カップ麺小噺

鏡読み

「カップ麺小噺」

前書き※※※※※※※※※※※※※※※※

このお話は声に出して読むと約三分、

大体カップ麺ができる程度のお話となっています。

ここから下を音読でどうぞ

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


さて、お湯は注いでいただけましたでしょうか?


蓋はお閉めいただけましたでしょうか?


ああ、申し遅れました。何を隠そう私はカップ麺。


生まれは工場、育ちは売り場。


貴方に手を取っていただき、美味しく召し上がっていただく手前でございます。


可愛そう? いいえ、いいえ、そんなことはございません。


おいしそうと言ってくださいませ。


我々食品はおいしく食べられるが本望。決して恨んだりはしませんって。


あ、でも、一つお願いを聞いていただけるのであれば、表記の時間を守っていただきたく、お願い申し上げております。


固ゆで派のあなたも、麺伸び放題のあなたも、せっかく食べごろを書いて教えていますのに、それを守らないとは、よほどのへそ曲がりか、こだわりが強いのでしょうね。


いえいえ、それも一つの食べ方、否定はしません。断じてしません。


でも、その食べ方じゃあ、もったいなくはありませんか?


いや、なに、私が言いたいのは、食べごろをきちんと味わってから、二つ目、三つ目の後輩たちはお好みで食べてくださいと言いたいだけ。


新しい味を試してみるときだけでも、ね? ね? どうですこの提案。


あやや、うるさいですか、そうですか。ついしゃべってしまうのは私の悪いところですかね?


でもね、考えてもみてください。


袋麺5袋400円、一杯換算80円。


それに比べて我々の高いこと、高いこと。


せっかく高いものを食べるのですから、きっちり時間を守るのも良いではないですか。


時計とにらめっこするのが嫌なら、スマートフォンのタイマーを使うもよし、最近はシリとかグーグルアシスタントとか、音声認識でタイマーやれちゃうんでしょ?


なら、楽ちんじゃあないですか。


なに? 妙にスマートフォンに詳しいって? カップ麺の癖に?


バカにしちゃあいけません、我々カップ麺は常に研究や情報収集をかかさないものでしてねぇ。


中にはエスディージーズとか言って、蓋の耳を二つに増やしたやつもいますし、家系が流行ったからと言って、流行りに乗っかって家系ラーメンのスープを完コピしたやつがいたりと、日々、時代に合わせておいしく、たくましく、己を磨いているのですよ。


まあ、この間、親戚のカップ焼きそば叔父さんが「俺はショートケーキになるんだ」と叫び出して、乾燥したイチゴを封入しだしたときにはひっくり返りましたが。


ショートケーキですよ? ショートケーキ。あれにはおったまげましたよ。


いや、でも、意外とおいしいらしいですよ? ちょっと脳の認識がバグりますけど。


おおっと! 麺がお湯を吸っていい感じになってきましたよ!


でも、ここで焦っちゃいけない、落ち着いて、落ち着いて。


ええい、落ちつけんーー!!

どうも食べられる瞬間ってのはそわそわするもので。

こうやって、私の口が回るのも、やっぱりそわそわするからなんでしょうねぇ。


美味しく食べてくださいよ? お願いしますよ?


なにせ、我々カップ麺はいつも願っております。


最高の味で、あなたのおなかを満たしたいと。


――さて、そろそろ蓋を開ける頃合かと。

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カップ麺小噺 鏡読み @kagamiyomi

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