第6話
「ゆうくん髪・・・」
「ん?何かついてる?」
「その・・・髪の毛セットするようになったの?」
ふとゆめからそんな疑問を投げかけられる。俺は普段の学校生活やちょっとした買い物などではわざわざ髪の毛をセットすることはない。ただ母親が美容師なのでもしもの時のために、と髪の毛のセットやケアは一通り教えてもらっている。
母親の言うもしもの時、というのはまあ彼女が・・・という事なのだろうが生憎俺は一人で過ごす方が好きだしゆめもそういった気持ちはなくきっと久しぶりにいとこと会ったくらいの気持ちだろう。
ただ人には弁えなければならないTPOというものがある。この伸びきった髪で歩いていたら不審者と間違われても無理はない。第一そんな事でゆめに迷惑をかけるわけにはいかない。
「もしかして変だったか?しまったなこんなことならもっと練習しておくべきだったか...」
そういうとゆめはぶんぶんと頭を振ってそうではないと言うように否定のジェスチャーをとる。
「そうじゃなくてね!むしろ...普段より一層か、かっこいいよ?」
耳のあたりが急激に熱くなるのを感じる。ゆめは純粋に褒めてくれただけなんだろうが言われ慣れていないことを言われると危うく勘違いをしそうになってしまうから勘弁してほしい。
「っそ、そうか?言われたからみたいになっちゃうけどゆめも良く似合ってるよ」
「ほんと?えへへ頑張っておめかししてよかった」
ゆめは朝家に来たときとは違い、リボンの装飾がついた白のシャツに桜色のカーディガン、下は紺色のロングスカートで髪も雰囲気に併せてゆるく巻かれていてとても春らしい装いになっている。
「ところでゆめその荷物は?」
「これはお昼ご飯だよ。公園に着いたらお花見しながらゆうくんと食べようと思って」
「まさか作ってくれたのか?ごめんほんとに至れり尽くせりで何と言えばいいか・・・」
昼ご飯は屋台で適当になんて勝手に思っていたからゆめにお昼のことを確認しておけばよかったと今更ながら後悔する。
ゆめはそんな俺を見てふふと笑って首を横に振る。
「私がやりたくてやってることだからゆうくんは気にしないで。私はお腹いっぱい食べたあとに美味しかったって言ってもらえればそれで充分なんです」
「そういうものか?」
「そういうものなんです」
「じゃあせめて荷物は持たせてくれるか」
「ありがとう、疲れたら変わるからね」
「恰好つかないから疲れても言わないけどな」
「ふふ、ゆうくんってば変なところでいじっぱり」
***
「わぁ...すごい人・・・」
公園につくと桜の見ごろと土曜日ということが相まって凄まじい人が花見をしに来ていた。
「とりあえず、人の少ない方に行って落ち着こうか」
桜は公園を覆うように生えているのでどこに行っても花見をすることはできるだろう。近所とはいえ家からこの公園までは歩くと20分ほどはかかる。ゆめもそろそろ腰を落ち着けたいところだろう。
ゆめを連れて屋台から離れた比較的人の少ないところでレジャーシートを広げ、ゆめがお弁当を開く。
「おお!」
中にはおにぎりやから揚げなどをはじめとした誰もが喜ぶであろう彩り豊かな料理が詰まっていた。
「すげぇ美味そうだ・・・。これ作るの大変だっただろうに」
「昨日から仕込んでたものも多いからそこまでじゃないよ。お母さんにも手伝ってもらったものもあるし」
「本当にありがとうございます!」
今日の事は感謝してもしきれない。本当に朝から至れり尽くせりだ。
ゆめは大げさだよと笑って口を開く
「食べて感想聞かせてくれると嬉しいな」
「ああ、それじゃあ・・・」
「「いただきます」」
幼い頃面倒を見ていた女の子と再会した。 りゅうさん @Chronoir1212
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。幼い頃面倒を見ていた女の子と再会した。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます