2日目2(24)




「班決め終わったか?終わったなら班長決めて学生寮の鍵を取りに来い。それでもって今日は引越しだ。仮宿舎から荷物移動して後は班員同士で仲でも深めてろ」



4人の塊が6つ。班決めが終わったタイミングで担任教師はそう言った。


しかし班長か。


どうしようね。



「班長どうしよっか?」



我が班員達に語り掛ける。


水瀬さんはビクリと身体を震わせてから、佐々木さんと篠崎さんの様子を伺う。


この反応からして水瀬さんはどうやら班長をやりたくないようだ。



「そうだね。僕は茂木くんがいいと思うな。しっかりしてそうだし」


「俺?」



佐々木さんの案。


俺が班長か。



「篠崎さんはどう思う?」


「⋯⋯それでいいと思う」



篠崎さんも俺が班長で問題ないようである。



「班長の言うことは絶対!班員は命令に逆らえない!ーーとかあったっけ?」


「そうなるんじゃないかな。僕ら基本的に上の命令には逆らえないし」


「ふむふむ。なるほどそれはいいかもしれない」


「私たちに何か命令するつもりなの⋯⋯?」



水瀬さんは後ずさりして顔を青くする。


怯えておる。


何を命令されると思っているのか。



「水瀬さん⋯⋯嫌いな食べ物とか、ある?」


「と、トマト⋯⋯」


「そうか。好き嫌いは良くないね。ダメだよ。ちゃんと食べないと」


「い、イヤ⋯⋯お、おおお、お願いします⋯⋯!ゆっ、ゆる、許して⋯⋯!」


「班長命令だ。トマトを食べなさい」


「くっ、うううっ⋯⋯!」



水瀬さんは泣き出してしまった。


でも仕方ない。


班長命令だから。



そんなんで俺が班長となった。


先生から学生寮の4番と書かれた鍵を受け取る。


我が班はD組4班となった。


仮宿舎から各々自分の荷物を持ってくる。


キャリーボックスが1つだけ。これが俺の持ち物の全てだ。


他3人も俺と同じ様なもので、それぞれがカバンを一つだけ。


荷物が少ない分、引越しも楽なものである。


学生寮のD4と書かれた大部屋に到着。


部屋に入ってすぐ、右手はキッチン。左手には浴室とトイレ。


その間を通った先に大部屋。右と左に2つづつ計4つのカーテン付きのベッドとクローゼットがある。


そして部屋の奥には大きなガラス窓とベランダ。窓の手前にはテーブルと椅子があって窓からの景色を一望できる。眺めは良い。巨大な壁に囲まれたいつもの街並みが見える。


ふむ。4人部屋ってこんな感じなのか。


中等部の学生寮は一人部屋だったのでちょっと新鮮だ。


誰がどのベッドを使うのか軽く話し合う。


どれも一緒の作りなので特に揉めることなく決まった。


部屋に入って右手前が俺。右奥が水瀬さん。左手前が佐々木さん。左奥が篠崎に決まった。


ベッドが決まったところで荷解き⋯⋯という程でも無いけどーーキャリーボックスから中身を取り出しクローゼットに仕舞って終了。


ちょっと寝心地を確かめておこうか。


横になる。


言うほどフカフカでもなく、固くもないありふれたベッド。


こうして横になると瞼が重くなってくる。


昨日の疲れも残っていたのかもしれない。


俺はそのまま眠ってしまった。





⋯⋯⋯⋯。



⋯⋯⋯⋯。



⋯⋯⋯⋯。





「茂木くん!一緒の班になろ!」


「うん。いいよ」


「班長?私、やりたいっ!」


「よし。任せた」


「ほうほう。ここで3年間暮らすことになるわけですな。改めてよろしくね!」


「ああ、よろしく」





⋯⋯⋯⋯。



⋯⋯⋯⋯。



⋯⋯⋯⋯。





夢か。




思いの外⋯⋯原田さんのことは引き摺っているのかも知れない。


きっと原田さんが居たら楽しい学園生活を送れたと思う。


原田さんなら。


そうだな。


この世界を俺は楽しまなければならない。


そう思うんだ。


頑張ろう。


今からでも頑張ろう。


俺はベッドから飛び起きた。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

学園青春ラブコメ(仮) 助部紫葉 @toreniku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ