第5話
口調がさっきまでと違う。
やっぱりアイルデア公爵家の影響力は凄いわね。
そう思いながら、金額を聞き、その男性にその金額分の小切手を支払った。
その後、男性はすぐに居心地の悪そうに顔をして、走り去っていった。
ふぅ、随分疲れる買い物だったわ……
疲れを感じながら、振り返った。
「これであなたは自由の身よ。好きなところに行きなさい」
まぁ、まだ奴隷という身分が解消されたわけではないから、生きづらいんでしょうけど……
きっと、いつか解消されるはず。
そう願うしかない。
「俺はあなたのところに行きたいです」
「えっ……」
今まで言葉を発してなかったから、初めて言葉を発してくれたことも驚いたけど……まさか、私のところに行きたいと言うなんて。
でも、ここで捨てたら、中途半端に助けたことになるかもしれないわね。
「……分かったわ。ついていらっしゃい」
ひとまず、家に連れて帰りましょう。
ただ、お父様の許可が必要になるわけだけど……許してもらえるかしら?
そのことを考えて不安になっていた私は知らなかった。
まさか、この時後々関わることになる3人の男が見ていたなんて。
私は知る由もなかった。
*
「ご主人様は何故俺を助けてくれたんですか?」
公爵家へ向かう途中、突然そんなことを聞かれた。
理由ね……
「前の私を想起させたあの貴族の男をもう見たくなかったから」
嘘つく理由がないから、正直に答えた。
多分、そう。
だから、この子を助けたいと思って、助けたわけではない。
結局、性格はそう変わらないわね。
「申し訳ないけど、あなたを助けたいと思って助けたわけではないわ」
変えないといけないとは思っている。
でも、もうすでに性格は最悪。
どうすれば、変われるのかしら。
「それでも、俺は嬉しかったです。あそこで一生を終えるのは嫌ですから」
そう言ってもらえると、助けた意味がある。
自分のためにこの子を助けたけれど……
「そういえば、まだ名前を聞いてなかったわね。あなたの名前は?」
「イクスです」
「イクスね。さっきの貴族の男性には言ったけど、改めて自己紹介するわ。私はミルフィー・アイルデアよ」
自己紹介し終えると、ふと気になった。
それにしても……何なのかしら?
イクスの頭の上にある数字は……
何故か20という数字と隣にはパーセント。
そういえば、皇太子殿下の頭の上にも数字とその隣にパーセントが表示されていたような……
でも、お父様とか他の人のは見えないから、余計に分からないわ。
疲れていて、幻覚が見えているのかしら……?
時間が巻き戻って、心を入れ替えた悪役令嬢は何故か愛されるようになりました! 有栖華 @HANAARISU08
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