咄嗟にこう言った。


「鈴木さん、さすがに飲みすぎだって。この辺でやめときなよ」


 僕が鈴木さんからお酒のジョッキをゆっくり取ろうとすると、鈴木さんはとても強い力で抵抗して、泣きそうな顔になって叫んだ。


「やだ。やだやだやだやだ!!!」

「なんで?」

「だって、わたしは酒が無いと死ぬまで永遠に1人ぼっちなんだもん!」

「……」


 死ぬまで永遠に1人ぼっち。

 その重い言葉に、僕は思わず押し黙る。


「ねぇ聞いて翔太。わたしね、ずっと心が寂しいの。子供の頃から、わたしずっと1人ぼっちで孤独に生きてきたの。わたしは本当に本当に、もう生きてるのが辛いの。わたし心の病気で、ずっと精神科に通ってて、ずっと辛かったの。自殺未遂だって何回もしたよ。わたし頭がおかしいの。だから誰からも理解されないの。わたしは死ぬまで永遠に1人なの。もう誰からも見捨てられたくないよ。もう嫌だ。もう1人は嫌だ。ねぇ聞いて。わたしには翔太しかいない。翔太に見捨てられたらどうしよう。もう1人は嫌だよ……。お願い。わたしのことを見捨てないで」


 そう言って、鈴木さんは顔をくしゃくしゃにしながら、滝のように泣き始めた。

 鈴木さんが酒に強く依存してしまう背景がはっきりと見えてきた気がする……。

 それにしても情緒が全く安定していないな。

 さっきまであんなに笑っていたのに、今は別人のように泣きまくっている。まるで多重人格だ。

 僕はどうに声を掛けていいのか分からず、言葉に詰まった。

 とりあえず僕は同情する事にした。


「……寂しいんだね。辛いよな。1人ぼっちは」


 僕がそう言うと、鈴木さんはパッと電球が点いたかのように笑って、滝のように流れる涙を何度も何度も服の袖で拭いた。

 鈴木さんは嗚咽しながらも、笑顔を浮かべている。


「ってか、泣いちゃだめだよね! 本当にごめんね。ゴミでごめんなサイゼリヤ。でも聞いて。実はわたしって超天才なんだよ。ネットで暇潰しに小説とかエッセイとか書いてたらね、色んな人が今まで天才って言ってくれたの! すごくない!? わたし、もしかしたら神様かもしれないよ!」

「そうなんだ」

「どうしても翔太にわたしが書いた小説を読んでもらいたくて、ここに来る前にコンビニでわたしの短編小説を印刷してきたんだよ。見て見て!」

「うん」


 鈴木さんはとても嬉しそうに僕に何枚もの紙を手渡してきた。

 一体何枚あるのだろう。

 僕は訊ねた。


「ねぇ、これって全部で何文字くらいあるの?」

「2万くらいかな~」

「え、2万文字? すごいね。そんなにいっぱい書けるんだ」

「あははは。2万字程度ならかなり短時間で書けるよ。すごいでしょ。わたしの唯一の才能が文章を書くことなんだ~。小説書くの大好き!」

「へぇ」

「読むのに時間かかっても良いから、この場で読んでみて!」

「うん。分かった」


 僕は鈴木さんが書いたという2万文字の短編小説を読み始めた。その様子を、とても嬉しそうに鈴木さんが眺めている。まるで無邪気な幼い子供のようだ。

 僕は鈴木さんの書いた小説を真剣に読み始めた。

 たしかに面白い。文章も流れるようにサクサク読めて、内容もしっかり頭に入ってくる。

 だが正直、“天才”とまでは行かないと思ってしまった。

 面白いけど、この小説は、きっと鈴木さんじゃなくても書ける小説だ。“鈴木さんだからこそ書ける小説”というわけではない。似たような小説はこの世に山ほどある。


「全部読み終わったよ。小説」

「えっ、どうだった!?」

「面白かったよ」

「超嬉しい。ありがとう。ねぇねぇ、わたしってやっぱり天才だと思う?」


 僕は正直、この小説を天才的な内容だとは思わなかった。だけど、それを正直に言ってしまったら鈴木さんはショックを受けて高確率で泣く。今の状態の鈴木さんは慎重に扱わなければならない。

 なので僕は彼女を肯定する事にした。


「すごいよ。天才的だよ」

「でしょ!? やっぱりわたしって天才なんだよ! 天才だから孤独なんだ! 天才だから誰からも理解されないんだね!」


 それは絶対に違う。

 僕はこの居酒屋での鈴木さんの様子をずっと近くで見ていて、確信した。

 鈴木さんが孤独な人生を送っているのは、天才だからじゃない。酒を飲んでいるからだ。「天才=孤独な人」というわけではない。鈴木さんの人生に影を落としているのは、間違いなく酒だ。常にこんな酔っ払い方をしていたら、そりゃ他人から愛想を尽かされて孤独になる。

 これだけは正直に言わなければならないと思い、僕が口を開こうとした瞬間、鈴木さんが切なそうな表情を湛えて、こう呟いた。


「……実はわたしが1番天才だったのはね、高校生とか専門学生だった時なんだ。10代の時期は本当に天才って言われまくってた。なんかカルト的な人気があったの。だけどね、20歳を過ぎて、お酒をいっぱい飲むようになってから、あまり天才って言われなくなった」

「そうなの?」

「うん。実はさっきわたしが翔太に渡した小説、わたしは全く面白いと思ってない」

「マジかよ」

「うん。わたしはあんなもんじゃないの。ほんとはもっと才能があるの」

「あのさ、鈴木さんが天才って1番呼ばれてた時期は10代の頃なんだよな? つまり、酒に溺れる前なんだよな?」

「うん」

「じゃあ酒を完全にやめたら、また昔みたいに真の意味で天才的な小説が書けるんじゃないかな」

「そうなのかな~。でもお酒が無い人生なんて考えられないな~」

「でも、鈴木さんの人生が孤独な理由、僕には分かるよ」

「え、なに?」

「お酒のせいだ。間違いない」

「ほんとに~?」

「うん。本当に」

「そっか~。やっぱりそっか~。自覚はあるんだよ。自覚はある。いつもそう。お酒が原因で私からどんどん人が離れていく。元カレにもお酒がきっかけで振られた」

「お酒が孤独の原因だって分かってるなら、お酒やめればいいだけなのに」

「あとね、わたしの才能が枯れたのも多分お酒のせい。お酒の飲みすぎで脳が正常に働かなくなって、何も面白いことが思いつかなくなっちゃったの」

「そっか。じゃあお酒、思いきってやめてみたら?」

「うん。やめてみる。でもとりあえずもう一杯ウィスキー頼んでから、やめるかどうか決める!」


 そう言って、鈴木さんはタッチパネルを操作してウィスキーを颯爽と注文した。


「あ~あ、だめだこりゃ」


 思わず僕は苦笑した。


 ◆


 やがてウィスキーがなみなみと注がれたジョッキが個室に届けられた。

 鈴木さんはそれを嬉しそうに手に取ると、美味しそうにゴクゴク飲み始めた。

 彼女は酒にめちゃくちゃ強い体質なのか、眠そうにしたり嘔吐したりする様子が全くない。酒の利尿作用でトイレに行く頻度は多いが、トイレに行ってもちゃんとこの部屋に毎回戻ってくる。これだけ酔っ払っているにも関わらず、それほど足元がふらついているわけでもない。

 一体、何時間この居酒屋に滞在しているのだろうか。

 スマホで時間を調べると、午後の6時に集合してから4時間が過ぎていた。午後10時。

 なんと鈴木さんは4時間もずっと強い酒を飲み続けている。笑ったり泣いたり忙しいが。

 やがて彼女は笑顔でこう言った。

 

「ねぇ翔太。そろそろお腹いっぱいになってきた。お腹たぷたぷ。お会計しよう。これがこのお店で最後のウィスキーだよ」

「うん。分かった。今日はもうこれ以上飲むのは辞めといた方が良い」

「そうだね」


 結果的に、注文した食べ物の中で鈴木さんが食べたのは枝豆だけで、それ以外の食べ物は全て僕が食べた。この居酒屋の食べ物は全て美味しかった。

 あと、鈴木さんの知られざる一面をかなり知って、僕は鈴木さんに対して興味が湧いてきた。

 こんな変な人は、なかなかいない。

 

「あと翔太」

「なに」

「わたしと結婚して!!!!!」

「付き合ってすらいないのに、どうやって結婚するんだよ」

「あはははは。そんなの、市役所に行って婚姻届を貰って色々記入するだけじゃん」

「そりゃそうだけど、段階ってもんがあるだろ。全ての物事には。なんで鈴木は酔っ払うとその段階を一気に全部すっ飛ばして結婚したがるんだよ」

「だっていつも1人で寂しいんだもん!」

「そっか。寂しいか」

「うん……寂しい」


 それから、個室の中には沈黙が流れた。

 30秒くらい沈黙が続いた後、鈴木さんがウィスキーを飲みながら僕にこう言った。

 

「真面目な話をするとね、わたしは酒に命を救われた。自殺したい夜も酒があれば乗り越えられた。でも、きっと、翔太の言う通りなんだよ。わたしは酒を飲むから孤独になるんだよ。きっと、翔太にも嫌われただろうね。今日で」

「いや。そんなことない。僕は鈴木のことを嫌いになってない。むしろ興味が湧いてきた。面白い人だなと思って」

「え!? じゃあ結婚はまだしなくていいから、わたしと付き合おうよ!」

「いいよ」

「えっ! マジ!?」

「でも条件が1つだけある」

「なに?」

「お酒を完全にやめるって誓ってくれるなら、僕は鈴木と付き合いたい」

「やめるやめる! やめるに決まってんじゃん!」

「……なぁ。せめてシラフの時に誓ってくれ」

「あ、うん。たしかに」

「シラフの時に酒をやめるって誓ってくれたら、付き合いたい。だけど、もし酒を飲んだら、その瞬間に別れるからね。僕に隠れて飲むのも絶対に禁止」

「え、厳しすぎるんだけど~!」

「いや、鈴木の酔っ払い方と飲酒量を見てたら、とてもじゃないけど今の状態だと付き合えないよ」

「……うん」

「シラフの時はすごい真面目じゃん。鈴木はバイトでの勤務態度とかも超まともだし」

「でもね、たまに2日酔いの状態で働いてる日もあるよ。ここだけの話」

「あっ。犯人は鈴木だったのか。こないだお客さんからクレームが来たんだよ。『名前は分からないけど酒臭い店員がいる』って。犯人が特定できて良かったわ」

「え。もしかして私クビになる? バイト」

「クビにはしない。でも同じクレームがもう1回来たら、僕の権限で即刻クビにする」

「わかった。ありがとう。でも翔太が優しいのか厳しいのか分からない」

「僕は多分クソ優しいぞ」

「そうだね」


 そう言って、鈴木さんはウィスキーを一気に飲み干して、咲いた花のように笑顔になった。

 

 ◆


 会計は、鈴木さんのお酒の注文のし過ぎでだいぶ高額だった。だが貸しを作るために、僕は全額を支払った。

 この借りは、いつかちゃんと返してもらおう。それがどういう形になるのか分からないが。

 気付けば時刻は午後の10時半近くになっていた。

 居酒屋の外に出ると、夜風が冷たくて気持ちが良かった。


「これからどうする? もう遅いし家に帰る?」


 と僕が何気なく訊ねると、左横で鈴木さんが、


「家に帰ったら1人ぼっちになっちゃうから、まだ帰りたくない」


 と小さい声で呟いた。

 街に立ち尽くす僕らの前を季節と群衆が通過していく。その1人1人に人間ドラマがある。それをぼんやり眺めながら、僕は言った。


「僕も家に帰るといつも暗い部屋に1人ぼっちだ。実は小学生の頃から28歳の今まで1人も友達が居たことが無い。もちろん彼女だっていたことが無い」

「え、そうだったの?」

「うん。僕も鈴木と同じでいつも1人ぼっちだけど、それが苦痛だと感じない。むしろ僕にとっては孤独な状況は心地良い」

「変なの」

「多分、鈴木の場合、酒のせいで常に情緒不安定だから孤独を苦痛だと認識してしまう脳になってるんだと思う。本来、孤独は辛いものじゃないよ。むしろ絶対的な自由だ」

「あ~そうかもしれない。あと、鈴木じゃなくて結衣って呼んで」

「じゃあ今日は結衣って呼ぶ」

「明日以降は?」

「酒を飲まなかった日は結衣って呼ぶ。酒を飲んだ日は鈴木って呼ぶ」

「なにその謎のルール。せっかく仲良くなったんだし、これからずっと結衣って呼んでよ」

「じゃあ、酒を毎日やめ続けないとな」

「うん……」

「あと、もちろん職場では、お互い苗字にさん付けだからな」

「当たり前じゃん。そのくらいアル中の馬鹿な私でも分かってるよ」


 そう言って彼女は笑った。

 僕は鈴木さんに訊ねた。


「結衣、どこか行きたい場所はある?」

「海。海に行きたい。人が誰もいない海。今、海で叫びたい気分だから」

「そっか。じゃあ、海に行こう」

「九十九里浜に行こうよ」

「ここからだと結構遠いぜ」

「遠い方が一緒にいられる時間が長くなるから、遠い方が良い」

「そっか」

「うん」


 僕らは●●駅から電車に乗って、九十九里浜に向かう事にした。

 電車の中は割と空いていて、鈴木さんと僕は2人で並んでシートに座って、電車に揺られた。

 電車が目的地に着くまで、僕たちはずっと黙っていた。

 だが、鈴木さんが電車の中で唯一呟いた言葉があった。


「……人から見捨てられるのは、死ぬ事よりも怖いの。わたし」

「そっか」


 僕は、それだけを無表情で言った。


 ◆


 夜の千葉を歩き、2人で九十九里浜に向かう。九十九里浜はとてもでかいので、人が一切いない暗がりもある。

 頭上を見上げれば沢山の星と、三日月が浮かんでいて綺麗だ。ああ、もうすぐ夏が来る。夏は嫌いだ。暑いから。

 周りに人は誰もいない。僕らしかいなかった。

 砂浜を足で踏みしめる音。寄せては返す波の音。

 そういえば僕が高校を卒業して千葉の大学に進学したのは、海の近くに住んでみたかったからだ。だが、千葉に来て10年目を迎えた28歳の今となっては、もう海を見ても特に何の感慨も無い。人は慣れる生き物だ。良くも悪くも。

 鈴木さんと2人で歩いて海に近づく。

 そして波が靴に届くか届かないかのギリギリの場所に来た時、僕の左横で鈴木さんがこう言った。


「翔太。今から叫ぶから、5からカウントダウンして」

「分かった。5、4、3、2、1──」


 瞬間、横で鈴木さんが大きく息を吸う音がした。


「海の馬鹿野郎~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」


 よくあるフレーズで九十九里浜を思いきり罵倒したその直後、鈴木さんは「オエエエエエ!」と言いながら、盛大に砂浜にゲロを吐いた。しかも複数回。

 そして、両膝に手をついて、鈴木さんは苦しそうに「うぅ……」と呻いた。


「おい大丈夫? 結衣」


 僕は咄嗟に背中をさすった。


「だいじょばない。だめ。きもちわるい……」

「飲みすぎだよ、お酒」

「ごめんね」

「謝らなくていいよ。僕は何も困ってないから」

「……わたし、お酒やめてみたい」

「どうして?」

「翔太と付き合いたいから」

「これほどのアル中がお酒やめるのは茨の道だと思うけど、やれそう?」

「やってみないとわかんない」

「それもそうか。やってみないと分からないよな、何事も」

「うんうん」


 それからはただ、波が行ったり来たりする音をしばらく2人ぼっちで立ち尽くして星の下で聴いていた。ああ、心が落ち着く。

 なんだか青春っぽい事をしている気分になった。

 

 ◆


 結論から言うと、あの日から鈴木さんは1週間以上も全くお酒を口にしなかった。

 LINEの連絡は職場の業務連絡のみで、プライベートなやり取りは一切しなかった。2人で取り決めた事ではないが、何故か自然とそうなっていた。

 時折、職場のバックヤードなどで僕が、


「鈴木さん、そういえば断酒はまだ続いてますか?」


 と真顔で訊ねると、彼女は笑顔で、


「はい。実は今、私は好きな人がいて、その人と付き合う条件としてお酒をやめることを提示されたんです。だからお酒はやめてます」


 と言った。


「そうなんですか。きっとその人も鈴木さんのことを応援してくれてると思いますよ」


 と僕は言った。すると鈴木さんは、


「ちなみに石井さんは好きな女性とかいるんですか?」


 と言ったので、


「仕事中なのでプライベートな事には答えられません」


 と返した。

 すると彼女は笑った。

 ちなみに『名前は分からないが酒臭い店員がいる』という以前のクレームは、店には一切来ていなかった。


 ◆


 居酒屋での出来事からちょうど1ヶ月が経過した日、僕は鈴木さんにLINEで業務的な連絡をした。

 

『鈴木さん、明日の土曜日はバイト休みですよね? 実は●●駅前の●●●という居酒屋で鈴木さんに会いたいと言っている男性がいるんです。もし予定が空いていれば、明日その男性に会いに行ってあげてくれませんか? 時刻は夕方の6時を希望しているそうです』

『分かりました。私、たまたま明日は予定が空いているので、その男性に会いに行ってきます』



 ~翌日~



 僕は1ヶ月前のあの居酒屋に、集合時間の10分前に到着した。それから1分くらい経って、薄ピンクのバッグを持った鈴木さんが現れた。

 

「あ、すみません石井さん。待たせちゃいましたか?」と鈴木さん。

「いや、1分くらいしか待ってないです。僕も今さっき来たところで」

「あ、ならよかった。さっそく中に入りましょう。このお店、個室があるから周りを気にしないでじっくり喋れるのが好きなんです」

「へぇ」


 1か月前も、こんなやり取りをした記憶がある。

 鈴木さんが受付を済ませると、僕らはすぐに個室へと案内された。和の雰囲気が漂う座敷の部屋だ。

 2人とも個室に入った瞬間、鈴木さんが笑顔になり、


「ねぇ翔太。なんで、よりによってここなの? めっちゃ私にお酒飲ませようとしてるじゃん! せっかく1ヶ月も頑張って断酒してたのに!」


 と抗議した。僕は笑顔で、


「だからこそ、ここを選んだ。僕は性格が悪いんだよ。結衣、マジで一滴も酒は飲んでないんだな?」


 と確認した。


「うん。一滴も飲んでない」

「本当に?」

「本当に」

「正直、結衣が隠れて家でこっそり飲んでても、僕にはそれを確かめる方法が無い。だから僕は結衣の言葉と行動を信じる」

「ありがとう。私を信じてくれて」

「うん。じゃあ、とりあえず注文しようか」

「うん。私が適当に注文するのでもいい? 私は居酒屋の大ベテランだからね。注文は任せて」

「おお、頼もしいな。さすがうちの従業員」


 僕らは向かい合ってテーブルを挟む形で座った。

 鈴木さんが液晶タッチパネルを操作して、次々に商品を注文していく。

 僕が唯一自分の意志で注文した商品はコカ・コーラだけだった。

 やがて、注文した商品が続々と個室に届いた。

 注文した全ての商品が届いて、僕らは笑顔でジョッキとジョッキをコツンと合わせて乾杯した。

 僕の持つジョッキにはコカ・コーラ、そして結衣の持つジョッキにもコカ・コーラが入っていた。













 

 ~おわり~














【あとがき】  鈴木結衣のモデルは過去の僕自身で、石井翔太のモデルは現在の僕自身です。結衣の作中の発言などは過去の僕が酒で酔ってる時に実際に人に言った言葉ばかりです。リアルの世界の僕が全くお酒を飲まなくなった分は、今後、僕の小説の登場人物たちに沢山飲ませるかもしれません。


 最後までご覧いただきありがとうございました。またここで会いましょう。


 ちなみに次の小説の構想は既にあって、書き始めています。

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アル中の女とシラフの僕【短編小説】 Unknown @ots16g

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