王都クレムラ、才能と欲望が交差する場所

王都クレムラ――それは、“完成された世界”だった。




 石造りの高層城壁に囲まれたこの街は、帝国最大の行政都市にして、貴族と騎士と富裕商人のために存在する街。


 何百年も前から、上に立つ者たちが全てを決め、下の者は従うだけ。


 そんな歪な構造が、まるで“正しさ”であるかのように機能していた。




 そして今、俺たちのような“下から這い上がってきた異物”が、そこに足を踏み入れた。







 「これが……王都……」




 リーナが呟いた声には、畏れと緊張が入り混じっていた。


 無理もない。この街では、“生まれ”だけで人間の価値が決まる。




 「気にするな。あいつらは数字しか見てない。だから、俺たちは数字で黙らせりゃいい」




 「……わかった」




 セラは無言。ゼノは街並みに目を輝かせていた。




 「美しい。実に無駄が多くて、素晴らしい腐敗だ……ああ、この都市にこそ神は裁きを与えるべきだな!」




 騒ぎを起こす前に、ゼノの頭を軽くはたいて黙らせる。







 ギルド本部での面談は、意外なほどスムーズだった。




 事前に送っておいた実績報告が効いていたのだろう。


 俺たちの申請はすぐに通り、王都内での自由行動許可と、都市滞在者用の証明札を渡された。




 「スカウト……聞いてるぜ。“見るだけで人を見抜く”とかいう、まるで神様のまねごとの異能ってな」




 受付の男が笑った。




 「まあ、ここじゃそういうのは歓迎されねぇ。“選ぶのは生まれ”ってのが、ここのルールだからよ」




 「なら俺が、そのルールを壊してやるさ」




 そう言ったときの男の顔が、ほんの少し引きつったのを、俺は見逃さなかった。







 宿に戻った夕方、予想より早く動きがあった。




 ギルドから伝令が届き、1通の書状を渡された。




 差出人:リヴァル神聖教国 高神官グリオス。


 封蝋は本物。内容は、こうだった。




「貴殿の“識眼”の能力に、我らは深い関心を抱いております。


貴殿を正式に招待し、我らが選別の儀式に立ち会っていただきたく存じます」




 「……来たな」




 「これって……スカウトされてるの、カイルじゃない?」




 リーナが呆れたように言う。




 「そうだな。でもこれは単なる招待じゃない。“神の下した評価”に、俺のスキルがどう作用するかを試す場でもある」




 「それって、下手すれば怒らせるんじゃ……」




 「怒られても構わない。むしろそのくらいじゃないと、眠ってる奴らは目覚めない」







 夜。俺は1人でギルドに出向き、個人的な調査依頼を出した。




 依頼内容:


 > 「元・聖騎士見習いの少女。かつて“神託の光”を受けながらも、不適格として破門された者の記録」




 俺には心当たりがあった。




 3年前。とある公開儀式で偶然見た少女――


 彼女の背に、誰にも見えない“封じられた因子”が浮かんでいた。




 スキル因子:光属性/加護保持率:A


 覚醒状態:封印/覚醒因子:抑圧状態




 あのとき、俺の目にははっきりと“神の見落とし”が見えた。







 「リヴァル教国には、まだ“原石”が眠っている。あいつを拾う。たとえ神が不要と断じてもな」




 世界は、才能を正しく評価できていない。


 それは、勇者パーティーでの追放が証明している。




 俺がやるべきことは変わらない。




 拾い、見抜き、育てる――


 そして、選ばれる側から“選ぶ側”へと至る。




 次の舞台は、リヴァル神聖教国。




 神の眼を持つ者たちの中に、スカウトの異端が踏み込む。

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スカウト職で追放された俺、拾った才能が覚醒しまくって今さら戻ってこいと言われても遅い〜“見る目”だけで最強チームを作った男の話〜 @haruyanagi

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