あなたの心にも棘が残る―― 閉ざされた薔薇園で育まれた狂気で純粋な愛
- ★★★ Excellent!!!
イオリ様の『聖クラウディアンの肖像』をここまで拝読し、ただの耽美な悲劇では語り尽くせない、魂の深淵に触れる物語だと感じています。美しい薔薇園に囲まれた屋敷の中で、聖女として育てられるクラウディアン。彼女を囲い込む父・ドラロッシュの愛は、いつしか信仰と狂気の境界を彷徨い、観る者の心を不安と共感で揺らします。
父の偏愛と贖罪、師への慕情と裏切り、そして娘の魂に宿る異邦の記憶。愛と赦し、美と呪い――相反するものたちが、この世界ではひとつの人間の心の中で繰り返し交差し、静かに溶け合っていきます。クラウディアンが外の世界に惹かれるほど、ドラロッシュの内面もまた曝け出され、孤独な芸術家の絶望と救いが切実に伝わってきます。
“誰かのために生きる”とは何か、“赦し”とは何か――読むほどに問いかけが胸に迫り、現実の自分もまた、この箱庭の住人になったような錯覚さえ覚えました。静かな狂気に彩られたこの物語は、読む者の心を深く照らす光と影の二重奏です。
この機会に、美と狂気、赦しと愛の物語にぜひ触れてみてくださいね。