論文代行-The Thesisdyder(テーシスダイダー)
加賀倉 創作【FÅ¢(¡<i)TΛ§】
才能は使い方次第
いつもの喫茶店で、
いつもの酸化
いつもの
いつもの
灰のまばらに散る
今日も、四本書き上げた。
無限量の
速読と、
速筆。
それらが、俺の
俺はそれらを駆使して、生計を立てている。
生計を立てる、とは、何を
決して大きな声では言えないが……
俺は、ここ
〈学園都市〉の主たる構成要素は、いわゆる
たとえ卒論(もはや今となっては大学の卒業条件から卒論じたいが
今、時計は午後九時前を指している。
閉店まで約三十分、空席も増えてきた。
さて、キリがいいことだし、今日は早めに引き上げ——
「あのぉ……」
——られないようだ。
新規顧客。
女子大生。
身なりからしておそらくL女子大生。
「なんだ?」
ハキハキと。
ビジネスライクの返事。
「スキンヘッドの
という女子大生の声を
「シーッ!」と、俺は鼻先に人差し指を立てて制止すると、「要件を、手短に」と、尋ねる。
「卒論なんですぅ。ゼミの教授からは二万字以上って言われてますぅ」
「卒論か。テーマは?」
「まだぁ、ぼんやりしてるんですけどぉ、猶太人のぉ、映画産業発展、への寄与! みたいな感じで考えてたんですぅ」
「よし、『猶太人の映画産業発展への寄与』がテーマの卒論、二万字以上だな? 期日は?」
「来月のぉ、九日の二十三時五十九分が提出期限でぇ。その前日までにお願いできるとぉ、嬉しいんですけどぉ」
「なら十二月八日だな。午後八時引き渡しで、どうだ?」
「あ、全然大丈夫ですぅ。ちなみにお金ってどれくらいな感じですかぁ?」
俺は、
指を四本——
「いち、にぃ、さん、よぉん……四十万円ですかぁ?」と、驚愕の顔。
「四万だ」と、涼しい顔(スキンヘッドであるし)。
「そんなのでいいんですかぁ!? やったぁ! お願いしますぅ!」と、騒ぐので。
「シーッ!」と、再度静めて、「契約成立だ」と告げる。
「えっとぉ、何か注意点とかってありますかぁ? たとえばぁ、何か変更したい時とか——」
という女子大生の不安混じりの声に俺は食い気味で、
「ルール
「は、はい……。じゃあ、お願いしま——」
「ルール
「は、はぁ……。じゃあ、おねg——」
「ルール
「は、はい!」
「念を押すが……ルールは守る。絶対にだ。いいな?」
「はいっ!」
「テーマ、『猶太人の映画産業発展への寄与』。字数制限、二万字以上。納品日時、
「いえっ、さー!」
「じゃあ、そこを
俺は
〆🧑🦲✨
いつもの喫茶店、
いつもの珈琲、
今日も早速一本、書き上がった。
不備がないか、例のブツの詳細情報——これはL女子大生のぶん——に、
——————————————————
【顧客番号】
JS1967726
【依頼内容】
テーマ:『猶太人の映画産業発展への寄与』
字数制限:二万字以上
納品日時:日扇日光年十二月八日午後八時
引渡場所:
【完成品表題】
ハリウッド映画産業の草創期における猶太人の貢献
https://kakuyomu.jp/works/16818093090697784907
【目次】
序章 はじめに
第1章 猶太人メジャーの興隆と変遷
1-1 猶太人メジャー創業者
1-2 トーキーの台頭と金融資本の流入
第2章 猶太系大移民と映画との遭遇
2-1 アシュケナジムの大移動
2-2 アメリカでの映画の流行と猶太人
2-2-1 映画のニューヨークでの流行
2-2-2 映画の中心が東から西へ移る経緯
第3章 猶太人はなぜ映画産業で活躍できたのか
3-1 環境的要因
3-2 特性的要因
3-3 戦略的要因
3-3-1 劇場の近代化
3-3-2 スター・システムの起用
3-3-3 映画芸術科学アカデミーの設立
第4章 数字で見る映画と猶太人
終章 おわりに
——————————————————
よし、これでいいだろう。
まぁ、今度のは、今までのとは
実を言うと、この冬に依頼を受けた卒論代行は、全て……
——てんこ盛りに、
「してある」なんて言うからには、もちろん
ではなぜ、そんなことをするのか。
俺がこれまで何百何千とやってきた
——Fラン大学の
この国には、大学が、異常に、非情に、非常に、多い。
学生の優秀性を伴うならば、その多さも、認められるだろう。
だがしかし、ほとんどの場合、そんなことはない。
——
なんて具合に。
世の就活事情はというと、まだまだ大学新卒一括採用が主流だ。
学生たちは、大事な講義やゼミ——何百万と学費を
これは社会全体の風潮、同調圧力、よく言えば
それも、一度や二度でなく、常習的に、そうだ。
というのも、学生たちは、大学という場所を、教育機関、
誰に吹き込まれた、洗脳されたのかは知らないが……
違う、違うぞ。
大学というのは、その本質的性質を問うならば、『研究機関』である。
勉強や教育は、研究に必要な大前提、スタートラインに立つ資格、素材、原料、発端、ブロック遊びの多種多様の
ほんの
大学在学中に
だが、現実は、激しく
取得単位十分、かつ卒業論文が通れば、晴れて卒業。
学生たちは、
特に、Fランと
そこで、だ。
——撲滅だ。撲滅、撲滅、撲滅だ!
俺は
例年なら、
だが、今回は違う。
六六六の論が全て、
依頼主の学生
なぜなら、彼らはどうせ、
ちょっぴり同情はするが……
俺の手で
〈学園都市〉の四年生は
壊滅する。
〆🧑🦲✨
そろそろ、学園都市じゅうの大学で、卒論
俺は、
L女子大の公式HP、
『重要なお知らせ』
という青字をクリック、
———————————————
【重要掲示】
下記44の学生は、卒業論文内に
明確な剽窃・盗作が発覚したため、
強制退学処分とします。
≈
———————————————
撲滅完了。
次はどの地域を狙おうか。
〈了〉
論文代行-The Thesisdyder(テーシスダイダー) 加賀倉 創作【FÅ¢(¡<i)TΛ§】 @sousakukagakura
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