路傍の猫

@nununu___09

一。

 晴れの日。空からは熱が注ぎ、その熱は地べたの草木を育てる。コンクリートを暖め、空と地の合間にあるワタシを暖める。

 池にサカナが跳ねた。目を凝らし、その影をただジッと見つめている。すると、家からヒトが出てきた。棒を持ち、ワタシを追いかけるので、しかたなくワタシは逃げた。

 サカナはワタシのだ。だが、今日はその時ではない。


 曇りの日。ワタシは憂さ晴らしにそこらのネズミを手でもてあそんでいた。晴れの日のあのヒトがたまらなく許せない。あの池から必ずサカナをとってやる。

 今日もあの家を眺めた。縁側をみると、あのヒトとは別のヒトが寝ていた。猫の真似をするな! と一喝すると、奥からあのヒトが現れて寝ているヒトを家の中へと運んだ。ざまあみろ。

 今日は空からの熱がない。おかしい。毛玉のようなものが空一面にかかっている。あの毛玉、誰のだろう。ジッと見ていると、むこうのむこうの方からうるさいクルマがやってきた。家の前まで来て、さっき寝ていたヒトがあのヒトに連れられクルマに急いで乗っていた。

 言わんこっちゃない。ワタシ達の真似をするからだ。だが、今日はうるさいのでしかたなくワタシは逃げた。

 まだサカナは大丈夫。


 晴れの日。今日もあの家を眺めていた。池がいつもよりも一層キラキラ光るので、ワタシは目を細めなければいけなかった。さわさわ揺れる草の中、ジッと身を屈ませ眺めていると、塀からなにかがやってきた。ギョッとして眺めていると、それは大きなヒトだった。特に背中が大きくて気味が悪い目をしていた。

 それでもジッと見ていると、あの家の縁側から大きなヒトが入っていって、家の中へ溶けるように消えてった。怖いのがいなくなってひと安心。またジッと池を眺めた。

 池のキラキラが少し収まったころ、大きなヒトがあの家の玄関から出ていった。ドタドタいわせて出ていった。その後あのヒトが家へ入り、その少し後に悲鳴が聞こえた。

 ドタドタドタと、縁側の方へあのヒトが来る気がしたので、しかたなくワタシは逃げた。

 次こそサカナはワタシのもの。


 雨の日。嫌いな水が空からザアザア降ってくる。避けようと木の陰に隠れた。もちろんあの家の近くで。池は水が邪魔して中が見えない。目を細めてもなんにも見えない。だけど水はどんどん降るので、ずっと木の陰にいると。あの家の中から叫びが聞こえて、ドタンドタンとうるさくなった。耳をふさいで縁側を睨みつけると、次第に声がなくなって、気味の悪い静かな家になった。あのヒトはいなくなったのか。縁側には何も来ないし、今ならサカナをとるチャンスかも。

 ワタシは家を見ることにした。ソロリソロリと縁側から中に入ると、階段の下で知らないヒトが寝ていた。あまりに静かに寝ているので、頭を踏みつけてやる。するとそのヒトは赤い水でびちゃびちゃだったらしく、ワタシの足は汚れてしまった。なにをする! と思わず叫んだがそのヒトは起きなかった。足を拭くものを探さねば。家の奥へと入っていった。

 背の高いテーブルの部屋。ここに拭くものがある気がした。ソロリソロリと歩いていくと、テーブルの下に白いものが見えた。よし、あれで足を拭こう! と意気込んでジャンプする。テーブルの上に上がってみると、白いものはあったけれど、それよりも目立つものが向こうの部屋にあった。

 あのヒトだった。しかも、ただ立っているだけでなく、空を飛んでいた。

 ワタシは逃げた。恥も外聞もなく逃げた。今日こそはと思ったが、今日は絶対サカナは無理だ。

 しかたなくワタシは逃げた。水が降るのもおかまいなしに。

 一体サカナはいつとれるだろう。

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