心の中
白川津 中々
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級友に里山という男がいて、こいつがまったく愚鈍であった。
頭の回りが遅く、いつもだらしのない顔をしていて見ていると腹が立ち、私は彼が嫌いだった。苦労も悩みもなく、将来の憂いを想像もしない思慮の浅さと配慮の足りない精神性にはある種畏怖に近い感情があり、得体の知れない生物のように映っていたのである。
その里山の母親がある日亡くなった。寝室で首を括ったそうだ。聞くところによると心を病んでいたそうで、近所からは気狂いの烙印を押され煙たがられていたという。だから里山は異様なのかと半腑に落ち、更には母親の死に対してどんな面持ちとなっているのかと下衆な興味を持った私は、彼を揶揄ってやろうと近付いた。
しかし、いざ目の前にすると言葉を失う。幽鬼のように青ざめ、真っ赤に目を晴らした里山を見ると、吐き出そうとしていた軽薄な言葉が呑み込まれてしまったのだ。
「悪いね」
里山はそう言って、どこかへ行ってしまった。その声は深いようで、どこか空っぽなようでもあった。私は自身の恥知らずを思い知らされ、里山に対しての怒りが込み上げてきたが、どうするわけにもいかなかった。しばらくして里山は元の愚鈍に戻ったわけだが、その日以来、私は彼を直視できなかった。
心の中 白川津 中々 @taka1212384
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