好意

白川津 中々

◾️

「俺さ、時間止められるんだ」


前島まえじま君が妙な事を言い出したので愛想笑いを浮かべたのだが、なにやら神妙な面持ち。え、マジで止めれるん?


「ちょっとにわかには信じられないんだけど」


「紫と白。フロントに蝶々の意匠」


あ、マジなんだ。時間止めて私の下着見たんだこいつ。


「訴えるよ?」


「時間止められてパンツ見られましたっていうのか?」


「……」


右ストレート。しかし拳が空を切る。そこにいたはずの前島君が消えたと思った瞬間、背後から「よせよ」と憎たらしい声が聞こえた。振り返えるとこのやろう、壁にもたれ掛かってスカした顔で私を見ている。


「バストサイズも順調に大きくなっているな」


胸揉みやがった。しかもこの口ぶり。定期的にやってやがる。


「あのさぁ。法的に裁かれないかもしれないけど、普通に殺されるとか考えないの? 私、あんたの家も家族も知ってるんだよ?」  


「もちろんそういったリスクは想定ずみだ。しかし聞いてくれ」


「カスの言葉なんか聞く耳持たないんだけど」


「まぁそう言うな。俺はこの能力を得てからクラスの女子全員にバレないセクハラというか猥褻な行為をしてきたんだが」


「マジで死ね」


「能力を解くにはどうも、好きな女に猥褻な行いを働かなければならないらしいんだ」


「は?」


「色々試したんだ。止まった時の中で人に言えないような真似もした。しかし、再び時間を動かすにはそうするしかなかったんだよ」


「ふぅん。で、あんたに好かれた不運な女って誰なの?」


「分からんか?」


「さっぱり」


「お前だよ。佐田さだ


「……え?」


「佐田。俺はお前が好きなんだ。付き合ってくれんか」


「……無理」


「えぇ!?」 


「なに驚いてんの? 世界中探しても誰も愛さないよあんたなんか」


「何故だ。俺は時間を止められる。法に問われず非合法的に金を稼げるんだぞ」


「あんたの心に良心のブレーキはないのか」


「仕方ないよできちゃうんだもん」


「仕方ないで済むか。というか、なんでわざわざ能力のこととか言うの? 黙ってればよかったじゃん。私も聞きたくなかったし」


「いやぁ、隠し事とか不誠実かなと」


「どの口が言ってんだ!」


本当に最低。もう最悪。何が一番嫌かって、こんな奴を今まで好きだったって事。正直で実直で、ちょっと変で皆からは避けられてるけど、いい人だなって思ってたのに、もう汚物にしか見えない。なんらかの事故に巻き込まれて死んでほしい。


「さて佐田よ。カップルとして結ばれた記念だ。初夜と洒落込もう。昼だけど」


「絶対嫌。だいたいカップルじゃないし」


「そうか、ならば、時間を止めるしかないな! 既成事実を作り逃げられなくしてやるぞ! 今から時間を止める! 動き出したその瞬間から二人の新しい生活が始まるぞ! 子供の名前を考えておけ!」


「マジでお前ホント……」


……


……


……


……


……


……


……


……


……


……

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