ギルドマスターの社(会の)窓から〜過去編なんぞいらんから早くダンジョンに行け

 

『んんんっ♥ある!んんん!!主様ぁ!んんん!!!♥』


『んん!?ぷはっ!もう良いだろうが!しかし…熱いキス、懐かしくも苦く、甘い……いや、何やってるんだ、俺は…早くアスラ様に相談せねば…』


『厶!?甘いキスとは甘露の味がするとほイブキ様の言。アルマ、イブキ様に進言せよ!ハヒルとするようにとな!』


『せいししゃまは、なまにくのあじがすりゅ〜』


 集めといて何だが、お前らが何やってんのかは俺が聞きてぇよ。

 

 誰に言ってるのか分からんが、俺の名はデルタ、元大陸の南に位置する大国【ガリ】で最も巨大なクラン【アーヌー・スホール】のマスターだ。

 今は王宮から最も離れた場所にあるアスラの街の全ギルドマスター……と言っても急拵えで作った大きい宿屋と酒場が混ざった様な建物で生活している…まぁ町長みてぇなもんだ。


 それは建前で、実際は少し前に魔王が討伐され、各国の権力者が手を組んだ結果、対魔王で団結していた主要国で圧政が始まった。

 どうやら王族やら貴族やらは魔王が討伐された後の世界を見越していたんだろうな。


 そんな一部の権力者だけが甘い汁を吸う世界に、魔王が討伐された後に優遇されなかった者や反体制の気運がある者、まぁ敵がいなくりゃまた敵を作るのがこの世界なんだろうよ。

 大陸全土で様々な大なり小なり内戦の匂いがしていた。


 ウチのクランもガリ国に目をつけられ、逃げる様に辺境のアスラダンジョンの近くにクランごと移動した。

 今、ウチのクランは反体制側寄りになっている。

 と言うか強制的になった、ある馬鹿のせいで。

 王国側に姫の教育係としてナンバー3の魔導器使いであり転生者のイブキのせいだ。

 スパイとして動いているが…コイツは頭がおかしいので不安しかない。


 しかしクランは千人を越える大所帯だ、とりあえずダンジョンの近くに街を作り、クラン全体で攻略をしているフリをしている訳だが…


『で?俺達を集めてなにがしてぇんだい?ギルドマスターさんよ?』


「セイシ?お前、そんな口調だったっけ?」


『いや、何かやらされそうだから反抗的な態度に……』

 

「お前…調子にのると強制送還するぞ?」


『それだけは勘弁してくだせぇ!!』

 

 隣の大国から亡命してきたセイシとか言う馬鹿が騒ぐ。

 俺は本当に一杯一杯だから余計な事を言わないで欲しい。


 何で追い詰まってるかと言うと王国から通達が来たからだ。

 ダンジョン攻略の進展はどうなっているのかと。

 ずっと無視し続けてたら革命派の疑いあり…と。

 寧ろ、それをあんた方望んでるでしょう?


 そして、アスラダンジョンの神だろうか?

 クソ大変な時に神託も与えられた。

 寝ている時にいきなり身体が動かなくなり語りかけて来た。

 

――オレはアスラと言われる神、こんにちは。今から映像を送る、コイツらにダンジョン攻略させて、オレに面白物語を見せろ。そしたら良いもんやる。イエスと言わなければお前を殺しはしないが目が覚めないかも知れないな。それとバビルみたいな奴は出禁だから――


 俺もドラゴンキラーと言う異名を持つ男だが、金縛り状態で一方的に語りかける神を名乗る声は…はい、と言うまで許さない意思を感じた。


「わ、分かりました。仰せのままに」


 俺が思うにこの世界は異世界の神やら転生者の玩具にされているような気がする。

 

 しかしそれを言ったら世間は『お前、ドラゴンキラーじゃないのか?少しは逆らえよ』とか世間(クランメンバー)は言うが、そんなのどうでも良い。

 俺は強い者に従うタイプだから。


 そして集めた映像の五人……の筈が、何故か神に出禁と言われたウチのクランの問題児が混ざってて頭が痛い。


「ハヒル……お前は呼んでないし、ギルドに来るなって言った筈だが?」


『このハヒルに内密にすると言う事、つまりそこにjソンの秘密がある。やはりギルドの豚みたいな嬢に片っ端から手を出す変態ギルマスは疑って正解だな、イブキ様に感謝。』


 感謝。じゃねーよ、ふざけんなよ。めんどくせぇから無理矢理話を進めよう。


「まずは異国の魔獣使いとその使い魔、セイシとハンサム!」


『いや、まずはじゃなくてギルマス俺の代わりに行ってよ。俺はこの世界で素人モデルを使った成年本を出すのに「やがましい!強制送還するぞ!」……はぁ…』


『いまぁ、わらしのにゃまえ、いいましたぁる?』


 クソ!セイシはやる気ねぇ、ハンサムは舌を出して喋るから何言ってるか分からない…


「続いてスライムスレイヤーのサルレイン!」


『え?何で俺?俺はスライムしか……』


「アスラダンジョンの神に認められた、ダンジョンの清掃をしっかりやっているからだと…お腹の調子が良くなったらしい…と言われた…」


『はぁ…』


 俺だって馬鹿みてぇな事言ってる自覚あるよっ!

 でも言ってたんだよっ!知らねぇよ!


「そして…アスラの神に愛されし魔導戦士アルマ!…と、何かその横にいる人!」


『え?アスラ様が直々に指名を?なら…行くしかないか』


 マジで信仰って怖いな、俺は法術とか信仰から来るスキルを使わないから知らんが、コイツら神様に死ねって言われたら死ぬ感じなのな。

 

『横にいるって、シシリィも連れてこいと?』


「あぁ、そうだ。アスラ神は『サークルクラッシャーは姫に限る』とか意味分からない事を言っていた。その人、何処かの姫なのか?思いっきり奴隷の首輪付けてるが?この街に問題ごとは持ち込まないで欲しいのですが……」


 ついつい敬語になってしまう程、俺は参っている。頼む……問題を持ち込まないでくれ…


『あぁ…この人は昨日荷物として届いてですね、それで……』


 何かペラペラ喋り始めたが聞いてねぇんだが?

 さっさとダンジョンに向かって欲しいのですが?


 

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ダンジョン*クラッシャーの姫〜アスラダンジョンにて、パーティーもアスラ神の腹も崩壊する クマとシオマネキ @akpkumasun

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