第3話
……ふぅ、と、私はペンを置く。
疲れた。
そんな女になどなるものか。
男がその髪をぐしゃぐしゃにして、悩める姿をみてみたいものだ。
不穏の日々、多情の男など、真っ平御免。
つい最近、別れた男を思い出す。
醜悪な決別。
本音を隠し、建前ばかりの頭でっかち。
プライドばかり高い男。
後悔するがいい。
東の空に向かって、毒づく。
さて、今日も今日とて、私に恋文を綴る、優しき夫の元へ帰りましょう。
「優しいだけでは、愛する資格がない。」ロマンチストを口ずさむ夫の元へ。
毎朝、「麗しい朧ちゃんへ、貴女を愛する資格を持ちたい」と繰り返す、ロマンチストの夫の元へ。
「愛してるわ。」
「なぁ、朧ちゃん、オレ髪が薄くなったやろ?」
「あ、ホントだ。」
「オヤジと違って、おふくろに似たんやろうか。剥げてしもたらどうしよう。」
「スキンヘッドもセクシーよ?」
なんて、他愛のない会話。
薄毛に悩む男性諸氏へ、コホン!
朧よりひとこと。
髪があろうとなかろうと構いはしないの。
たった独りの女を愛せずに、どうする。
ご乱心召される勿れ。
**********
朧は、かつて燃え盛っていたような恋心を、今は静かに燃え尽きた灰のように感じている。
それは、まるで夕暮れの空に沈む太陽のように美しくも儚い。
それでも、彼女は生きていく。
夫への愛情は静かで穏やかな光のように、彼女の心を照らしてくれる。
それは、かつての激しい恋とは違う、静かで深い愛情。
彼女は、その愛情を胸に
明日もまた、夫の元へと帰っていく。
乱れ髪 朧 @oboto
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