第20話「月明かりの新たな夜明け」

満月の光がルナリア王国を銀色に染め上げる夜。王城から北東に三日行程の地にある古王城跡は、長い沈黙を破って活気づいていた。『赤き月』の一団が、何世紀も待ち望んできた儀式の準備を整えていたのだ。


城の最上階、かつて王の間だった広間に、巨大な祭壇が設えられていた。二つの台座—一方は銀色に、もう一方は金色に輝いている—の間に、赤い宝石を埋め込んだ大きな石板が横たわっていた。赤い法衣をまとった十数名の『赤き月』の信徒たちが、低い声で詠唱を繰り返していた。


その中心に立っていたのは、老齢の女性だった。深い皺が刻まれた顔は、何世紀もの時を生きてきたかのような古さを滲ませていた。彼女こそが『赤き月』の総帥、エレノア・ドラクロワ。先日時間の亀裂に飲み込まれた宰相の祖母であり、長年にわたってこの組織を率いてきた人物だった。


「準備は整ったか?」エレノアは側近の一人に尋ねた。


「はい、総帥」法衣の男が頭を垂れた。「三度目の月光の力が最高潮に達するまであと一時間です」


「良い」エレノアは満足げに頷いた。「我々はついに念願を果たす時が来た。我々の先人たちが追い求めてきた夢が、今宵実現する」


「ですが、総帥」別の信徒が遠慮がちに口を開いた。「双子の姉妹なしで儀式を完成させることができるのでしょうか?ドラクロワ宰相閣下は失敗してしまいましたが…」


「愚か者め」エレノアは冷たく言い放った。「我が孫は力の扱い方を知らなかったのだ。私は五百年もの間、この瞬間のために生きてきた。失敗など許されぬ」


彼女は石板に近づき、その表面に手を置いた。「確かに、本来なら双子の血が必要だが、私はより古い、より強力な術を知っている。『赤き月』の全信徒の生贄によって、それは可能となる」


周囲の信徒たちの間に動揺が走った。


「恐れるな」エレノアは静かに言った。「我々は永遠に生き続けるのだ。時間を書き換え、新たな世界の神として」


一方、古王城から数キロ離れた丘の上には、黒装束の一団が身を潜めていた。ヴィオレット・アシュフォード、セレスト・ブライトウッド、フレデリック伯爵、レイモンド執事、そして選ばれた『月影の守護者』たちと王太子アレクサンダーの率いる精鋭の騎士団。彼らは城の動向を注意深く観察していた。


「予想通り、『赤き月』は儀式の準備を進めているようね」ヴィオレットは小声で言った。彼女は黒い戦闘服に身を包み、腰には短剣を帯びていた。


「総帥のエレノアが直々に現れるとは」レイモンドは驚きの色を隠せなかった。「彼女は伝説の存在だと思っていました。五百年以上も生きているとされる魔女です」


「五百年?」セレストは目を丸くした。「そんなこと可能なの?」


「時間の力を悪用すれば、可能なのでしょう」レイモンドは静かに答えた。「しかし、その代償は計り知れない。彼女の魂は既に人間のものではないかもしれません」


「作戦の確認をしよう」王太子アレクサンダーが皆を集めた。「我々は三つの班に分かれる。第一班は正面から城に突入し、『赤き月』の信徒たちの注意を引きつける。第二班は裏口から侵入し、祭壇のある王の間を目指す。そして…」


彼はヴィオレットとセレストを見た。「君たち姉妹は第三班として、私とフレデリック、レイモンドと共に、秘密の通路から直接王の間に向かう」


「通路の存在は確かなの?」ヴィオレットが尋ねた。


「『月影の守護者』の記録にある」レイモンドが頷いた。「古王城が放棄される前、最後の王によって造られた脱出路です。彼もまた守護者の一人だったのです」


「では、全員、準備はいいな?」王太子が尋ねた。「行動開始は30分後だ」


全員が緊張感を持って頷いた。


ヴィオレットはセレストと少し離れた場所に移動し、静かに話しかけた。


「怖い?」


「ええ、少し」セレストは正直に答えた。「でも、姉さんと一緒だから大丈夫」彼女は胸元の太陽の羽飾りに触れた。「これが本当の力を発揮する時が来たのね」


「そうね」ヴィオレットも月環の欠片を握りしめた。「私たちの運命がようやく明らかになるわ」


フレデリックが二人に近づいてきた。彼の顔には決意の色が浮かんでいた。


「ヴィオレット」彼は真剣な眼差しで彼女を見つめた。「君に言っておきたいことがある」


「何かしら?」ヴィオレットは少し驚いて彼を見た。


「この戦いが終わったら…」フレデリックは一瞬言葉に詰まった後、勇気を振り絞るように続けた。「君に正式に愛を告げたい」


ヴィオレットの頬が赤く染まった。「フレデリック…」


「今は答えを求めない」彼は急いで言った。「ただ、この気持ちを胸に秘めたまま戦場に向かうのは耐えられなかったんだ」


セレストはくすくすと笑い、二人から離れた。「二人の邪魔はしないわ」


フレデリックがヴィオレットの手を取ろうとした瞬間、レイモンドの声が響いた。


「行動開始の時間です!」


緊張感が一行を包み込んだ。第一班と第二班がそれぞれの位置に散っていく中、ヴィオレットたちの小さな第三班は、城の東側に隠された秘密の入り口へと向かった。


「ここだ」レイモンドが低い岩の陰に隠れた小さな扉を示した。「もう何世紀も使われていないだろうが…」


彼が扉を押すと、驚くほど簡単に開いた。


「最近誰かが使ったようだな」王太子は眉をひそめた。


「警戒して進みましょう」ヴィオレットは言った。


五人は狭い通路に入り、松明の灯りを頼りに前進した。通路は城の内部深くへと続いており、時折蜘蛛の巣や小動物の痕跡が見られるものの、比較的よく保存されていた。


「これは…」レイモンドが壁に刻まれた古い紋章を指差した。「王家と太陽の家の紋章が一つになっています。両家が協力していた証拠です」


「歴史は繰り返すのね」セレストが小声で言った。


通路は徐々に上へと傾斜し、彼らを城の上層部へと導いた。やがて彼らは小さな扉の前に立った。その向こうから、低い詠唱の声が聞こえていた。


「王の間の裏側だ」レイモンドは囁いた。「儀式はすでに始まっている」


「作戦通り行くわ」ヴィオレットは全員を見渡した。「王太子とフレデリックは右から、レイモンドは左から。セレストと私は正面から」


「気をつけろ」王太子は厳粛に言った。「エレノアは強大な力を持っている。油断するな」


全員が頷いた後、ヴィオレットがゆっくりと扉を開けた。


王の間の光景は息を呑むほど異様だった。部屋全体が赤い光に包まれ、『赤き月』の信徒たちが円陣を組んで詠唱を続けていた。中央の祭壇ではエレノア・ドラクロワが両手を広げ、赤い宝石が埋め込まれた石板の上に何かの粉を撒いていた。


部屋の隅々まで目を凝らすと、儀式に必要な道具や古い書物が並べられ、壁には不思議な符号が描かれていた。そして、何より衝撃的だったのは、石板の周りに描かれた大きな魔法陣だった。それは複雑な幾何学模様で構成され、部屋全体を覆うほどの規模だった。


「時間の編み直しの儀式か…」レイモンドが小声で言った。「恐るべき禁忌の術だ」


彼らは静かに部屋に入り込み、それぞれの位置に散った。ヴィオレットとセレストは、柱の陰に隠れながら祭壇に近づいていった。


「総帥」一人の信徒が突然声を上げた。「侵入者がいます!」


エレノアは動揺する様子もなく、ゆっくりと振り向いた。その目は赤く輝き、不気味な存在感を放っていた。


「ようこそ、アシュフォード姉妹」彼女は微笑んだ。「来ると思っていたよ」


「儀式を中止しなさい、エレノア」ヴィオレットは毅然と言った。「時間を操ることで得られるのは破滅だけよ」


「破滅?」エレノアは低く笑った。「いいや、これは創造だ。腐敗し堕落した世界を浄化し、新たな秩序を築くための」


「嘘よ!」セレストが前に出た。「あなたは自分の欲望のために世界を歪めようとしている。私もかつてあなたたちに操られていたけど、その本質を知ったわ」


エレノアの表情が厳しくなった。「愚かな子たち。私は五百年の時を生きてきた。お前たちに私の志の高さが理解できるとでも?」


その時、騒々しい音が城の下層から聞こえてきた。第一班と第二班の攻撃が始まったのだ。


「仲間が来たようね」ヴィオレットは言った。「もう終わりよ、エレノア」


「終わり?」エレノアは苦々しく笑った。「いいや、始まりだ」


彼女が手をかざすと、部屋の入り口が魔法の壁で封じられた。「お前たちは丁度いい。儀式に必要な生贄だ」


『赤き月』の信徒たちが彼らを取り囲み始めた。王太子とフレデリック、レイモンドも姿を現し、五人は背中合わせで円陣を組んだ。


「どうする?」フレデリックが剣を構えながら尋ねた。


「時間を稼ぐ」ヴィオレットは言った。「儀式を妨害するチャンスを待つのよ」


戦いが始まった。王太子とフレデリックは剣を振るい、レイモンドも特殊な小刀で敵を牽制していた。ヴィオレットとセレストは、敵の攻撃をかわしながら、徐々に祭壇に近づこうとしていた。


「姉さん!」セレストが突然叫んだ。「見て!」


石板が赤く輝き始め、その上に浮かび上がった魔法陣が回転を始めていた。エレノアが儀式を加速させたのだ。


「もう間に合わない!」レイモンドが叫んだ。「儀式が始まってしまった!」


エレノアは狂気じみた笑みを浮かべ、詠唱を続けていた。「来たれ、赤き月の力よ。時を引き裂き、新たな世界を創り出せ!」


石板からは赤い光の柱が天井へと伸び、城全体が震動し始めた。


「セレスト!」ヴィオレットは妹に向かって叫んだ。「私たちの力を合わせるのよ!今すぐ!」


二人は敵の隙をついて走り出し、祭壇へと向かった。


「止めろ!」エレノアが叫ぶが、すでに遅かった。


ヴィオレットとセレストは祭壇の両側に立ち、それぞれ月環の欠片と太陽の羽飾りを高く掲げた。


「月の力よ!」ヴィオレットが呼びかけた。


「太陽の力よ!」セレストも続いた。


「私たちに力を!」二人は同時に言った。


月環と羽飾りから、銀色と金色の光が放たれ、エレノアの赤い光と交錯し始めた。部屋全体が三色の光に包まれ、まるで色彩の嵐のようだった。


「愚か者め!」エレノアは怒りに震えながら叫んだ。「お前たちの力など、五百年の時を生きた私には敵わぬ!」


彼女は両手を広げ、赤い光の渦を二人に向けて放った。しかし、ヴィオレットとセレストの放つ光がそれを押し返していく。


「二人が一つになれば、時間の力は完成する」レイモンドが信徒との戦いの中で叫んだ。「それがエレノアの恐れていたことだ!」


「一つに…」ヴィオレットは妹を見つめた。


「一つに…」セレストも頷いた。


二人の心が共鳴した瞬間、月環の欠片と太陽の羽飾りから放たれる光が一つになり、純白の輝きとなって部屋中を包み込んだ。


「なっ…何だと!?」エレノアの顔に恐怖の色が浮かんだ。


白い光は赤い光を押し返し、石板を包み込んでいった。石板は亀裂を生じ始め、やがて粉々に砕け散った。


「いいえ!」エレノアは絶望的な叫びを上げた。「五百年の準備が!」


しかし、事態はさらに予想外の展開を見せた。砕け散った石板の破片から赤い霧のようなものが立ち上り、エレノアを包み込み始めたのだ。


「何が起きている?」王太子が戦いを中断して見つめていた。


「時間の報い」レイモンドが厳かに言った。「彼女は長すぎる時を生きすぎた。そして今、その代償を払っているのだ」


エレノアの体が徐々に透明になっていく。「いいや…こんなはずでは…」彼女の声も次第に遠のいていった。「私の夢は…」


そして、彼女の姿は完全に消え去った。同時に、『赤き月』の信徒たちも恐怖に駆られ、四散し始めた。


「総帥が消えた!逃げろ!」


部屋の入り口を塞いでいた魔法の壁も消え、第一班と第二班の兵士たちが駆けつけてきた。


「無事か?」王太子の騎士長が尋ねた。


「ああ」王太子は頷いた。「儀式は阻止された。エレノアは…時間に飲み込まれた」


ヴィオレットとセレストは祭壇の前で、互いを支え合いながら立っていた。彼女たちのアイテムはまだ微かに光を放っていたが、その強度は弱まっていた。


「終わったのね…」ヴィオレットは疲れた様子で言った。


「ええ」セレストも安堵のため息をついた。「でも、これが本当の始まりでもあるわ」


フレデリックが二人に駆け寄った。「二人とも無事か?」彼は特にヴィオレットを心配そうに見つめた。


「大丈夫よ」ヴィオレットは微笑んだ。「ただ少し疲れただけ」


「すごかったぞ」王太子が近づいてきた。「二人の力が一つになった時、まさに伝説通りだった」


「でも私は『赤き月』の目的がよくわからないわ」セレストが不思議そうに言った。「時間を操って何がしたかったの?」


「世界の書き換えだ」レイモンドが重々しく答えた。「彼らは時間の流れを変え、自分たちを支配者として据えようとしていたのでしょう。歴史そのものを変えるという、最も危険な野望です」


「それにしても」フレデリックが言った。「エレノアが本当に五百年も生きていたとは…」


「彼女は時間を盗んで生きていた」レイモンドは説明した。「他者から時間を奪い、自らの命を延ばす禁忌の術です。だからこそ、時間そのものが彼女を裁いたのでしょう」


彼らは王の間を後にし、城の外へと向かった。夜空には満月が輝き、その光は以前より澄んでいるように見えた。


「これからどうなるの?」セレストが王太子に尋ねた。


「『赤き月』はその指導者を失い、力を失ったであろう」王太子は答えた。「残党の掃討は『月影の守護者』が担当する。そして、君たち二人には…」


「私たちには?」ヴィオレットが促した。


「歴史の真実を伝える役目がある」王太子は真剣な表情で言った。「二つの血筋の物語を、次の世代に」


---


一ヶ月後、ルナリア王国の王宮では、特別な宴が催されていた。「月と太陽の祝宴」と名付けられたその式典は、王国の新たな時代の始まりを祝うものだった。


大広間は華やかに飾り付けられ、国中から集まった貴族や要人たちで賑わっていた。しかし、最も注目を集めていたのは、広間の中央に立つ二人の姉妹だった。


ヴィオレットは深い紫の高貴なドレスに身を包み、セレストは純白のエレガントなドレスを纏っていた。二人とも以前とは違う、より自信に満ちた表情を浮かべていた。


「緊張する?」ヴィオレットが小声で尋ねた。


「少し」セレストは微笑んだ。「でも、姉さんがいるから大丈夫」


王太子アレクサンダーが壇上に立ち、式典の開始を告げた。


「ルナリア王国の貴族の皆様、そして来賓の方々」彼は厳かな声で言った。「本日は歴史的な日となります。長い間隠されてきた真実が明らかになり、私たちの王国が新たな時代に踏み出す日だからです」


彼はヴィオレットとセレストに手を差し伸べた。「この二人、ヴィオレット・アシュフォードとセレスト・ブライトウッドは、古代より続く太陽の血筋の正統な継承者です。そして今日、彼女たちは正式に王家と同等の地位を与えられ、『月影の守護者』の新たな指導者となります」


会場から大きな拍手が起こった。


「さらに」王太子は続けた。「二つの血筋を象徴する意味で、セレスト・ブライトウッドは私の正式な婚約者となることを、ここに発表いたします」


会場にさらなる驚きと喜びの声が広がった。セレストは頬を赤らめながらも、王太子の隣に進み出た。


「そして」王太子はさらに言葉を継いだ。「ヴィオレット・アシュフォードの婚約についても発表があります」


ヴィオレットは驚いた表情を浮かべた。「えっ?」


フレデリック伯爵が人々の間から歩み出て、彼女の前に膝をついた。「ヴィオレット」彼は皆の前で言った。「君と共に歩む人生を望んでいる。受け入れてくれるだろうか?」


会場が静まり返り、全ての視線がヴィオレットに注がれた。彼女は一瞬言葉を失ったように見えたが、やがて優しく微笑んだ。


「ええ、もちろん」彼女は答えた。「あなたの隣にいることが、私の望みよ」


再び大きな拍手が起こり、祝福の声が広間を満たした。


宴は深夜まで続き、人々はルナリア王国の新たな時代の始まりを祝った。夜も更けた頃、ヴィオレットはバルコニーに出て、星空を見上げていた。


「姉さん」セレストが後ろから声をかけた。「一人で何を考えているの?」


「いろいろとね」ヴィオレットは振り返って微笑んだ。「この数ヶ月の出来事が夢のようよ」


「でも現実よ」セレストは彼女の隣に立った。「私たちが作り出した現実」


「そうね」ヴィオレットは頷いた。「時間を遡って過去を変えることができたけど、結局大切なのは未来を作ることだったのね」


「ねえ、姉さん」セレストが突然真剣な表情になった。「この間、あることに気づいたの」


「何かしら?」


「私たちの力、まだ消えていないわ」セレストは太陽の羽飾りを取り出した。それはまだわずかに輝いていた。「そして…」


彼女はヴィオレットのポケットを指さした。ヴィオレットがポケットから月環の欠片と時間の鏡の破片を取り出すと、それらも同様に微かな光を放っていた。


「何を意味するのかしら?」ヴィオレットは不思議そうに尋ねた。


「わからないわ」セレストは首を振った。「でも、私たちの役目がまだ終わっていないのかもしれない」


「それとも、新たな始まりなのかもしれないわね」ヴィオレットは静かに言った。


二人は互いに見つめ合い、そして再び夜空を見上げた。満月の光が二人を照らし、その銀色の輝きは二人の前途を祝福しているかのようだった。


城内では宴が続き、祝福の音楽が奏でられていた。そこにはフレデリックや王太子、レイモンドの姿もあった。彼らはそれぞれの役割を得て、新たな時代を築く準備を始めていた。


「さあ、戻りましょう」ヴィオレットは言った。「みんなが待っているわ」


「ええ」セレストは頷いた。


二人がバルコニーを去ろうとした瞬間、不思議な光景が目に入った。窓の外の空に、一瞬だけ二つの月が浮かんでいるように見えたのだ。


「あれは…」セレストは息を呑んだ。


「幻かもしれないわ」ヴィオレットは言ったが、彼女自身も確かに見たと感じていた。


彼女はさりげなくポケットの月環の欠片に触れた。それは驚くほど温かく、再び結晶化し始めているようだった。ヴィオレットは何も言わず、その感覚を心の奥に留め置いた。


「行きましょう」彼女は微笑んだ。「これは終わりじゃなく、始まりなのだから」


姉妹は肩を寄せ合い、華やかな宴の席へと戻っていった。彼女たちの物語は新たな章に入ったばかりだった。そして、時の流れの中で、彼女たちの旅路はまだ続いていくのだろう。


月明かりの新たな夜明けの中で。


~完~

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残機3の悪役令嬢輪舞(アンチノーブルワルツ) zataz @neoi

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