あと始末は未来に
@kankanT
環境汚染
「このままでは、地球は100年もたない」
環境大臣の声が響いたが、議場の誰も焦っていなかった。
「CO2削減? 産業が死ぬ」
「脱プラスチック? 選挙に負ける」
「子どもたちの未来? そのとき我々は引退している」
誰もが正しく、誰もが合理的だった。
そんな中、科学庁が提案を出した。
清掃係──汚染物質を「未来」へ送る時間転送装置。
「仕組みは難解だが、結果は確実。汚れはすべて消えます」
未来の誰かが処理してくれるだろう、という発想は、
なぜか誰の心にも自然に馴染んだ。
こうして世界中に“清掃係”が設置され、
人類は歴史上初めて、「掃除をしない掃除」を手に入れた。
街に青空が戻り、人々は微笑んだ。
ニュースは連日こう報じた──
「これは人類の英知の勝利です」
──300年後。
地球には、空も海も緑も残っていた。
だが、人の姿はどこにもなかった。
地下の管理ドームにて、保管された人類が細々と暮らしていた。
大地に足を下ろすことは許されない。
過去から送られてきた有害物質が、時空のどこかで詰まり、
未来の地表は今や、“完全な毒の外殻”に覆われていた。
ドームの中で、子どもが聞いた。
「ママ、昔の人って、どうしてあんなことしたの?」
母は少し考えてから、こう言った。
「きっとね……“未来の自分たち”のことを、“他人”だと思ってたのよ」
あと始末は未来に @kankanT
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