卒園式
@rindou0212
寒さの残る春の晴れの日
春の日差しが暖かい3月中旬
日差しは暖かいが、風はまだ冷たくて春用のコートの下は着込んでいる
天気は良く卒園式にはもってこいの日になったと思う
今日は卒園式である。朝からバタバタと両親は準備に追われているが、
当の本人は緊張感を全く無い様子
お気に入りのパジャマでゴロゴロしながら、アニメを見ている
「早く着替えなさい」
少し強い口調で準備を促すが、帰ってくるのは「はぁ〜い」と気の抜けた声だけだった
冬眠から目覚めたばかりのクマのようにのそのそと体を起こす
クローゼットに吊り下がっている制服に袖を通しのろのろと着替え始める
こちらは最後の卒園式だからと、そわそわしているのだが、本人には伝わっていない様子だ
「カメラ良し!バッテリー良し!」
普段着なれないスーツに袖を通して少し太ったせいか、ややウエストがきつい気がする。
ここはドローイングして凌ぐしかなさそうだ…
バタバタと準備を整えて緊張しながら、いざ出発!
幼稚園に行く道中は、送迎で何度も通った道に想いを馳せる
「ここも、もう通らなくなるのかぁ」、なんてセンチメンタルになってたりして
到着すると同じクラスの子ども達が集まりわいわいとはしゃいでいる
先生達に誘導され、子どもは自分のクラスへ、親はホールへと向かう
ホールには多数の椅子が置かれていて、子供の姿がよく見れる場所を確保する
ステージには大きな花瓶に生けられた色鮮やかな生花があって
ステージの下には子供達が1年間使用していた小さな椅子も置かれている
いつもと違う雰囲気に少し緊張してしまう…
式が始まる前にカメラやスマホの動作を確認する
ピントがなかなか合わなくて急いで調整をする
式が始まり正装をした先生が子供達を引き連れて入場してきた
子供達は左胸に先生達の手作りの水引のブローチをつけて、ピンと背筋を伸ばして緊張している様子だった
(成長したなぁ…、すっかりお姉さんになってる)
なんて感動してしまっている自分がいる
ふと周りを見渡せばお世話になった先生達が声を押し殺して泣いていた
こんなふうに泣いてくれる先生達がいることが嬉しく思い、もらい泣きしそうになるが、ぐっと我慢…
卒園証書を園長先生から受け取り、親元へ持ってくる姿を見ると、つい先日までハイハイしていた幼い娘が思い浮かぶ
幼稚園児だった頃は先生や親がずっと守っていた環境から、いやでも自立を求められる小学生へとステップアップするわけで…
これから新しい生活が待っているのだけれど、本人はまだそんな不安も気がついていなから、しばらくは親のそばにいて手を繋いで守らせてもらおうかな
式は順調に終わり、娘を迎えに行くと「練習通りにちゃんとできたよ!」と、嬉しそうに笑顔で報告してくれる
その笑顔にこちらもにこりと笑う
「すごかったよ!かっこよかった。」と言いながら小さな体をぎゅっと抱きしめる
「お腹が空いたから、今日はお寿司ね!」余韻に浸る間もなく発せられた言葉に言葉を失った
卒園式という一大イベントを終えて、意気揚々と幼稚園を出ていく様子を両親は見守ることしかできなかった…
さて、どうすれば食費を抑えることが出来るかな…?
卒園式 @rindou0212
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます