ふふふ…奥様方、聞いてくださいな。
この『鋼の海を征く者』、読んでるそばから私の背脂が荒波の如く逆巻いたんですの!
異世界転生? ふん、よくあるお話ですわね――と油断していた私が浅はかでしたのよ…!
剣も魔法もそっちのけで戦艦ですって!? もうね、油断大敵、バターは大歓迎!
だって奥様…考えてご覧なさいな?
鉄の箱舟を異世界でドックから起こすって、どれだけ脂肪燃焼…じゃなくて知恵と胆力が要ることかしら!
なのにこの少年、造船所を築き、港を仕切り、あまつさえ艦隊を組んで海の覇権を奪い取ろうというんですもの!
無鉄砲? いいえ奥様、これが若さと鉄とロマンの化学反応というやつですのよ…!
しかもね、仲間もイイのですわ~!
熱血副官? 天才技師? えええぇ、全員しっかり脂の乗ったキャラ揃いで、私の背脂が一滴も無駄なくとろける展開!
敵も味方も海風に晒されて鉄と火薬と策謀が飛び交うのだから、
息を吸う暇もなくページをめくる手がギトギトに止まらないんですの!
あぁ、世は海戦ロマン…!
波しぶきと砲煙の向こうに、私の背脂が艦橋で翻っている光景が見えるようで…。
葉山宗次郎様、どうかこの艦を沈めないで…次のドックと新型艦を早くお持ちくださいませ!
というわけで――
奥様方も背脂携えて、この異世界海戦の波に呑まれてくださいまし!
ズドーン! と、砲声の余韻を背脂に乗せて…ジュワリーヌ夫人は本日も満足ですわ!