第3話 救出作戦
隊長である大和の命令により、大和達と別れた凛華、蘭、恭介の三人は作戦を遂行する為、動き始めようとしていた。
「此処が生き残っている人達が奴隷として捕えられている建物ね……」
蘭は目と鼻の先にある横長の多分、三階建であろう大きな白い建物を見つめながら静かに呟いた。
凛華と恭介も蘭が見つめている白い建物に目を向けて、蘭と同様に険しい顔つきになる。
「どうしますか? 蘭先輩」
「作戦通りいきましょう」
「わかりました」
「じゃあ、行きますか」
恭介先輩の言葉に凛華と蘭は強く頷き返してから目て鼻の先にある建物の中へ侵入する為に動き始めた。
✳︎✳︎✳︎
生き残っている者達が捕えられている建物に侵入した凛華、恭介、蘭の三人。
しかし、建物に侵入した直後、侵入者が入ったことを知らせる警報音が建物内に鳴り出し始めた。
建物内に大きく鳴り響く警報音に凛華達は焦りを感じなからも目的の場所へと向かう為、走り始める。
「はぁ、はぁ、まさか侵入してすぐに警報音が鳴るとはね。化け物が作った建物だと思って少し舐めていたけれど。化け物も案外賢いのね」
「化け物のくせに賢いなんて笑えますね〜」
天野先輩と恭介先輩の言葉に私は走りながら頷き返す。
「そうですね。あ、あれですかね? 大部屋って……」
凛華が指差した方には隊長である大和が言っていた生き残った人々が捕えられているであろうガラス張りの大部屋があった。
大部屋の前へと辿り着いた凛華達は大部屋の中にいる者達を救出する為に、部屋のドアを天野蘭が持つ
部屋に入ると大人から子供、老人まで。沢山の人々がいた。
「時間はない、急ぐぞ」
恭介の言葉に蘭と凛華は頷く。
恭介は捕えられていた人達へ簡潔に話し始める。
「私達は化け物を殲滅し、生き残った者達を救う為の隊の者です。貴方達を救出しに参りました」
恭介の言葉に捕えられていた人々からの警戒心消え、口々に人々は話し出す。
「この大人数を全員、救出は不可能だ。私達、大人よりも子供を救出してほしい」
「俺も、この老人と同じ意見だ。子供を優先的に救出してくれ……」
捕えられていた大人達から子供を優先的に救出してほしい。と言われた凛華達は大人達の意見を受け入れ、子供を集めて大部屋の外へと連れ出す。
まだ幼い子供以外の12〜15歳くらいの子供達は自分達が置かれている状況を理解しているのか、大人しく凛華達に従う姿勢を見せていた。
「では、子供達をよろしくお願いします」
「絶対に死ぬんじゃないぞ!」
「息子と娘を頼みました……!」
大人達は大部屋の外に出た子供達を見つめて最後の言葉を投げかける。
凛華達はそんな大人達に会釈し、子供達を引き連れて来た道を引き返して入り口目指して走り出そうとしたが、子供達の内の一人に引き止められ、入り口は一つじゃないことを教えられた。
「別の出口があるだと?」
「うん、着いてきて! 案内するよ」
子供達の内の一人である茶髪の少年にそう言われた凛華達は走り出す子供達の後を追って別の出口のへと向かい始めた。
少年に別の出口まで案内され、化け物に出くわすことなく出口まで辿り着いた凛華達であったが、目の前にある出口のドアを開けるには暗証番号が必要であることに気付く。
「暗証番号がないと開けられない……」
「それなら大丈夫だよ! 俺、暗証番号知ってるし」
出口まで案内してくれた茶髪の少年は凛華達にそう言ってから、ドアの横の壁にある電子キーに暗証番号を素早く打ち込む。
「ほら、開いたー!」
「でかしたわね、少年!」
蘭がそう少年を褒めたのとほぼ同時に化け物が凛華達の背後からやってくる。
「皆んな、急げ、外に出ろ!」
恭介の大きな声で凛華達と子供達は開いたドアから外へと出る。
建物の外へ最後に出た恭介はドアを素早く閉めて子供達と同じ黎明隊である凛華と蘭に向かって、走るぞ!と告げた。
✳︎✳︎✳︎
一方、正宗も大和は化け物との戦いに苦戦していた。
「くっそ、手強い奴め! 正宗、お前、化け物を引きつけられるか?」
「できるよ〜 任せて」
「じゃあ、頼んだ。俺がこの化け物を滅多刺しにしてやる」
大和は正宗に目で合図を出せば、正宗は素早い動きで黒い影をした化け
正宗に足を切り付けられた化け物は正宗を見て、ニタリと笑い正宗目掛けて襲いかかる。
そんな化け物の背後に回り、化け物の背後にある建物の上にいた大和は建物の屋根から飛び降り、化け物の後ろ首目掛けて剣を振りかざすが。
「オマエラノ……コウドウ……オミトオシ……」
化け物は振り返り大和を見てニタリと笑ってから鋭い爪の生えた手を大和に振りかざす。
大和は間一髪で自分を守る為、持っていた剣で化け物の爪を受け止めて払いのけてから、地上へと着地する。
しかし、着地した大和に化け物は鋭い尖った爪の生えた手を再度振り下ろしてきて。
「大和……!」
正宗の慌てた子が大和の耳に届く。
避けられない。そう思った大和は死を覚悟したその時、その場に耳をつんざくような"キーン"という音が鳴り響く。
「なんだこの音は……!?」
その音が鳴り響くのと同時に大和に鋭い尖った爪の生えた手を振り下ろそうとしていた化け物は黒い煙のように消えていく。
謎の音によって、命拾いした大和は正宗の元に駆け寄る。
「大丈夫か……? 大和」
「ああ、大丈夫だ」
「それならよかった」
正宗は心配からかいつもの口調ではなくなっていた。大和は自分の無事に安堵する正宗を見て軽く肩をぽんぽんと叩く。
「合流場所に行くぞ」
「了解〜」
大和と正宗の二人は事前に決めていた何かあった時に合流する場所へと向かう為、歩き始めたのであった。
空夜の下の誓い 藍凪みいろ @Ainagi__Miiro
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