概要
白く塗り潰される
ーーー中学二年の「僕」は、いまだにあの記憶に囚われている。
それは、職場体験という名の平穏な日常に、ひっそりと埋まっていた落とし穴だった。
冷蔵倉庫での作業中、ただトイレに行っただけ――本当に、それだけのはずだった。
だが、無機質な廊下に立ち尽くした僕は、自分がどこに帰ればいいのか分からなくなっていた。
無数の扉。曖昧な識別番号。思い出せない。
焦りと恐怖、誰にも見つけてもらえないという予感。
そして何より、叱られるのが怖かった。怒られるのが嫌だった。
ただそれだけの幼さが、僕の判断を奪っていった。
辺りを見回し、ありもしない手がかりを求めてさまよう廊下の先。
かすかに開いた扉に、僕は藁にもすがる思いで駆け寄った。
そこに本当に先生やクラスメイトがいるのか、確かめもしないまま。
理性も
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