第4話 神待ち少女の本心

私とゆえちゃんの2人は、深夜のモズバーガーの店内で向かい合って座っていた。

気まずい沈黙を苦笑いで誤魔化して、私はただ黙々とサーモンフライタルタルバーガーを食べる。

夜食で摂取するタルタルソースは、ほんのわずかな罪悪感がスパイスになって最高ですな。お供のサーモンフライも程よい火の通り具合でンまァァァァ〜い!!!(←現実逃避)


「…………先生は、聞かないんですね。私が、何故、深夜徘徊をしていたのかを」


オ〜ゥ、いきなり本題ですか。気まずさを誤魔化す為に現実逃避してたけど、ここらでゆえちゃんとしっかり向き合わないと問題は解決しなさそうだね〜……

まぁ、こういう深夜徘徊とか家出などの問題行動の原因は教師としての経験でだいたい察しがつくけど。


「なんとなく想像はつくけど、家に居場所がないからだよね?だからって、夜中に繁華街をうろつくのはマズいよ〜……?今回は私がたまたま間に合ったけどさぁ………」


「もう先生に迷惑をかけるような事はしないので、放っておいてください!!!」


フォォォォォォォォォォァ!?逆切れマジ切れマジこえー!?

最近の若者がすぐ激怒キレるのはカルシウムが足りないんだきっとそうだ。

と、呑気な感想を抱きながらゆえちゃんを真っ直ぐ見据える。

そういえば、もう一つだけ確かめなければいけない事があるんだった。クロツキからもらった問題児筆頭5人衆の情報の中で、おそらくゆえちゃんに関係しているかもしれないSNSのとある裏アカについて…………


「ところで、このアカウントってゆえちゃんだよね?」


私は例のSNSの裏アカを画面に表示してゆえちゃんに突き付ける。

途端に絶句して、青ざめるゆえちゃん。

フム……図星か。実にわかり易い反応ですな。


「しかも、特定の男性ユーザーと頻繁に連絡を取ってる。あのさぁ………今の時代、ネットの発達でどこの誰とでも繋がれるようになったけど、どこの誰とも知らぬ人間が、何の利害関係も無しに君の悩みや苦しみにいちいち寄り添ってくれる訳がないんだから、もう少し考えて行動しなよ」


どこまでも呆れるしかない。実に、浅慮、無知、無警戒。


「………なはず……ない、そんなはずない!!!タカヤさんはいつも私の悩みに寄り添ってくれた!!!先生なんかよりもずっと!!!」


何だよォォォ!!!!もォォォォォォォ!!!またかよォォォォ!!!

(↑激昂するゆえちゃんをなだめつつモズバーガーの店員に頭を下げながら)


「わかった、わかったからひとまず落ち着いて…………」


メンヘラの扱いって、本当に難しいね。(遠い目)

それはそれとして、そのタカヤって奴は要注意だね〜……

その後、しばらくして落ち着きを取り戻したゆえちゃんを家まで送っていく事となった。

月ノ宮財閥とも古くから親交のある家柄でもある神町かまち家。

その邸宅は落ち着きのある準和風の木造建築で、同時にゆえちゃんを閉じ込めておく為の巨大な箱のようにも見えた。あくまでも私の個人的な感想だけど。

まさしく『箱入り娘』って訳か。だとしたら本当に笑えない。

できれば、私のくだらない妄想であって欲しいものだ。

ワイヤレスモニター式インターホンのボタンを押し、しばし待つ。やがて、反応が返ってきた。


「夜分遅くにすみません、ゆえちゃんの担任の村多悠梨と申します」


ここから先の会話はほぼ定型文みたいなものだから描写は省略〜…………


ゆえ!!!この不良娘が……!!!」


ゆえちゃんの母親、佳代さんは有無を言わせずゆえちゃんの頬を張る。

当のゆえちゃんも、慣れているのか何一つ抵抗も反論もしない。私はそれを、痛々しく思った。

その後、佳代さんと少しばかり社交辞令的な会話をした後に神町かまち邸を去る。

やはり、私の抱いた感想は何一つ間違ってなかったようだ。

ゆえちゃんの問題行動の原因、その中心はやはり、十中八九家族関係によるものだろう。

仮にゆえちゃんが今後一切深夜徘徊をやめたところで、それだけでは根本的な解決にはならない。

では、いったい私に何ができるのだろう?

わからない。わからないけど、それでも何か考えなければ…………、取り返しのつかない事になる前に。


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いつか空も飛べる筈の君たちへ ポメラニアンドロイド初号機くん @kitsunesuky

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