第5話


口調がさっきまでと違う。

やっぱりアイルデア公爵家の影響力は凄いわね。

そう思いながら、金額を聞き、その男性にその金額分の小切手を支払った。

その後、男性はすぐに居心地の悪そうに顔をして、走り去っていった。


ふぅ、随分疲れる買い物だったわ……

疲れを感じながら、振り返った。


「これであなたは自由の身よ。好きなところに行きなさい」


まぁ、まだ奴隷という身分が解消されたわけではないから、生きづらいんでしょうけど……

きっと、いつか解消されるはず。

そう願うしかない。


「俺はあなたのところに行きたいです」


「えっ……」


今まで言葉を発してなかったから、初めて言葉を発してくれたことも驚いたけど……まさか、私のところに行きたいと言うなんて。

でも、ここで捨てたら、中途半端に助けたことになるかもしれないわね。


「……分かったわ。ついていらっしゃい」


ひとまず、家に連れて帰りましょう。

ただ、お父様の許可が必要になるわけだけど……許してもらえるかしら?


そのことを考えて不安になっていた私は知らなかった。

まさか、この時後々関わることになる3人の男が見ていたなんて。

私は知る由もなかった。




「ご主人様は何故俺を助けてくれたんですか?」 


公爵家へ向かう途中、突然そんなことを聞かれた。

理由ね……


「前の私を想起させたあの貴族の男をもう見たくなかったから」


嘘つく理由がないから、正直に答えた。

多分、そう。

だから、この子を助けたいと思って、助けたわけではない。

結局、性格はそう変わらないわね。


「申し訳ないけど、あなたを助けたいと思って助けたわけではないわ」


変えないといけないとは思っている。

でも、もうすでに性格は最悪。

どうすれば、変われるのかしら。


「それでも、俺は嬉しかったです。あそこで一生を終えるのは嫌ですから」


そう言ってもらえると、助けた意味がある。

自分のためにこの子を助けたけれど……


「そういえば、まだ名前を聞いてなかったわね。あなたの名前は?」


「イクスです」


「イクスね。さっきの貴族の男性には言ったけど、改めて自己紹介するわ。私はミルフィー・アイルデアよ」


自己紹介し終えると、ふと気になった。

それにしても……何なのかしら?

イクスの頭の上にある数字は……

何故か20という数字と隣にはパーセント。

そういえば、皇太子殿下の頭の上にも数字とその隣にパーセントが表示されていたような……


でも、お父様とか他の人のは見えないから、余計に分からないわ。

疲れていて、幻覚が見えているのかしら……?



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時間が巻き戻って、心を入れ替えた悪役令嬢は何故か愛されるようになりました! 有栖華 @HANAARISU08

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