第10話

「……ん。柚、泣き止んだ……?」

「……はい、ありがとうございます……」

「そっか……ふふ、よかった……」

 そっと体を離して、にこっと微笑んで話を続ける。


 静けさに包まれた夜の中、二人きり。

 もうすぐ21時30分を過ぎる頃。外は真っ暗で、まるで漆黒。

 月と電灯の淡い光しかない。


 一方で、麗奈と柚の間には、既にあたたかくて優しい光が生まれていた。


「お弁当、食べる?お腹すいちゃうでしょ?」

「はい……」

 お箸を手に取って、ご飯を口に運ぶ柚。

 その隣で優しく目を細めて見守る麗奈。


「……おいしい」

「えへへっ!いっぱい食べてねっ!」

「はい……っ」

 麗奈も同じようにご飯を食べていく。


 少しずつ優しい空気に包まれていく二人。

 そのまま、お弁当を二人であたたかい会話を交わしながら食べ続け、完食した。


「いやぁ~お腹いっぱ~いっ!♪」

「柚ちゃんはどーお?お腹いっぱいなったぁ~?」


「は、はい……!いっぱいです……!」

「ふふっ、それはよかったー!」

 柚が満たされたようで安心して、笑みが零れる。

 普段つらい思いをしていたり、生きるのに精一杯な子が笑ってくれたり、話してくれたりすると、こちらまで嬉しくなる。

 今夜は、麗奈は新しい経験を積んだのだ。


 誰しもがひとりなんかじゃない。

 ”救い”は、大人だっていい。先輩だっていい。

 推しだっていい……。

 

 みんなを救うために、笑顔を届けるために、活動を続ける。

 

 それが麗奈のひとつの夢なのだ。

 モデルにはなれたけど、まだまだ。

 未来はどこまでも続いていくから。


 夢の途中を描きたい。

 そして、世界中の人を救いたいのだ。

 私にもかつて、色んなことがあったから……。


 絶対にあきらめない。

 絶対に柚を見捨てない。離れない。

 そう心から誓う濃い夜だった。


「……どうする?これから……」

 恐る恐る柚に聞く麗奈。

 やはり、帰りにくいだろう。でも……。


「……帰ります」

「え……?」

 思わず驚いてしまう。

 さっきまでは、帰りたくなかったはずなのに……。


「もう、大丈夫なの……?」

「はい……いつまでも止まっているわけにはいきませんし……。それに、るびぃさんも、努力されているから……」

「……っ」


「さっきるびぃさんがかけてくれた言葉……本当に心に響きました……。これからは逃げずに頑張ってみようかなって……」

「逃げてなんかないよ」

「え……?」

 少し寂しそうに微笑む柚。

 でも、自分を否定的に見てしまっている。


「頑張ってるじゃん。誰よりも。どんなにつらくても、めげずに生き続けて、今ここにいるんだよ?ほんとにすごいじゃん……。既にいっぱい頑張ってるんだから、少しは休んでもいいんだよ」

 最後には優しい眼差しでゆっくりと言葉を伝える。

 

 頑張りすぎてしまうと、本当に壊れてしまうから。

 休むのも、生きるのに欠かせないこと。

 努力は大事だし偉いけど、時にはペースを落とすべきなのだ。

 自分の心と相談しながら。


「るびぃさん……っ」

 生きるのがつらい柚にとって、彼女の言葉は心にジーンと響く。

 胸の奥が熱くなる。

 でも、嫌な熱さではない。

 心地よく、あったかい。

 ずっと続いてほしいようなぬくもりだ。


「ありがとう、ございます……っ」

「でも、今日はもう遅いですし、帰ります……帰らなきゃ……」

 このまま居座って、るびぃに迷惑をかけるわけにはいかない。

 だって、”好きな人”だから。


「……そっ、か」

「うん、わかった……。じゃあ、せめて、お家まで送らせて?夜道は怖いからさ……」

 本当は、心配だし、すごく不安。

 でも、柚の決意と意思を無駄にしたくない。

 柚の思いを、踏みにじるような真似はしたくないから。


「……ありがとうございます」

 申し訳ないとは思いつつも、真っ直ぐ提案してくれたので、お言葉に甘えさせてもらうことにした。


「じゃ、行こっ」

「はい……っ」


 ソファから立ち上がって、空のお弁当箱をゴミ箱に捨てる。

 それから、外へと向かった。


「わぁ!雨止んでるね!」

「で、ですね……っ」

「よかったぁ~!降ってたら大変だからねぇ~」

 麗奈は閉じた傘を手に取ってから歩き始める。


「お家って、どこなの?あ、待って!私に教えても大丈夫……?嫌なら全然いいからっ……」

「い、いえ!そんなこと……!るびぃさんなら、信頼できるので……」

「……ふふっ。ありがと。じゃ、案内してくれるかな?」

「はい……っ」



「……あの、るびぃさんっ」

「うんっ?」

「さっき、お母さんとモデルさんのショーを見に行ったとおっしゃってたと思うんですけど……どんな感じのショーだったんですか……?わたし、まだ行ったことないからわからなくて……」

「そっかそっか……んじゃっ、話しちゃおっかな!柚ちゃんだけ特別ねっ♪」

(とっ、特別……っ)

 無意識なのだろうか……るびぃの言葉にドキドキされっぱなしだ。


「あれはね、まだ私が小学3年の頃……」


 

 電車で一時間乗り継いだところにある、とある大きな会場。

 外装も内装もキラキラしていて、まるでモデルさんや今日のイベントのことを祝福してるみたい。

 始まる時間は15時から。

 それまでドキドキソワソワしていた麗奈。

 隣には麗奈が大好きなお母さん。


 そして、麗奈は、この時は黒髪。

 艶があって、さらさらで、長くてきれいな女の子が憧れるような髪。

 地毛は黒髪だったのだが、理由あって金髪になってしまうのだ。

 

 そして、性格も今と全く違う。正反対。

 幼いころから無口でぽわぽわしてるような穏やかな女の子、麗奈。

 人前が苦手で、すぐに緊張してしまうような女の子。

 怖がりだけど、震える夜も、お母さんがいたから乗り越えられてきた。


 「ふふっ、楽しみねぇ~麗奈っ♡」

 「うん……っ」

 当時人見知りだった麗奈は、人が多すぎて緊張気味。

 手にはお誕生日にお母さんから貰ったくまの大切なぬいぐるみを抱えている。

 この子がいれば、安心するから。

 

 こんな都会にはそもそも来たことなんてないし、カラフルな彩りや、人の多さに驚愕した。

 都会って、すごい……。

 そして何より、会場の煌びやかさがすごい……!

 辺りをきょろきょろ見渡して、落ち着かない様子の麗奈にお母さんは優しくぎゅっとしてくれる。

「もう~かわいいんだから~♡大丈夫、怖くないからね~♡」


 とにかく麗奈が大好きな娘溺愛ママ。

 そんなお母さんを、麗奈も大好き。

 お母さんのぬくもりで安心できる。少し落ち着いてきた。


 そして15時。

 会場が途端に暗くなり、麗奈はびっくり。

 肩が跳ね上がる。怖いところは苦手だ。

 でも、お母さんが肩を支えてくれているから、怖くない。


 安心したのも一瞬のこと。

 ランウェイやステージ上がネオンカラーで光り輝き、先ほどまで真っ暗だった闇を照らす。

 観客の歓声もワーっと上がり、一段と盛り上がる会場。


 はたまた麗奈はびっくり。

 今度はさっきのびっくりした感情じゃない。

 肩ではなく、心臓が跳ね上がる。

 ドキドキするのだ。

 胸の奥がざわつく感じ……熱が籠っている感じ……これらすべてが合わさって、ドキドキだ。


「麗奈~見て~!キラキラしてるわねぇ~!♡」

「……きれい……すごく……」


 その輝かしさと煌びやかさに感動。

 目線は無意識にステージに向いてしまうほど引き付けられる。

 これまで見たことのない輝きに、心を奪われる。


 でも、本番はここから……。


「本日は足を運んでいただきありがとうございます!これからランウェイが始まりますので、どうぞ最後までお楽しみください!」


 キラキラしたスーツ姿のMCが声を上げる。

 またまた歓声が上がり、会場内がさらに暗くなってステージが強調される。


 一人目のモデルがランウェイを通る。

 華麗な歩き方で、かっこよく。

 芯がぶれず、まっすぐ前を向いて、笑顔で。

 そして、お客さんにも"ファンサ"……手を振ってくれる。


 (ぱぁぁぁっ)

 麗奈の目がキラキラ輝く。

 煌びやかな衣装で歩いている姿に、幼いながらも魅了される。


 ピンク色の膝丈くらいのワンピースを着て、厚底ブーツを履いている。

 肩からは黒いカバンを提げている。

 首元にはシルバーネックレス。

 これがまたライトで照らされて光っている。


「わぁ〜!きれいね〜麗奈っ♡」

 (こくこく♡)


 まだ身長が低い麗奈は、お母さんに抱っこされて見ている。

 前で歩いているモデルさんを見ることに必死。


 一人目のモデルは、ランウェイの終わりまで来てからくるっと一回転し、キラッとした笑顔を見せる。

 それにお客さんも湧く。

 本当にかっこいい。かわいい。


 初めて見た光景に、ドキドキしぱなっしの麗奈。

 キラキラしたステージに、キラキラしたモデルさん……。

 まだ幼い麗奈にとって、刺激的であった。


 一人目が舞台裏へ入った後、すぐに二人目のモデルさんが顔を見せた。

 彼女が、麗奈に夢を与えたモデルだ。


 チェック柄の薄い茶色のシャツを着て、デニムのショートパンツにINし、厚底スニーカーを履いている。

 そして、帽子を浅く被っていて、カジュアルコーデだ。

 それでいて、ピアスもつけて、ネックレスもつけて……。

 盛りだくさんだけど、痛くない。

 さすがはモデル。

 着こなしが上手で、尊敬してしまう。


 先ほどのモデルと同じように華麗に歩いていく。

 もちろんファンサも欠かさずに。


 そして、ランウェイの中央まで来たぐらいのところで、麗奈と目が合った。

 彼女は、にこっとキラキラスマイルを向けてくれて……。


 (……♡)

 麗奈の目はぱっちり。

 一瞬戸惑ったけれど、そのきれいなスマイルに完全に魅了された。

 顔を真っ赤に染めて、とってもうれしそう。


「あらぁ〜麗奈っ、ファンサもらったの〜っ?」

「……うん♡」

「よかったわねぇ〜っ♡」


 珍しく笑顔で頷く麗奈を見て、お母さんも満足できてうれしそう。


 ランウェイを歩き切った後、にこっとアイドルスマイル。

 それにも麗奈は見惚れてしまった。

 完全に心を撃ち抜かれた。

 

 (……いいな。こんな風に、きらきらしたい……)

 口には出さないけれど、確かに心の中でそう思ったのであった。

 

 そしてその後の握手会。


 運良く、チケットが当たったのだ。

 けど当たったのは一枚だけ。

 お母さんは麗奈に譲ったのだが、麗奈はまだ小さいため、ついて行くことならOKとなった。

 

 お母さんがいるから、少しは安心。

 それでも、麗奈ちゃんの心臓はバックバク。

 人見知りで緊張しがちな麗奈。

 しかも、今さっき好きになった人に身近で会うのだ。

 緊張するに決まっている。


 握手会の仕方としては、握手したいモデル一人の前に列になって並ぶ。

 順番が来たら、たったの十秒だけど、握手ができたり、お話もできたりする。

 とっても貴重な時間。


 そろそろ行く時間だ。

 

 麗奈はきょろきょろとさっきの好きなモデルを探す。

 ───いた。

 みんな同じくらいきれいで可愛くてかっこいいけど、麗奈にとっては、彼女が一番輝いて見えた。


「あら、あの子のとこに並ぶの〜?♡」

 (こくん……♡)

「ふふっ、人多いからぶつからないように気をつけようねぇ〜っ」

(こくこく♡)

 いくら緊張してるとはいえ、"あのお姉さんと話せる"という幸せさが勝つ。


 そして、列に並ぶ。

 

 お母さんとお話しながら数分待った後、ついに麗奈の順番。


 背の低い小学生の麗奈と、20代前半の大人のモデルさん。

 少し屈んでくれて、ぎゅっと握手をする。

「今日は来てくれてありがとー!お名前、なんて言うのかなっ?」

 にこにこで話しかけてくれるモデルさん。

 でも、麗奈は───。

 (ぽーー)

 ぽーっとしている。

 前にいる人が、嘘かのようにきれいで、かわいくて、輝いている。

 まるで、夢の中みたい。


「ふふっ、緊張しなくて大丈夫だよ〜?友だちだと思って気軽に話しかけてみてっ!」

「……とも、だち……」

 この言葉は今でも心の中に残っている。

 友だちだと思えば、話せる。

 魔法のような言葉。

 当時の麗奈も、その言葉のおかげで緊張が解けたから。

 それを柚にも伝えたくて───。


「……れな」

「れなちゃんねっ!かわいい〜♡」

「……っ!」

 さらにぎゅっと握ってくれるモデルさん。

 照れつつも、勇気を出してひとこと。

 

「……すき」

「……えっ?」

 素直な気持ちを言えた麗奈。

 これだけは言いたいと、並んでいる時からずっと考えていたのだ。

 とても大きな成長。

 これまでは、素直な気持ちも言えずに心に閉まっていたことがほとんどだったのに。

 

「もうっ!あたしも好きーっ!」

「……ひゃあっ」

 握手会のはずが、小さい子に"すき"だなんて言われたら……。

 うれしすぎてハグをするモデルさん。

 麗奈はリアクションは薄めだけれど、頬は赤色に染まっている。

 

 それを後ろで見ているお母さんはにっこり。

 幸せそうだ。


 握手の時間が終わってしまった後、そっと手を離す。

 そして、笑顔で手を振ってくれる。

 

「じゃあまたね!れなちゃん!また会おうねー!」

「……うんっ♡」

 かわいい天使スマイルをモデルさんに返す麗奈。

 離れた後、お母さんに駆け寄って左手でお母さんの右手を繋ぐ。


「ふふっ、どうだったぁ〜?」

「……♡♡」

「楽しかったのっ?よかったわねぇ〜っ♡」

 麗奈はなにも喋らなくても、お母さんはその笑顔を見るだけで感情がわかるようになった。

 今の笑顔は"しあわせだった"という顔。


 握手していたのは、たったの10秒。

 でも、その10秒の中にたくさんの思い出ができた。

 笑顔を向けてくれたこと、名前を呼んでくれたこと、ぎゅって強く握ってくれたこと、ぎゅってハグしてくれたこと。

 そして、魔法の言葉をくれたこと───。


 これら全てが麗奈にとって大切で大好きな思い出。

 正直、離れてしまったのは名残惜しかった。

 けど、その思い出は心の中にずっと残ってる。

 思い続けている。


 そうして、麗奈は夢をもった。

 "あんな風に、輝きたい"。


 今は夢を叶えられている。

 でも、これでゴールじゃないから。

 ずっとずっと、前に進む。

 麗奈も、あのモデルさんのように、誰かに光を届けたいから───。


「……とまぁ、こんな感じかな……昔の話……」

「す、素敵です……!その時からの夢だったんですね……」

 語り終わったあと、懐かしいような目で遠くを見つめる麗奈。


「うん……でもね、ランウェイにはまだ立ったことないの」

「そうなんですか……」

 麗奈が今所属している事務所は、小さめの若き者が集まるような事務所。

 ランウェイ経験はまだ無い。


「でもね!コレ見てっ!」

 そう言って差し出したのは、一枚の小さめな紙。

「……え、これって……?」

 柚は戸惑っていると、麗奈は伝える。


「これ、私の初イベントっ!」

 そう。

 ランウェイという輝くステージに立てるのだ。

 しかも、その会場はモデルさんに出会った時の会場と同じ。

 奇跡───いや、運命だ。


「えっ、す、すごい……!おめでとうございます……!」

 柚も目をまん丸にして、嬉しそうな笑顔。

 顔を赤くして麗奈に向き合う。


「えへへっ、ありがとー!♡それでね、これ、チケットなの!」

「はいっ、5枚分っ!」

「え……?5枚、ですか……?」


「そそ!ぜひお友だちと来てよっ!絶対楽しませるからっ」

「るびぃさん……っ。ありがとうございます……!」

 嬉しくて嬉しくてたまらない。

 5枚分のチケットを受け取って、大事そうに両手で持つ。


「ふふっ♡」

「あ、そういえばここ?柚ちゃんのお家!」

「え……?あっ、ほんとだ……ここです……!でも、どうしてわかったんですか?」

 お話していたら、気づけばもう柚の家の前の川に来ていた。

 二階建てで、レンガ造りの家。

 オシャレチックだ。


「え!だって"星野"だもん!」

「……え?」

「なんで、わたしの名前……」

 

「……え」

 うっかりしてしまい、完全にミスした。

 こんなの、"麗奈先輩でしたー!"と言ってるようにしか聞こえない。


「そっ、それはそのぉ……っ」

 焦った末、出した答えは……。


「私さっ!その人を見たら名前がなにか当てられるっていう特技があるんだよねー!まだ公表してないけどっ!あははっ!」

 とても早口で言い訳を口にする。

 頬は引きつっていて嘘だとバレやすい嘘。

 バレた……と思っていたが、柚の反応は……。


「そうなんですか……!るびぃさんって、本当にすごい方ですね……!」

(どこまでも純粋だぁぁぁ!!)


 純粋すぎて、ピュアすぎて……。逆に心配になってしまう。


「あ、あの……っ、わ、わたしはこれで……!」

「……うん。気をつけてね」

「はい……っ。何から何まで、本当にありがとうございました……!」

 深々とお辞儀をする柚。

 

 雨で寒くなっていた中パーカーを貸してくれて、事務所でご飯を食べさせてもらって、親身にお話を聞いてくれて……。

 とてもあたたかい時間だった。

 

 ”救い”はここにあると確信できた。

 心があたたかくなったから。


「いいんだよ。いつでも頼ってねっ」

「は、はい……!」


「あ、あと、その……っ」

「んっ?」


「……ずっと、応援してます……っ!」

 照れながらも、本当の気持ちを最期に伝える。

 その目は真剣だ。


「……っ。ありがとね、柚ちゃん」

「……っ」

 頭をぽんぽんと優しく撫でる。

 触れるたびに柚の頬は赤くなる。


「じゃ、次会えるのはイベントの日かな……」

「は、はい……!絶対行きます……!」

「ふふっ、待ってる♡」


「で、では……!」

「うん、おやすみっ」

「お、おやすみなさい……!」


 軽く手を振ってから、柚は家へと入っていった。


「ふぅ……」

「大丈夫、かなぁ……」


 心配と不安が混合するため息。

 本当に大丈夫だろうか……。

 柚のエピソードを聞いてから、学校だけでなく、家のことも心配だ。


 でも、不安だけじゃない。


 目の前で直接応援の言葉をもらった。

 これは、まだ新人モデルの麗奈にとっては初めてのこと。

 とっても嬉しかった。

 しかも、柚から……。


 これからも傍にいて支えたいと心の底から思った。

 家庭の事情には強く踏み込めないけど、学校での嫌なことからは絶対に守る。


 辺りは闇のように真っ暗。

 電灯の灯りがほんのりと照らしているぐらいだ。

 少しのモヤモヤを残しながらも、柚を見送った後、暗い夜の道を歩いて家へと帰っていった。

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