鮮やかに描かれる、画家と娘の日々。
- ★★★ Excellent!!!
前世にて、二十代の若さで世を去った「私」は、若き天才画家の娘に転生していた。
その画家の名はドラロッシュ、娘である「私」はクラウディアン。『アン』と呼ばれている。
ドラロッシュはとてつもない過保護で、外は危険だからと外出する機会を与えてくれないほど。
その反面、当の本人は、画家の仕事に乗じてモデルやパトロンの家に愛人を作っては捨てるという、生粋の遊び人気質。
そんなドラロッシュを最低だと冷めた目で眺めながら、「私」はこの狭くて美しい世界の中で、色々な思いを抱いていく……。
本作を拝読して、このヨーロッパ風の世界を存分に体感させてくれる描写の凄さには圧倒されました!
ドラロッシュとアンの住む屋敷、商いで賑わうオランジェ街、そして画家の傑作が生まれる場所・アトリエ(工房)の、画材の一つ一つに至るまで丁寧に描かれた世界は、一読すれば即その世界へと誘われることは間違いありません!
また、父親が天才的な画家ということもあり、有名な絵画をモチーフとした絵が登場、作者様が参考にしたとされる元の絵画を見つめながら読むと、世界観がさらに鮮やかに見えてきます。
そして、ドラロッシュは父親としてはあまりに若く、アンとの関係性に多くの謎を残しております。
この謎に導かれるようにして読み進めるのと、大人の危うい世界に足を踏み入れてしまったかのようなドキドキした気持ちを味わえました!
物語の行方はどうなっていくのか!?
まだまだ目が離せない傑作!
是非ともご一読下さい!