アスラ様とハヒルが俺の過去編に行くのを阻止しようとする

 棺桶が開く、何かウゾウゾしたものが裸の女性にまとわりついている。


【私の妹であり、君の元婚約者、恥知らずのシシリィ・レイランド】


 白目で口をだらしなく開け、脱力したその肢体を俺は知っている。


【我らの妹、幼い第六皇女のミントを生贄に捧げ、君や私を裏切った外道】


 裸の女の口元以外を紫と黒の粘液の様なモノが、裸の女を覆う。

 

【アルフ、私はレイランド王家の名にかけて約束を守る。この女をお気に召すまま、全てを委ねる】


 思い出す、あの日に叫んだ激情の燃え滓


【心のままに報復すべし、あの戦場にいた者は】


 驚愕、憎悪、絶望、繰り返す地獄の日々


【同じ矜持を持つ、血を超えた魂の戦友と私は考えている】


 この女に……俺は………俺…………



『あれ?ミンクじゃないな、アイツの好きそうなプレイだけどな。アイツ変態だからな』


――厶!?これは死鎧じゃないか?エッチな事が出来る鎧かも知れないな――


 なんの話をしているか分からないが……


「この女…シシリィ…シシリィ…レイランド…俺の愛した……」


『尻?あぁコイツ、イブキ様曰く、ミンクの妹の怪盗女・尻だな。男を盗むから探偵じゃない方。イブキ様が魔王討伐帰りにレイランド城に寄るって言うから寄ったら途中で襲いかかってきた女。ミンクの血管がブチギレて面白かった(笑)処刑されたんじゃないの?生きとるがな』


 ハヒルが何か言ってる…処刑?俺知らないんだけど?

 確かにハヒルは魔王討伐に行った勇者と仲間達、英雄の一人だったらしいから、俺より詳しいだろうけど……


「俺、魔王討伐後は魔王城からそのままこっち来たんだよ…だからその後の事を、知らないんだ」


『厶!?イブキ様の一番奴隷である私の活躍を知りたいとな?良いだろう、しかと聞けい!』


――聞くな、ソイツ嘘つくぞ。いや、嘘じゃないんだ、分かってないんだ。幼稚園児に年金についての国会討論聞かせて何があったか説明出来るか?出来ないだろ?そんな感じだ――


 同時に喋るから…意味が分からない……


 その時、何か呪われた騎士みたいな風体のシシリィが棺桶から這いずる様に出てきた。

 


『た、たすけ………たす……おねが……』

 

 ズルズル…とこちらに向かってくる。

 

『おや、イブキ曰く、この妖怪人間便ベンは仲間になりたそうにしているのではないか?それに何かボールみたいなのが転がったな?ボールを使わせたら世界一!ハヒルかパンダか?ハヒルのボール裁き、旗と鎧と共にご照覧あれ!【パンッ!!】あ!』


 ハヒルが何か黒いボールを持って、ベラベラ喋っていると思ったらボールが砕けた。


『ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』 


 正確には握り潰した…ら、シシリィが悲鳴を上げ苦しみ始めた。


『アアア!!助けてっ!苦しい痛いいい!!ア゙ア゙ア゙ア゙!!』 


 突然過ぎて何も思いつかない。苦しむシシリィ…当時はこんな姿にしてやると思ったが、過去に何があったかは思い出そうとしているのに、思い出す前にいきなりだとちょっと頭が……


『この、尻。イブキ曰く演技派女優と見た!』


 明らかにハヒルがきっかけなのに他人事だ。


――よし、ア※ル。この女にキスをしてみろ――


 はい?アスラ様も何を言ってらっしゃる?


「え?あの、この女は昔悪い事をして……」


――だから再構築だよ、キスしたくないんだったら首を刎ねるか放置。それで終わりだ――


 何も思い出してない、悪い事というと言うフワッとした理由で首を切る…切れるのか俺に?


――早く選べ、1時間もすれば発狂して死ぬから。そこの馬鹿バビルが魔力やら生命力やらの入った魂の器を握りつぶしたからな。お前が生命力を吹き込まないと呪われた鎧に喰われ続ける、死なないけど。その選択を、この女を送った奴はお前に委ねたかったんだろうがなぁ、つまりバビルが一番酷い事をした――


『この女は、尻は……アレだな。イブキ様に殉じたんだな。緑の少年兵と同じ。争いとは悲劇を生む……』


――試しに許してみ?キスしてみ?許す事が必要だよ。絶対許さんって言ってると批判が来るからな――


 悲劇を生んだ奴はともかく……俺は…口だけしか見えない簡素だが明らかに禍々しい鎧を着たシシリィにキスをした。


 何故、そんな事をしたかと言うと…何も無い俺はアスラ様だけだったから。

 そのアスラ様か言うのであれば………


 キスした瞬間に舌どころが内臓を吸われんばかりに吸引された。




※謎ばかりが増えていく、そしてコメ返そうと思うし、短く話を刻みたい。

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