オレとよだれ鳥🦃

夢月みつき

「開け、オレの妄想力!」

 オレは高校3年、そして格闘技を習っている武闘家でもある。

 クラスメイトの話題で最近良く「よだれ鳥」と言うワードを聴くようになった。


「よだれ鳥ってなんだ?」

 オレはすかさず得意の妄想をした。最初はニワトリのような姿でそして、その鳥が大量のよだれをまき散らしながら歩いているといった具合だ。

 

 って、どんな具合だよ! なんなんだ鳥! そんなによだれ垂らして!なんなんだオレ、その妄想は!

 一人でボケツッコミをして、オレは思わず噴き出した。


「ブフォッ! なんなんだその鳥は」

 

 変な所でツボに入ってしまったぜ。なに? 検索しろ? 

 まぁ、まてまて。何でもそうすぐ調べれば良いと言う訳ではない。もう少しこの妄想に浸らせてくれ。


 オレはさらに想像の羽を広げた。なになに、よだれ鳥とな?よだれ鳥と言うからにはだな。

 

 やっぱり、よだれがとにかく、パネェんだよ。

 もうな、ダラダラダラダラと。滝のように出ているんだな!


 お前、どこか壊れたんじゃねえか!ってくらいにな。

 うん、そうに違いないんだ。それで、姿はやっぱ鳥なんだよ。

 で、にわとりじゃなくて、七面鳥のような姿をしていてアゴにプルプルしたものをぶら下げているんだわ。



 🦃



 その時……オレが妄想力フィニッシュをたのしんでいると煙とともにオレの前に奴が降臨した!


「――おっ、お前はッッ!! よだれ鳥、なのか!!?」

 そうそれは、オレ自身が創造した「よだれ鳥」そのものだった。

 


 オレがフルフルと、恐ろしさと喜びで武者震いをしていると、鳥がぷるぷるしたモノをぶら下げながら、つんざく雄叫びを上げて襲い掛かって来た。

 

 そうもちろん、大量のよだれをまき散らしながら、だ!

「なんてこった! オレは何て、バケモノを産み出してしまったんだッ! おのれの想像力が怖くなって来るぜえ」


「クアア―!!!」


 ロックオーン!!!

 ズシャアッ!


 よだれの悪魔、よだれ鳥と対峙するオレ!まさにオレVSよだれ鳥の構図だ。


「鳥ィイィィ! 妄想の産物なら産物らしく、あるべき場所へ返れ!!」


「クワアッッ」


 双方、吠えながらダッシュで近づく。オレとよだれ鳥が激突する。


 ガァン!


 頭突きから始まった戦いは流れるように続いてゆく。

 オレは、よだれ鳥の脇腹めがけて電光石火の一撃を放つ!

 それを鳥はかわし、よだれをオレの顔に向かってまき散らす。


 よだれが直撃!

 

 鼻を突く腐敗したような臭いが充満し、顔面にまとわりつく悪夢のような粘着質。それが大量に目に入りそうになる。


「ヤバい! このままじゃ失明しちまう!」

 

 そう危機感を覚えたオレは急いでよだれを腕でぬぐい取った。

 間髪を入れず鳥はクチバシで突きを繰り出して来た。

 突きを交わしながら攻撃のチャンスを狙う。


「こんなのは効かねえぜ! これでもくらえ!」


 左足を軸に右足を振り回し、高速の回し蹴りを放った!

 バキィィッ!!


「グワッッ!!」

 

 蹴りが見事にクリーンヒット! 

 鳥が吹っ飛び壁に激突する寸前、体制を整える。壁を足場にした。

 

 壁を鋭く蹴って勢いを増すと同時に真っすぐ突っ込んで来た。

 

 本能が叫ぶ――迎え撃つしかない!オレは拳を握りしめ、一瞬で戦闘態勢に入った。


 しかし、奴から「カ—――――ッ」と不気味で甲高い声が響いて来た。


「なんだ?!」緊張感が走る。嫌な予感を覚え悪寒がして鳥肌が立った。

 

 急接近した鳥は首をのけぞらせ、一気に大量の液体玉を放出した!


「あり得ねぇ! この量、洪水レベルだろッッ!!」

 

 びしゃあっっ!!


 オレは頭から、全身にその洪水レベルの異臭を放つよだれをかぶってしまった!


「ぎゃあッ、生臭ええ―——!!!」


 喉を焼くような異臭が肺まで押し寄せる!


 ――こうして、この戦いは「よだれ鳥」の勝利で終わった!


 カンカンカーン!


 オレの脳裏で試合終了のゴングの音が空しく鳴り響く――




 🦃




 よだれまみれで横たわるオレを、よだれ鳥はドヤ顔で踏みつけながら勝利の雄叫びを上げた。

 

 その顎には相変わらずプルプルしたモノがぶらさがり、風も無いのにプルプルプルプル揺れていた。


 決着が着いた六畳一間の部屋の中、テレビが映像を映し出していた。グルメ番組の食レポをしているお笑い芸人が、流暢りゅうちょうにしゃべっている。


『実にうまいですねぇ、よだれ鶏! 頬っぺたが落ちそう~。よだれ鶏の由来はヨダレが出るほどうまいから、そして四川料理で辛みがあります』


「ああ、そうなんだ……これが真のよだれ鶏か!」


 これまでの疲労がどっと出て来て、よだれの生臭い臭いで吐き気がしてきた。


「オレは何やってたんだ? お前は一体、誰なんだ?」


「クワッ!訳:おれもよだれ鳥だが? お前が産み出したな。文句あるのか」


「いや、文句はない……とりあえず」


「シャワー浴びよう」

「クワア~。訳:そうだな」


 二人は一緒に風呂場へと消えて行った。


 終わり



 🐓🐔🦃🐔🐓🦃🐓🐔🦃🐔🐓🦃🐓🐔🦃🐔🐓🦃

 ここまでお読みくださりありがとうございました。


 こちらには元の詩とaiで作曲した曲があります。

 良かったらこちらのリンクからどうぞ。

 詩「よだれ鳥」

https://kakuyomu.jp/works/16817330669433532146/episodes/16818023212064265456

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