二章 レッドホーンブルの行方

一話 兎人族ミミー

 今日もいつもの様に縄張りの様子を散歩がてら見に行くのじゃ!!妾の縄張りに近づく不届者は滅多に居らぬが、時々強い魔物も居るからのう。退屈凌ぎぐらいには、役立つのじゃ!!


 クンクン。うん?何やら変な匂いがするのう。この場所を縄張りにして五十年近く経つが今まで嗅いだ事がない匂いじゃ。


 「あっちの方じゃな」


 妾は、匂いを辿って森の端の方までやって来た。木々の隙間から覗くと一人の兎人族が焚火を囲み食事をしておる。


 (何じゃ?!この美味そうな匂いわ。妾もあれを食べたいのじゃ!!)


 「それを妾にも寄越すのじゃ!!」


 兎人族の少女は、妾の言葉に振り返り驚愕に目を見開く。


 「ぬわぁーーー。ドラゴンっす!!死ぬっすー」


 手に持っていた食事を無理矢理口に詰め込むと、一目散に駆け出した。


 「むー。彼奴、妾の分まで食べたのじゃ!!」


 バタバタと駆けて行った兎人族を追いかける。流石は兎人族。中々の脚力なのじゃ。まぁ、妾からは逃げきれんがのう。


 「待つのじゃ!!」


 兎人族の前に降り立ち行くてを阻む。


 「見逃して欲しいっす。うちを食べても美味しくないっすよ」


 「ふむ!!ならば先程お主が食べていたものを妾に寄越すのじゃ!!」


 「こんな物で良ければ幾らでも挙げるっすよ。だからうちを食べないで欲しいっす」


 兎人族は、ポーチに入っていた食べ物を妾に全て差し出すと、自分もまた食事を再開し始めたのじゃ。此奴肝が据わっているのかいないのか分からぬのじゃ。


 ドラゴンの姿のままでは、食べにくい為人の姿になる。これは、人化魔法と呼ばれ父上に教わったのじゃ。


 ツンツン。ツンツン。


 「うがーーー。鬱陶しいのじゃ!!食事の時ぐらい大人しくしておるのじゃ!!」


 全く。折角食事を楽しんでおるのに邪魔しおって。


 「ドラゴンが人になったっすか?人がドラゴンになっていたっすか?」


 「モグモグ。・・・ゴクン。・・・妾は、正真正銘ドラゴンじゃ!!今は、人化の魔法を使っておる。リリスと呼ぶが良いのじゃ!!」


 「うちは、兎人族のミミーっす。宜しくっす」


 ふむ?此奴兎人族の割には、どこか違和感があるのう?呪いの類いかのう?まぁ下手に手を出せば、呪いがより強力になりかねんからのう。今は様子見じゃ。


 しかし、此奴よく喋るのう。先程までは、小動物みたいにプルプルと震えておったというのに。


 「うちの話聞いてるっすか?」


 「うむ!!聞いておるのじゃ!!」


 「本当っすか?なーんか怪しいっすね?」


 じとー。とミミーが睨んでいる。


 妾はドラゴンじゃ。耳の良さは、他のものよりま優れておるのじゃ!!


 「ふっ」


 此奴鼻で笑いよった。うぬぬ。こうなれば、妾の凄さを見せてやるのじゃ!!


 「大丈夫っすか?うち、兎人族の中でも一番聴覚が優れているんっすよ?」


 「当たり前じゃ!!その代わり妾が勝ったらお主の鞄に入っている物を寄越すのじゃ!!」


 「どんな嗅覚してるっすか?今有るのは、このチーズっすね。良いっすよ。うちが負けたらリリスにあげるっす」


 「それでどうやって勝負するすっか?」


 「ラフォットを先に捕まえた方が勝ちでどうじゃ?」


 「ラフォットっすか?良いっすよ」


 ラフォットは、兎に似た生き物で真ん丸の体が特徴じゃ。警戒心が強く滅多にその姿を見る事は出来ないのじゃ。その事から幸運の兎としても知られておる。しかし、餌である木の実を食べる時だけ気が緩むのか少しだけ音を立てるのじゃ!!


 その音を逃さずに聴き分けるのが今回の勝負じゃ!!



 リリス視点


 ラフォットは、大抵餌場の近くにおるのじゃ。まずは、そこまで移動じゃな。


 ラフォットの餌となる木の実が生い茂っている森の中央までやって来た。


 「・・・!!そこじゃー!!」


 捕まえたのじゃー。この丸々とした身体に長く鋭い爪、尖った前歯どう見ても・・・違うのじゃー。此奴はラフォットに良く似たララットじゃ!!しかも此奴は、途轍もなく凶暴じゃ。


 こら、噛み付くんじゃないのじゃ。ぐぬぬ。離すのじゃ。此奴いつまでも噛みつきよって。


 そこまで妾と闘いたいのなら見せてやるのじゃ!!


 ズドーンという音と共に妾は、元の姿に戻る。ぬはは!!小さいのう。小さいのう。ほれほれ、先程までの威勢は何処に行ったのじゃ?


 「ピギー?!」


 ララットは、悲鳴を上げると一目散に逃げていく。


 「待つのじゃ!!」


 ララットめ。何処に行ったのじゃ!!見失ってしまったのじゃ。うぬ?周りの木々が倒れ、地面は抉れておるのじゃ。誰がやったのじゃ!!妾の縄張りを荒らすとは、命知らずじゃのう。・・・妾か!!そう言えば今は、ドラゴンの姿だったのじゃ。道理で他の生物が近寄って来ないわけじゃ。


 「こうしてはおれんのじゃ。早くラフォットを見つけなければのう」


 幾らラフォットを探しても見つからないのじゃ。それどころか生物全てが逃げ出しているのじゃ。ぐぬぬ。


 『何処じゃー。何処におるのじゃー!!』


 ハッ。妾とした事が、遂ドラゴンボイスを使ってしまったのじゃ。ミミーは、大丈夫かのう?



 ミミー視点


 ふー。びっくりしたっす。いつもの様にお宝探しをしていたら急にドラゴンに出会ったっすからね。誰も予想出来ないっすよ。


 それにしても、こんな物がリリスは欲しいっすか?美味しいんっすかね?あのヒゲおやじに騙されたかと思ったすけど本当にお宝だったっすか?それなら今度は、少し優しくしてあげるっすよ。


 ラフォット探しは、村でもやっていたから慣れてるっすよ。うちが勝てばドラゴンに勝ったと自慢出来るっすね。


 (凄いぞミミー!!ミミーこそ最強だ。キャー!!ミミー様よ。)


 ムフ。ムフフ!!良いっす。凄く良いっす。ハッ。そんな事よりラフォットっす。待ってるっすよ。ラフォット。うちに幸運を運んで来るっすよー。


 ラフォットを捉える時に気をつけることは、ララットっすね。後ろ姿は、瓜二つっすからね。間違えて捕まえたら襲われるっすからね。


 ラフォットだけを確実に捕まえる方法は、ラフォットが餌場に着くまでの移動中に捕まえることっす。警戒心が強いっすから、他の魔物が居ない場所を態々通るっすからね。


 先ずは、木の上に登るっすよ。ゴソゴソ。あったっす。これは、うちの秘中の秘の魔道具っす。これでラフォット以外の魔物が通れない道を作るっす。ラフォットは、安全な道を通るっすからここに必ず来るっすよ。


 ・・・でも、ラフォットを捕まえるためだけに魔道具を作ってしまうなんて、これを作った人は、変人っすね。確か何処かの国の大賢者が作ったと言っていたっすが、流石に嘘っすよね。


 ドゴーン!!どうでもいい事を考えてたら、リリスがドラゴンの姿で暴れてるっすよ。何してるんすかねー?暴れるなら向こうでやって欲しいっす。ラフォットが逃げたらどうするっすか!!


 ゆっくり何かが近づいてくる音がするっすよ。この場所を通れるのは、ラフォットだけっすから間違えないっすね。


 まだっすよ。まだっすよ。・・・今だ!!捕まえたっすよ。ムフフ。これでうちの勝ちっすね。リリスどんな顔するっすかね?


 あれ?急に意識が遠くなったっす。やばいっすね。ラフォットだけは、離さないっすよ。うちの幸運っすからね!!





 やっばり気絶しておったのじゃ。しかし、気絶しながらも獲物から手を離さないとは、中々見上げた根性じゃ。仕方ない。妾が運んでやるかのう。


 のう。そろそろ起こしてもええじゃろ?妾、チーズとか言う物が食べたいのじゃ。勝手に食べたら怒るじゃろうか?ええい、何を気弱になっておるのじゃ!!妾は、ドラゴンじゃ!!自由気ままに振る舞ってこそドラゴンじゃ!!


 ・・・まあ、一応起こしてみるのじゃ。気まぐれじゃ!!深い意味はないのじゃ。


 ・・・妾は、誰に言い訳しておるのかのう?そんな事より、チーズじゃ!!ミミーそろそろ起きるのじゃ!!


 ツンツン。ツンツン。


 「うーん。後五十年」


 「寝過ぎじゃ!!」


 「どうしたっすか?」


 目をコシコシと擦りながら欠伸を噛み堪えているのじゃ。此奴、妾を待たせていると自覚しておるのか?


 「早くチーズを寄越すのじゃ!!」


 「ああ。そうだったっすね。それじゃあ食べるっすよ」


 ミミーは、カバンからチーズを取り出すと半分に分けて、片方を妾に渡して来たのじゃ。ふむ。それでは、食べるかのう。


 「あー「待つっす」ん?」


 「どうかしたかのう?」


 「食べる前は、「いただきます」と言うんっすよ。うちのお父さんがいつも言っていたっす」


 「ふむ。ならばそうするのじゃ」


 「「いただきます!!」」


 「あー。思い出したっす」


 本当ミミーは、騒がしい奴じゃのう

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竜王リリスの異種族交流(食べ歩き)譚 @phantomlord

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