婀娜婀娜しい監禁、埒明かない南京町

州壬 出

架空小説書き出し

せんべろ横丁の路地裏。

カピバラかと見間違えるほど大きく成長した、

ネズミが徘徊するのをものともせず営業する、

中華まんと書かれたネオン屋台の幕が私を明明と出迎える。ホットショーケースの横に、まるで従業員の休憩スペースへ続いているかのように異彩を放つ重厚なドア。

暗証番号を入力し、中へ入る。

【平成】という元号に隔離されたこの世界では、

自身の死期の予約が可能となっている。

「お客様。延長なさいますか?」

受付の一言で、5年前のここでの出来事を思い出した。

「走馬灯はその人の人生ダイジェストやからな。

高く売れんねん。」

季節外れのアロハを見に纏う、

自分より若い男との初めての会話。

こうしてこの世界に対してまた一つ、

新たな記憶が生まれストックされた。

今の私に遺る、唯一の走馬灯フィルムの切れ端。

「再上映で。」

「え...。」

「再上映で。」

「お客様。再上映となると " 錯綜 " の方が...。」

明日で、6回目を迎える【平成】の最終日。

誘拐の対象が " 情報 " のカラクリ世界。

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婀娜婀娜しい監禁、埒明かない南京町 州壬 出 @Deru_Shuujin

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