第16話 黄金の爪痕、都の危機

使い魔が消滅した後、水底にはかすかに敵が残した邪悪な力の残滓が漂っていた。

桃源は、体内に残る神聖な水の力を意識的にに巡らせ、周囲の 邪悪な 残滓をゆっくりと浄化していく。

光を帯びた純粋な水が邪悪な力を包み込むたびに、 прежよりも 静かな音を立てて消滅していった。


「ワン……」


犬彦は、注意深く周囲の匂いを嗅ぎ取った後、心配そうな桃源に 短く声を送った。

それは、敵の邪悪な力の残滓が完全に消え去っていないこと、そして、新たに危険な気配が近づいていることを告げる警告だった。


「まだ何か来るのか? 黄金の鬼の野郎、次から次へと厄介な使い魔を送り込んできやがるな」


猿丸は、さらに警戒の色を濃くして、周囲の水面を見つめた。

透明な水面には、 静かに揺らぐ金色の影が、かすかに映っていた。


「あれは……!」


桃源も、猿丸が見つめる金色の影に気づき、鋭い視線を向けた。

それは、先ほどの使い魔とは明らかに異なる、もっと強力で攻撃的な気配を放つ影だった。


その影が徐々に形がはっきりしていく。

水面が激しく波立ち、金色の光が 明るく周囲を照らし出す。

そして、その光の中から、先ほどの使い魔よりも遥かに巨大な 生き物が姿を現した。


それは、鬼ヶ島にいた鬼の姿を彷彿とさせる屈強な体躯を持ちながらも、全身が金色の固い鱗で覆われていた。

目は激しく燃えるように金色に輝き、その手には、ドクロで装飾された禍々しい黒杖が握られていた。


「人間よ……よくぞ、わが使い魔を打ち破ったな……だが、貴様らの抵抗もここまでだ……」


黄金の鬼は、低く轟くような声で桃源たちを威圧した。

その声には、邪悪な力と、絶対的な自信が満ち溢れていた。


「貴様が……黄金の鬼……!」


桃源は、邪悪な威圧感を放つ黄金の鬼を前に、強く太刀を握りしめた。

先ほど倒した使い魔とは比較にならない、凶悪な力。

これが、水の都を苦しめる悪の根源なのか。


「そうだ……わが偉大な力の前には、貴様らのささやかな抵抗など、無意味だ!さあ、大人しくわが配下に入れ!さすれば、命だけは助けてやろう!」


黄金の鬼は、傲慢な態度で、桃源に選択を迫った。

その金色の目は、軽蔑的に桃源を見下ろしている。


「貴様の配下に入るなど、断じてありえない!わしは、この都と、わが故郷を守るために、貴様を倒す!」


桃源は、黄金の鬼の強大な威圧感に屈することなく、固い決意を声に込めて叫んだ。

桃源は体内に宿る神聖な水の力を開放し、これからの戦いに備える。


「愚かな人間よ…… 素晴らしい力を持ちながら、その使い方を知らぬか……ならば、わが偉大な力を見せてくれよう!」


黄金の鬼は、 黄金の爪を先ほどよりも激しく輝かせ、手に持つ 黒杖から黒い水の塊を桃源たちに向かって放った。

その一つ一つが、使い魔が操っていた黒い水よりも遥かに大きく危険な力を秘めているのが感じられた。


「犬彦!猿丸!急いで回避しろ!」


桃源は、 強大な黒い水の塊が迫り来るのを見て、急いで二匹に回避を指示した。

自身も、体内の神聖な水の力をさらに解放し、大きなの水の壁を 即座に展開する。


激しい衝突音と共に、たくさんの蒸気が立ち昇り、周囲の視界を完全に遮った。

黄金の鬼の強大な力。

それは、桃源の想像を遥かに超える威力だった。

水の都を救うための戦いが、今、激しさを増して始まろうとしていた。

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鬼刃桃源 ~黄金の鬼と水の都~ Aicom @Aicom

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