猟奇歌

三坂鳴

暗黒短歌

iPhoneに 吸われし魂 戻らずに

抜け殻だけが 日々を彷徨う


花粉舞う 気管を閉ざし 娘果てる

仇は杉なり 山に火を放つ


爆ぜし駅 妹の目玉 転がりぬ

恨みの光 線路を滑る


血の遺書 発見者の 鼻づまり

鉄のにおいで 鼻をぬぐえり


腐りゆく 恋人の腕 床にあり

ファブリーズ噴き 愛を取り繕う


首もげし ギンヤンマらが 宙を舞う

呪詛の羽音 草むらに鳴る


明日なき 我が子の声が 響きたり

鮮血まみれの カフェテリア


血を吐いて 路地裏ひとり 笑う俺

誰を道連れ 地獄に行こう


腐乱せし 我が身の先に 浮かぶ夢

桃源郷へと 視線は昇る


晒し首 夢破れしは 野球人

大谷の打球 眩しく見たり


火葬場で 焼けぬ骨抱き キスをする

「お前だけだよ」 嘘も燃えずに


地下鉄で 踏まれた夢が 軋む音

赤いスーツの 女が嗤う


図書館に 首なし少女 現れり

禁帯出札が 背中に貼られ


骨拾い 義母がポキリと 折る小指

「これが本音ね」 笑う放課後


ポストから 赤子の眼球 転がりぬ

「返却不要」 の紙が添えてあり


母の墓 掘り返す夜に 咲くチューリップ

踏みつけながら 花言葉消す


月曜日 鯖缶だけ食い 首を吊る

開けたLINEに「返信まだ?」


裏アカに 君の死体を アップする

ハートが百超え 最期のバズり


姉の首 ペンダント風に 揺れる朝

制服着せて 学校へ行く


風呂場には 父の生首 泡まみれ

ゴムアヒルの ほほ笑む視線


夜の校舎 窓に浮かんだ 生徒会長

鈴の音だけが 拍手のように


遠足で 埋めたあの子の 歯が育ち

今では校庭 白く咲きそろう

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猟奇歌 三坂鳴 @strapyoung

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