死と芽吹きが交差する、静寂の航路

死体に芽吹く植物。
それは宇宙船という閉鎖空間で、人間たちの命を支える循環装置であり、生と死をつなぐ静かな媒介だった。

だが、繰り返される死と芽吹きに、船長はある違和感を抱き始める。

この植物は本当にただの資源なのか?
意志なき生命体なのか?
それとも――この船内で、密かに我々を見つめているもう一つの存在なのか。

夢に見たのは、逆転した世界。
人間が植物に飼われ、管理され、利用される側となる悪夢。
その悪夢の奥にある、静かな怒りと、どこか懐かしい安堵。

やがて船長は一つの答えに辿り着く。

「意味を求めても、宇宙は何も語らない。
それでも私たちは共に在る――理由などなく」

生と死、支配と奉仕、希望と絶望。
その境界が曖昧に溶け合うなかで、船は静かに航行を続ける。

これは、哲学的SFでありながら、感情を静かに揺さぶる物語。

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