キュートアグレッション
わたぬい
別に可愛がってるだけだけど……?
きゅ、と小さく玩具が鳴いた。
ソファに押し付けられ、覆いかぶさられて、逃げ場を無くされて、僕に首を絞められている。
片手で生死を握られて、ぼろぼろと涙を流しながら、苦しそうに呼吸しようとするせいで、小動物が媚びを売るようなおかしな音が部屋に響く。
ひくひくと必死に動く喉と、豊かに育ってきた胸に乗せられた、首輪代わりのネックレス。
突然ソファに押し付けられたせいで、散らばったふわふわのロングヘア。
極めつけは、困惑した顔で、それでも僕に許しを乞う乳白色の瞳。涙に濡らされて、いつも以上に輝いているのが殺されかけている今の状況と対比するようで心底おかしかった。
あぁ、僕の玩具は今日もこんなにかわいい。
「は、ふ……きゅぅっ……」
「首絞める度に涙出てくるのかわいー……そういう玩具あったよね?お腹押すだけで水吐き出すやつ。」
今度、食事のあとに吐くまでお腹押してみようか?なんて、囁くだけで怖がったように小さく悲鳴があがる。心外だなぁ、そんな事しないよ多分。あんまりにも怖がってるからしたくなってきたな。覚えておこう。というか、悲鳴あげていいなんて言ったかなぁ
「ちょっと気道強めに絞めるけど、死なないでね?」
「っ、ぅー……あ、ぐっ……」
あー、悪循環だなこれ、僕が力強める度に悲鳴でちゃうや。いや嗚咽かなこれ?まぁ緩急つけて絞めて緩めてを繰り返すだけでいい反応してくれるし、許してあげよ。
限界が近そうになったら手を緩めて、息を吸おうとした瞬間に絞める。これだけで目の焦点は合わなくなって、元から抵抗しないように躾けた身体は、縋るように甘えてくる。最高に可愛くて馬鹿な子だ。僕に目をつけられて本当に可哀想。そこが可愛いんだけど。
「ん、どしたのー?腕上げるだけで苦しいでしょ?」
やんわりと、震えながら上がってくる腕を諌めて、ついに出てきた抵抗反応を止める。躾が足りなかったかな。もうちょっとキツめにしておくべきだった、あの時だいぶ泣いてたから甘やかしちゃったのが悪かったね。ごめん、僕の落ち度だ。ちゃんと躾直してあげるから、
「て、つ……な、で……」
「……あ、そっち?いいよ〜」
絞めていた手を緩めた瞬間に、息を吸うより優先して出された要望に微笑む。そっか、呼吸なんかより手を繋ぎたいよね、そうだよね。ほんとに可愛い。
「わ、手冷たい。あっためたげる」
「ん、ぅっ……あり、がーと……」
「ちゃんとお礼言えて偉いね」
ご褒美に、緩めに繋いでいた手を恋人繋ぎに変えて、指先で優しく手の甲を撫でる。体温が伝わって安心したのか、目の焦点が僕の方をちゃんと向いてくる。
うん、偉い。苦しくされてるのに甘やかされて、褒められて。訳が分からない中で縋ってくれればいい。なんて、そんなことは露知らずに、僕が要望に応えれたのが嬉しいのかとろんと甘い顔になってる。可愛い、んだけどもっと苦しんでる顔が見たいなぁ。怖がって欲しいわけじゃないけど、予想通りのことをする僕なんてそっちからしたら面白くないよね。
「っ、ぁ、はふっ……ふ、ぅー……」
最初は軽めに、額や頬へキスを落としていく。いつも通りの、甘やかすときだけのキス。余韻も残さずに短くたくさんキスをするだけで、首を絞められてるのにふにゃりと笑ってくれる。
「ほんと、かわいい」
「えへ…………んぅ!?ぅ、っ……ぁ……」
油断しきったところに、唇へキスをする。ついでに、バードキスの時は緩めてたのを気道を強く押すように絞めるのへ戻して、呼吸を完全に封じ込む。鼻はまぁいいや。この子、キスしてる時に鼻で呼吸するの一向に覚えないし。今覚えてくれるならそれはそれで楽しいから。
小さな唇がはくはくと動くのを、上から僕の唇を被せて止めて、口が開いている間に舌を入れる。突然のことに怖くなったのか舌を引っ込めてしまうのも、視線をほんの少し鋭くするだけで自分から僕の舌へ合わせるように伸ばしてくる。この間した躾は相当効いてるみたいで嬉しい。泣き叫んでるところから必死に縋って許しを乞う姿は最高に可愛かった。その後頭踏んでたら足舐めてくれたのも良かったな。相当堪えたのか元々従順だったのに拍車がかかったし。
「っ、ぅ、……」
「ん、はは、もっと?いいよ」
ぼろ、とまた涙が零れて許しを乞う目を無視して、じゅっと音が出るくらい強く舌を吸う。目の焦点がまたふらついて、瞼が落ちていくのが見える。そろそろ限界っぽいな。
「ちゅ、んふ、かわいー……ゆっくり寝てね。可愛いお顔が見たくなったらまた起こすから。」
最後に、殺す勢いで一瞬だけ首を絞めれば終わり。こてん、とそれでも僕と手を繋いでいる方へ頭を向けて、苦しそうに気絶する。
なんて健気。さすがの僕も気絶した後までは躾れないのに。可愛すぎるな。
よしよしと優しく頭を撫でて、呼吸がしやすいように体勢を直すために抱き上げる。
成人してる僕とは違う、小さくて可愛い子供の体。女の子はかかっても中学で成長が止まるって聞いたけど、5年生くらいの時と対して変わらない気がする。3年前の記憶なんてあやふやだけど、個人差の範囲内でしょ。ご飯は食べさせてるし、睡眠も取らせてるし。運動も学校でしてるでしょ。夜に付き合わせてるからそれも含めたら運動してる方だと思う。毎晩してるわけじゃないから無理もさせてない。うん、おっけーおっけー。
ふにふにな頬を優しく、呼吸に影響しない程度に堪能しながら、まだ泣きながら眠っている顔を見つめる。
「やっぱりまつげ長いなぁ……唇もぷるぷるだし、手入れしてあげてるとはいえ本当に素材がいい。はー、拾えてよかったなぁ」
拾えてというか、自分から来たというか、まぁ仕向けたのは僕だから拾えてでいいのかな、なんて。1人で意味もなく考えながら、ちゃんと初めましてをした時を思い出す。まだなーんにも教えてなくて、それでも僕の機嫌を伺ってたな。……そう考えると今とそんなに変わってないか。
僕の可愛い玩具。最初からそれはなんにも変わらないけど、3年間も大事に、壊れないように、死なないように維持してるだけで僕って偉いな。粉々になった玩具なんてたくさんあるし。
適度に泣いて、騒いで、甘えて、言う事をきいて、買い与えられて、僕の全部を享受して。そんな理想の女の子。壊さないように、これからもゆっくり痛めつけて可愛がろう。
「だから、簡単に死んじゃダメだよ」
願いでも祈りでもなく、いつもの命令を口に出して。満足するまで、可愛い泣き顔を眺め続けた。
------
お兄さん(29)
→女の子がふわふわとした笑顔で今日学校であったことを報告してくれたから、うっかり可愛いな〜、は〜、この笑顔が歪むとこみたいな〜の気持ちでやってしまった。
従順にしてれば優しい。これでも優しい方。
本当に酷い時は容赦なく傷を付けるし、これで当分学校行けないね?その間は躾の期間にしようね?(にっこり)となるので本当に最悪。これで恋愛感情ちゃんとあるのバグだと思う。
女の子のご両親がお金に困ってたから借金のカタに貰った。
返してあげる気がないからご両親はお兄さんに殺されてます。最悪
---
女の子(14)
→にこにこ学校であったことを報告したら急に首絞められてやらかしたかと実はものすごく焦っていた女の子。
ただ好きが溢れてる時のやつだ、と分かっていたので抵抗しなかった。可愛がってもらってる自覚はあるので今更抵抗することは少ない。3年もこんな生活してたらそらそうなる。
両親が死んでるのは何となく察してる。良くしてもらってたけど、借金のカタにするってそういうことじゃん?この人にお金借りてる時点でアウトだよ、、と思っているので気にしていない。気にして??
お兄さんに恋愛感情あるのかは不明
キュートアグレッション わたぬい @watanui
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。キュートアグレッションの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます