ケツに恋の矢が刺さって抜けないんだが!?

ミヤツキ

恋の矢は簡単には抜けない

 尻に矢が刺さったらしい。

 いや、なんでこんな冷静でいられるかというと異物感もなければ痛みもないからだ。

 僕は至って普通なのだが、尻に矢が刺さったままの状態が笑ってはいけないけど可笑しくてしょうがないらしく、周りの弓道仲間の野郎は笑い転げている。


「笑うな!!」

「いやっ、だってっ、け、けつに矢が、あーはっはっ!」


 腹を抱えて笑っている。

 このやろう!この弓矢、俺の尻から抜いてお前の尻に入れてやろうか!と思い僕は尻に刺さった矢を抜こうとした。


「えっ?」


 

 な、なんでだ。思いっきり力を入れてるはずなのに、その弓矢はびくともしない。

 

「どうした?」

 

 笑い疲れたように涙目にしてようやく落ち着いた野郎の友人が声をかけた。

 

「ぬ、抜けない」

「えええ!? やばくね? 痛くねえの?」

「全然、何も感じてない」

「はあ?何それ」


 力瘤のある友人がしゃがんで、僕の尻に刺さった弓矢を抜こうとする。

 

「ふんぬぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 バキッ、と割れて短い部分だけ残ったらどうしようと思ったがそんな友人でも抜けないらしい。

 

「え、こわっ、なんで?」

「わっかんねえ……」

「説明しよう!!」


 急にどこからか、ひょうきんな声が聞こえて僕らは辺りを見渡す。


「なんだ?今の声」

「さあ?知らない声だよな」

「ここじゃ!お前の尻に刺さっておる弓じゃよ!」

「やばい、俺ショックすぎて幻聴聞こえてるのかも」

「俺笑すぎて、お前と同じ声が聞こえてるわ」

「わからんものどもめ!これでどうじゃ!」


 いきなり尻に痛みが走った。

 なんというか、異物感が結構すごかった。

 

「いてえ!!」

「ふんっ、これでわかったであろう?わしは弓矢の主じゃ」

「わからせるにももっと方法あっただろ!!」


 僕は尻の方を睨んでいう。


「お主……お尻洗っておるか? なんだか臭いな」

「え」

「洗ってるわ!! 失敬な!!」


 僕が叫びに似た声をあげると、そこに弓道を教えてくれる先生が飛んできた。

 

「ああ……! 弓矢が変な方向に飛んでいったと思ったら……!」


 ショックな顔をして先生は顔を覆う。

 いや、先生、俺だよそのリアクションしたいの。


「その弓矢は……私も刺さったことがあるんです」

「えっ」

「その弓矢、実は普通の弓矢とは違うんです」


 そうでしょうねえ。普通の弓矢だったら今頃恐ろしいことになっているだろうよ。と僕はツッコミをする。


「どんな弓矢なんです?」


 友人が代わりに聞いてくれた。


「恋の弓矢じゃ!!」


 弓矢の主が高らかにそう言った。

 恋ぃ?


「恋の弓矢がなんで尻に刺さるんですか? たまたまそこに尻があったからですか? なんかとんでもねえ方向から飛んできた気がするんですけど」

「それは弓矢を放った女が、お前のことが好きだからじゃ! 尻はフィット感がちょうどいいから選んだだけじゃ!」


 な、なんとはた迷惑な話だ……。

 ええと、どこから突っ込んでいけばいい?

 僕が困惑していると、弓道の先生が口を開く。

 

 「あなたに恋心を持っている人が、その恋心を昇華させないと弓矢は抜けないんです……」

「ええええええ……」

 誰だぁ、俺に恋心を持ってこんなものを拾って放ったやつは。

「その者の熱い恋心をお届けした次第じゃ!」

「はた迷惑な」

「一郎さん!!!」


 僕の名前を叫ぶ声。振り返ると、女性二人が走ってきたらしく肩で息をしながら苦しそうに肺を抑えていた。

 というのも、弓道場はかなり長い渡り廊下の先にあり、僕たちは体育館にいたため、走ってきたのだろう。

 狙って放ったわけじゃなく、余計なお世話の塊であるこの弓矢がその長い渡り廊下を通って僕の尻に宿ったということだ。


「ああ……!!その矢……!」


 僕と同じ40代で、かなり品のあるいい歳の重ね方をしている林道さんが顔を真っ青にした。

「ごめんなさい!!一郎さん!」

「どっかの笑ってた誰かさんとは大違いだな」

「誰のことだろうね?」

 深々と頭を下げる林道さんを見て、僕はジトーっと友人を見たが口笛を吹いてあさっての方向を向いている。


「普通の矢だと思ったんです……、それで、拾って放ったらギュウインッ! と音を立ててすごいスピードでどこかに行ってしまって……」

「その弓矢、僕のお尻に刺さってから閉まってあったはずなんですが……」


 弓道の先生が不思議そうに呟くと、弓矢の主は誇っていう。


「ふふふ、数年の時をかけて箱から逃げ出したのだ……、わしの執着を舐めないほうがいい」

「次からは燃やしましょう、先生」


 僕がいうと、先生は頷く。


「待て待て!! わしは、単純にお前らの恋心を伝えるために必要なものじゃ! 燃やすなど失敬な! 罰当たりだぞ!」

「あああ、怒るな怒るな、痛みが来るからよせって」


 ぷんぷんっ、と怒る矢の感覚が少しずつ宿ってきたので宥めることにした。


「どーしても抜きたいのなら、お主らで解決せえ!! そこの女! この男のことが好きなのであろう!」

「な、何をおっしゃいますか……! わ、私は…」


 顔を真っ赤にして慌てふためく林道さん。

 ああ、こんな状況なのに可愛いと思ってしまう僕がいる。林道さんを恋愛的に好きというわけじゃなかったけど、女性の特に林道さんみたいに清楚な人のこういう姿は堪らんだろ。


「林道さん、僕の尻に矢が刺さってる時点で誤魔化しは効かないようです」

「お、お、お恥ずかしい!!」


 林道さんは顔を両手で覆って、逃げ出してしまった。


「林道さん!!」

 林道さんの隣にいる名前の知らない見学者の女性と、僕は林道さんを追いかけた。


 尻に矢が刺さりながら僕と見学者さんは全力で追いかける。林道さんの逃げ足が思ったより早く、どこにいるかわからない。


「おトイレかもしれません、いたたまれないときは大体女性はおトイレに隠れるものですから」


 それはあなたの持論では……?と思いながらも可能性としては捨てきれなかったので、トイレをみてもらった。

 弓道場が隣接する総合体育館はこんなに広いのに、トイレは一つしかないからだ。


「男性トイレ、見ていただけますか?」


 男性トイレにはいねえだろ、さすがに、と思いながらもパニックになって男性と女性間違えてるかもと言われて、見てみた。

 個室にもどこにもいない。

 初めてトイレの鏡で、尻に矢が刺さってる自分の姿を見た。

 いや、滑稽すぎるだろ!!!

 一刻も早く、林道さんの恋心をなんとかしなければ……! 僕はそう思ってトイレから出た。


「体育館から出たという可能性はありますかね?」

「靴があるので、それはないでしょう」

「靴下のまま、飛び出したとか」


 可能性をあげればキリがない。

 体育館であーだのこーだの見学者さんと話していると、見学者さんが待って、と鼻先に人差し指をあてた。

 

「ど、どうしました?」


 見学者さんが体育館の倉庫に向かって歩き出す。

 壁に耳を当てた彼女。引き寄せられるように僕も壁に耳を当てた。

 すんっ、すんっ、と鼻を啜る声が聞こえた。


「彼女ですね」


 いや、泣くことはないだろ……。

 泣きたいのはこっちだよ、と思いながらも責任感が強い人なんだろうなと思う。

 なんてことをしてしまったのだろう、そんな気持ちが強いのかもしれない。


「あなたも災難ですね、お尻に矢が刺さるなんて……」

「ま、まぁ、災難かもしれませんけど……、ケツに矢が刺さっただけですし、林道さんがそこまで思い詰めることでもないんですよ」


 本当にそうだ。

 泣くことはない。わざとじゃないし、まあ……恋心の伝え方が間違ったというか。いや、間違えてもいねえのか。このお節介な矢が全部いけないんだろう。


 ぎぃぃぃぃぃ、と音を立てて古い扉が開く。

 びくっ、と体を震わせて林道さんは泣き腫らした目で僕たちを見た。

 

「林道さん」


 僕が声をかけるとごめんなさい……と林道さんは泣いて謝るばかり。僕は、林道さんの目線までしゃがんであえて笑ってみた。


「あまり泣かれてしまうと、僕の心も痛んでしまいます、尻に矢が刺さった程度ですよ?そんなに思い詰める必要なんてないじゃないですか」


 僕がいうと林道さんは目を見開いて、さらにボロボロと涙を流す。


「……困らせるのだけは……っ、一番させたくなかったんです」

「困ってないです」


 いや、まあ困っているけどね?

 ケツに矢が刺さって困っているけど、でもそれより。


「林道さんがそこまで自分を追い詰めて泣かれてしまうほうが、僕は困っちゃいます」

「一郎さん……」

「こんなに尻から矢が抜けないのは、あなたが僕を想ってくれる強さが現れてるからなのかもしれません、それを僕は否定したくない、林道さんから聞きたいです、僕への思いを」


 林道さんは僕の言葉を受け取って涙を懸命に拭って、深呼吸をしながら顔を真っ赤にして言った。


「好きです……、好きなんです、一郎さんが」

「はい」

「……何度も、何度も諦めようとしたけど無理だったんです、それくらい……大好きで」


 まいったなぁ。本当に矢が刺さってることなんて忘れそうなくらい、真っ直ぐな告白じゃないか。

 まいったなぁ。まい、まいったなぁ。

 促しといてあれだけど、全然林道さんになんで返すか考えてねえ!!!

 いや、林道さんのことは普通に好き。

 人間的に品があって、あと美人だし、あと仕草も上品だし……あと、えっと。

 やばい!僕、林道さんの内面なんも知らない!!

 どうする、どうする!?


 彼女が泣くのは、嫌だけどそれを恋心として認識していいのか?

 そんな軽はずみに決めていいのか?

 くそぅ!恋愛経験がこの歳でたった一回しかない僕を今更ながら恨む。しかも告白なんてされたことすらないのに!

  ここで、「いいですよ(イケボ)」と返事してしまっていいのか?

 そもそもイケボが出ねえ!

 僕が内心悶えていると、林道さんは涙をまたボロボロ溢す。


「……ごめんなさい、困らせて」

「ちがっ、違うんです! 真剣に考えているんですけど、僕、林道さんのこと何も知らないから……その、なあなあに答えたくなくて」

 僕がしどろもどろになってそういうと、林道さんはつぶやく。


「そういう一郎さんだから、好きなんです」

「え」

「不器用で、でも何もかもに一生懸命で……矢を放つときはまっすぐに的を見据える瞳が、この上なく美しい、だから好きなんです」


 ぶわあああ、と顔が真っ赤になる。

 そんなド直球に告白されたことなんてない。しかもこんなにきれいな女性から。

 どうしようどうしよう、どうする⁉


「はーい、甘酸っぱいとこお邪魔してごめんだけどそろそろ閉館の時間らしいよ」

「え⁉」


 助け船のようなそうでないような友人の声に驚いて、僕は振り返る。


「続きはお外で話しましょう」

「お外って、俺このまんま外に出るんですか?」

「わ、私が館長さんに土下座して時間延長を‼」


 またもや林道さんが暴走してしまいそうだったので、僕は「待って⁉」と止める。


「大丈夫ですよ、ここは人気もあまりないところだから」

「でも……」

「思いつきました!」


 見学者さんの頭に電球が光ったように、彼女はキラキラ目を輝かせて提案した。


「あのー……余計目につかない?」


 見学者さんの提案内容は、僕を真ん中に置いて友人・見学者さん・先生・林道さんがその周りを輪を作って囲み、僕を隠すということだった。

 たまーに道沿いを走る車から、怪訝そうな目で見られている。

 そりゃそう。なんだあいつら? ってなるよ。


「井戸端会議ってやつです!」

「うん、違いますね!」

「じゃあ、道草会議ですね!」


 めげずに言う見学者さんをしり目に、僕はケツに刺さった矢の主に聞く。


「あのー、いつになったら抜いてくれるんでしょうか?」

「お前がちゃんと答えて、この女が恋愛心にケリをつけることができるまでは抜かん、というか……本当にお主、尻洗っておるか?」

「ねえ、毎日洗ってるからショッキングなこと言うのやめて?」

「加齢臭じゃね?」

「やぁだぁ、お嫁にいけない!」

「お、お嫁に私がも、もらって差し上げます!」


 とんでも発言をしてしまったと気づいた林道さんは輪から抜けて、再び逃げようとするので僕が即座に立ち上がって手をつかむ。


「もうちょっとだけ、考えさせてください」


 僕が言うと、林道さんはすみません……と言って静かに輪の中に戻っていく。


「てか、この状態じゃ考えられないんだけど」

「じゃあ、お前だけあのでけえ石のところ座って考えてろよ」


 友人が大きくて平らな石の方を指さすので、僕は一人でそこに向かった。

 どすん、と音を立てて石の上に座ると矢の主が叫ぶ。


「いでえええ! 馬鹿者! 何をする!」

「あ、え? それ痛いの?」

「痛いに決まっておるだろうが! 馬鹿者めが!」


 そんなに罵倒されるか? と思うほど罵倒されてしまった。

 僕は仕方なく大木に立ちながら寄りかかって、林道さんを見ていた。


 思えば彼女と出会ったのは三か月前で、弓道の道場に見学に来ていたのが始まりだ。

 初心者ということもあって、先生につきっきりで習っていたが真面目な性格なためか、みるみるうちに上達していった。

 お酒は滅多に口にせず、聞くところによると弱いという。

 以前休憩の際に、たばこを吸っているところを見て意外に感じ聞いてみたところ、ストレスのはけ口に使ったら抜け出せなくなってしまって……と照れくさそうに言っていた。

 今回の異常事態(?)に対しても、泣くほど自分を責めたり、顔を真っ赤にしたり、ちょっとおとぼけな発言や突飛な行動をしてみたり……、それでいて、あんなにまっすぐに僕を見ていたことを伝えてくれる。

 この騒動があって、初めて林道さんのことをよく知ることが出来た気がする。


 そんなことを思っていると友人が、ざくっ、ざくっ、と地に広がる小石や葉を踏んでこちらへやってきた。


「答え出た?」

「いや……、素敵な人だなとは思う、可愛い人だなって」

「でも付き合うほどではない?」

「いや、付き合うっていうのが……」

「おっと、古傷が痛む感じかね?」


 図星をつかれて僕は口をつぐむ。

 というのも、過去に一回だけ経験した恋愛がちょっと恥ずかしい記憶というか。


「俺……が、好きだったのよ、前付き合っていた人」

「ほう」

「でも……好きだったのは、外見とかあと仕草とか、行動とか……? 悪い所が見えてなかったんだよ」

「ふむふむ」

「んで、その子を美化しすぎて……短所見たら冷めちゃったことがあって」

「はぁ~、なるほど、つまりお前は嫌いになるのが怖いんだね?」


 友人は分析して、ははぁ~ん、と言いたげな顔をする。


「誰でも怖くないですか?」

「まあ、そうだけど、そんなの付き合ってみないとわからんぞよ?」

「試しに付き合えと?」

「じゃあ、こうしよう」


 友人は、僕から去って行って林道さんのところへ戻る。

 すると、林道さんを急に抱きしめたのだ。林道さんは顔を真っ赤にして目を見開いて、えっ、えっと口にする。

 こらあああああ!ちょっと待ったあああ‼


 僕が尻に矢が刺さったまま駆け出すと、友人は林道さんに「ごめんな」と謝りしてやったという風に笑った。


「それがお前の本心だ」


 く、悔しい!

 それが一番初めの感想だった。

 こいつに分からせられるとか、一番悔しいんですけど!


「恋とは嘘がつけないものですねえ」


 うふふ、と見学者さんは笑っている。唯一、この状況が理解できていない林道さんに僕はまっすぐに言った。

 過去の恋愛で相手の嫌いなところを見てショックを受けたこと、そして嫌いとは思いたくないし嫌われたくもないと思ったこと。そのすべてを林道さんに打ち明けると、林道さんは顔を真っ赤にして「わかります!」と叫んだ。


「あれですよね! 相手をちょっと美しく見すぎてしまって、汚い所とか嫌なところを見たときにうげってなるやつですよね!」

「そ、そうなんです! そうは林道さんに思いたくなくて……」

「そういう時、私、解決方法知ってるんです!」


えっへん!というように林道さんは自信満々にこういった。


「話し合うんです! 知ろうとすることが大事なのです!」


ああ、どこまでもこの人は可愛い。いつの間にか骨抜きにされてしまっていることにその時気づいた。


「付き合うことが……俺は、怖くて……」

「怖いの一緒です! 一緒に話して、知っていきましょう!」

「こんな男らしくない俺でいいんですか?」

「一郎さんだから私は大好きなんですよ!」

「僕の尻、臭いかもしれないですよ?」

「良いシャンプーを知っているので、ご紹介します!」


結構最後のやつは、勇気出していったんだがドン引きもせず同じトーンで真剣に返してくれる林道さんを見て、あ、この人なら大丈夫かもと思えた。

すると、矢がひゅんっ、と抜けて僕らの間に宙を浮いて登場した。


「ようやく素直になったか、馬鹿どもめ、わしに感謝するんだな」


 どこまでも上から目線の矢だったが、こいつがいなければ林道さんのことを知ることができなかったので、まあ感謝してやるかと思った。


「よし! こいつの矢も抜けたし、飯でも食いに行くか!」


 友人が声をかける。


「おめでとう会しないとですね」

「え、そんなそんな……」

「どこ食いに行く? ぱーっとやりたいよな?」

「そうだなあ……、あれ、矢は?」


 矢のおかげでもあるが、尻に矢がささるのはやはりはた迷惑なので再び封印しようとした僕の目論見が見抜かれたのか、矢が消えた。


「探しましょう、次の犠牲者を出してはいけない」

「犠牲者って言わないでください、先生」

「まあ……私はあの矢のおかげで、今も妻と一緒にいられるんですが……」


 急な惚気に友人と林道さんは食いついてしまった。

 だめだこりゃ。僕は一人で矢を探すことにした。

 すると、体育館の裏の細いところに見学者さんが立っていた。見学者さんに矢のことを話そうとした時、彼女が何かしゃべっていると気づいた。


「本当にいいのか? 今なら、わしを飛ばすことだってできるぞ」

「………いいんです、私は邪魔をしたくないから」

 その口調が、少し涙交じりに聞こえた。

 見学者さんも、誰かを思っている人なのだろう。

 しかし俺の滑稽な姿を見たからか、好きな人をそんな姿にさせたくないと思ったのか、見学者さんは矢を箱の中にしまった。


「馬鹿者め……」


 小さく言葉を吐いて、大人しく矢は箱の中にしまわれて行く。


「あの、飯、行きませんか?」


 僕は何も見なかったふりをして、見学者さんに声をかけると彼女はにこっと笑った。


「また来ますので、その時でもいいですか?」

「もちろんです! また行きましょう!」


 僕は見学者さんを見送った後、林道さんと手をつながせてもらい飯屋に向かった。

 

 完

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ケツに恋の矢が刺さって抜けないんだが!? ミヤツキ @sakana1018

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